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【47都道府県すべての映画館で映画を観る企画】vol.1 茨城編(前編)--笠間ポレポレホールで人生初の上映トラブルを体験する

つい先日、35歳になった。いつまでも映画や漫画やアニメの新作を追いかけてフワフワしている年齢でもあるまい。もっと将来を見据えた大きな目標を持って、ちゃんとした人生設計をするべきではないのか。というわけで、「47都道府県すべての映画館で映画を観る」という大きな目標を立てた。趣味に生きるって、そんなに悪いことかね。

とりあえず第1回なので、東京からアクセスしやすく、かつこれまでの人生であまり縁のなかった茨城県に行ってきた。小さい映画館のほうが面白そうだろうということで、今回はスクリーンが2つの笠間ポレポレホールというところに決めた。ポレポレ東中野とは、たぶん何も関係がない。あと、たまたま決行日が『ガールズ&パンツァー 劇場版』公開日だったので、ついでに観ることにした。ついでに、『ガルパン』聖地の大洗にも行ってみることにした。ついで、である。けっしてそれがメインではない。

 

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ガルパン』は、ついで

 

3連休の初日である11月21日。上野駅から常磐線の普通電車(お金がないので特急に乗らず)で約2時間かけて水戸駅まで行き、駅前の映画館で明日の『ガルパン』チケットを購入したのち、笠間駅に向かった。笠間駅からは歩いて、映画館が入っているショッピングセンターへ。30分くらいかかった。なんでも駅からすぐにある東京とは違うんだよな。東京のほうが異常なんだけど。

映画館があるのは、地上2階建てと中規模の笠間ショッピングセンターというところ。1階には小さなフードコートや生鮮食品などを売るスーパーがあり、2階は面積の7割くらいが服屋という、地方によくあるやつ。この規模で映画館が入っているのは珍しい。ボクが行った日は小さな子供向けの職業体験イベントを館内総力を挙げて行っており、駐車場では自衛隊の車に乗れたり、イベントブースではお菓子作りが体験できたり、Right-onではジーパンの畳み方を教えてもらえたりと、大変賑わっていた。ただ、9割以上が親子連れという空間に35歳独身の男がひとりでいるのは居心地が悪く、小さな女の子を3秒も見ていたら通報されそうなのもあり、足早に2階にある映画館に向かった。

 

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これが笠間ショッピングセンター

 

笠間ポレポレホールの入口は、2階の隅っこのトイレの横にひっそりとある。トイレに行く以外の、どんな動線とも隣接していないので、映画館の存在に気づかない人も多いのではないか。で、入口の掲示を見てみると、事前に仕入れておいた情報と上映プログラムがまったく違う。着いたのは午後1時過ぎ。『岸辺の旅』は鑑賞済みだし『ポプラの秋』はまったく観る気がしないので、『天空の蜂』もしくは『罪の余白』までの約4時間をここ笠間で潰さなくてはいけなくなった。

 

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あまり見かけない「お客様へのお願い」
幼児のみ映画館に置いていく親御さんっているのだろうか

 

そんなわけで笠間稲荷神社笠間日動美術館に寄り、ごくごく普通の笠間観光をして時間を潰したのち、5時20分からの『天空の蜂』を観ることにした。一般料金1700円と、ちょっとだけ安い。覚悟はしていたが客はボクひとり。3連休初日なのに大丈夫かと余計な心配をしつつ、ものすごく愛想のいい受付の女性からチケットを買い、ボクだけのために扉を開けてくれたスクリーン2(83席)に入る。ちなみにもうひとつのスクリーン1は94席で、なぜ一般受けしなさそうな『罪の余白』を席数が多いほうで上映しているのか、ちょっと不思議。

 

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笠間稲荷神社笠間日動美術館

 

笠間ポレポレホールのロビーは割と広く、10人以上は座れる緑色のソファーと、なぜかグランドピアノがあった。スクリーン1は、ロビーからの出入口と非常口がスクリーン両脇にそれぞれあるのだが、扉の上にある非常口の照明が上映後も消されず光っていた。最近は消えるところ多いからかもしれないが、どうしても視界に入る位置にあるだけに、やっぱり気になる。

さて上映開始。ボクだけのために流される予告と「STOP THE 映画泥棒」のあと、本編が始まる。主人公(江口洋介)の子供が暗がりの中で停止中のヘリコプターに乗ってしまうシーンが見えづらかったのは、意図的なのか館内の設備のせいなのかよくわからない。作品自体は意外にも(堤幸彦監督なのに)面白かったのだが、上映開始から約20分後、突如としてスクリーンから画面が消えた。音だけ流れている状態。しばらく観てても戻る気配がないので、ロビーに出てスタッフに事情を伝える。

 

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貸切状態のスクリーン2

 

スタッフ(女性2人と、おそらく偉い立場であろうおじいさん)と警備員2人とで、なぜかグランドピアノをロビーからスクリーン1まで動かしている最中だったが、上映を中断して映写機の確認をしてもらう。ボクひとりのためだけに申し訳ないと思いつつ、ぼーっと待つ。15分後くらいに上映再開できると連絡。ただし、もう一度始めから、とのこと。まあ20分くらいだし、変な位置に飛ばされるのも却って嫌だしと承諾。帰りの時間を心配されたが、別に終わりは8時半くらいだろうから問題ないと答える。予告はスキップできるとのことなので、飛ばしてもらう。DVDを飛ばすように飛んでいく予告。予告がすべてスキップされると同時にカーテンが画面に合わせて少し開く。あのカーテン、映写機と連動しているのか。

そんなこんなで、今度はちゃんと最後まで問題なく上映が終わり、ボクだけのために照明がついて、ボクだけのためにアナウンスが流れて、ボクだけのために扉が開かれる。けっこうなトラブルだったが、返金とか次回無料チケット(貰っても困るけど)とかは無かった。別に文句を言っているわけではなく、そんなもんかと。時刻は夜8時半、ショッピングセンターは既に営業を終えているため、偉い立場らしいおじいさんに通用口を案内される。いつも人はいないのかなんとなく聞いてみたところ、「今日はイベントがあったので」とのこと。だが、イベントは5時までで、ボクの見た5時20分の回はイベントに来たついでに寄っていくには最適のタイミングでないだろうか。そもそも、『天空の蜂』も『罪の余白』も、イベントの対象である小さな子供とは完全にターゲット層が違うので、あまり関係ないのではないか。

おそらく、この方は立場上「いつも客が来ない」とは言えないのであろう。映画館のみではなく、ショッピングセンター全体における責任を持っているのかもしれない。ただ、別れ際に「中身は同じですから」とすぐには意味のわからなかったこと(おそらく、上映が途中で止まろうが映画そのものは同じだ、という意味ではないかと思う)を言われたのもあり、きっと映画愛はそんなに無い人なのだとも思う。別にそれはいい。「途中で映画を止められるツラさがわからないのか!」などと、閉鎖した趣味の世界の中の常識を外部で要求するのは愚かなことだ。映画館が「外部」なのかは置いておくとして。

笠間ポレポレホールは、茨城県で唯一の、シネコンではない映画館である。『天空の蜂』はともかく、『罪の余白』や『岸辺の旅』など、上映作品もシネコンでかかりにくい邦画が多数見受けられる。茨城県のどこに住んでいるかにもよるが、県内の映画好きには心の拠り所として機能しているのかもしれない。たった一度行っただけで判断するのは危険だが、今回の現状(ほかに客なし&上映トラブル)を鑑みるに、先行きが不安にもなってしまう。映画館の末長い存続を願わずにはいられない。

 

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笠間市内の数箇所で見かけた標語
なぜか物哀しくなってくる

 

それにしても夜8時半の笠間市はすでに真っ暗だな。この暗がりを30分かけて駅まで歩くのか。帰りの時間を気にしてくれた意味が、外に出て初めてわかった。

 

↓後編はこちら

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