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【邦画】『リバーズ・エッジ』--90年代前半の空気感そのままの映画を2018年に公開する意味とは

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監督:行定勲/脚本:瀬戸山美咲/原作:岡崎京子
配給:キノフィルムズ=木下グループ/公開:2017年2月16日/上映時間:118分
出演:二階堂ふみ、吉沢亮、上杉柊平、SUMIRE、土居志央梨、森川葵

 

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58点
一応、岡崎京子ファンではある。名前を知ったのは事故から4年くらい後だったが、大学生の頃にハマっていた時期があった。ということもあり、映画『ヘルタースケルター』を観たときは多少の怒りも沸いたのである。これはまず沢尻エリカのステップアップの道具であり、蜷川実花の自己承認欲求の産物であった。岡崎京子はそんな女たちの踏み台にされていた。当時、あの映画が語られる際、岡崎京子の名前は申し訳程度に出されるくらいであった。

さて本作『リバーズ・エッジ』であるが、自己承認欲求には定評のある行定勲監督ということで不安を覚えたものの、実際に観てみると意外なことに原作準拠であり、岡崎京子に対する誠実さは伝わった。本作をきっかけに岡崎京子の再評価も進むであろう。ただ問題は、90年代前半当時の空気感をまとった作品をそのまま映画にして2018年に公開することに、どれほどの意味があるのかである。

リバーズ・エッジ オリジナル復刻版

リバーズ・エッジ オリジナル復刻版

 

 

というのも、全体的に古臭いのである。当時そのままの時代設定にして、当時そのままの若者の心理を、当時そのままの表現で演出したら、古臭いのも当たり前なのだが。主人公の若草ハルナ(二階堂ふみ)が河原で死体を見る本作で一番重要なシーンは、彼氏の観音崎(上杉柊平)が浮気してハルナの親友とドラッグ込みのSEXをしているシーンと交互に切り替えされるという非常にダサい演出なのだが、これ原作漫画そのままなのだ。

ほかにもイジメ描写とか同性愛者の扱いとか、やはり当時の感覚とはズレが生じている。もっと細かいところだと、高校生がタバコを吸うことで示される内面描写とか。90年代前半と今とではタバコというアイテムの意味合いが違う。時代設定が当時だからいいのでは、という理屈は通るが、それ以前に2018年の若者にその表現が伝わるのかという問題がある。これ、今の若者に向けた映画だよね。岡崎京子のファンが昔を懐かしむ映画じゃないもんね。

さらに、これがもっと重大なのだが、岡崎京子の漫画世界にそのまま実写として肉付けしただけなため、主人公の空っぽさがまるで消滅しているのだ。一応、セリフでは空っぽだと示されるし、それゆえ山田(吉沢亮)やこずえ(SUMIRE)は惹かれているのだが、そこが伝わってこない。

改めて、岡崎京子の魅力のひとつは画のタッチだったのだとわかる。あの太い曲線を組み合わせて描かれたデフォルメの利いたキャラクターによって、世界の空虚さや人間の空っぽさを表していた。それが実写ということで骨と肉が詰まった生身の人間に置き換えたことで、空っぽさまで埋まってしまった。最後のほうでハルナが観音崎に向かって心にもないセリフを言う。彼女が空っぽだからこそ思ってもいないことも言えるということなのだが、空っぽさが表現しきれていないがために、原作を知らない観客は一瞬理解に戸惑うだろう。キャラがブレていると感じるかもしれない。


原作漫画は主人公の心の声という体での活字部分も多いのだが、さすがに映画ではそのまま読み上げることはしていない。その辺を補うためか各登場人物たちへのインタビューが唐突に挟まる(ある程度のアドリブらしい)。聞き手が誰でなんのためにしているインタビューなのかは示されない。これが数少ない映画独自のもので、なんか当たり前のことを言っているだけなのだが、田島カンナ(森川葵)が戸惑いながら無意識に口角をあげる表情は良かった。性別とか年齢とか超えて、「ああ、わかる」と思った。

この話の最重要人物であるカンナだけは、2018年の今でも共感できる、時代を超えて普遍的な内面を抱えている唯一のキャラクターではなかったか。そう考えると、彼女の最後も非常に暗示的である。

 

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