ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【邦画】『終わりが始まり』ネタバレ感想レビュー--中野って、そんな軽い理由で人が殺されまくる無法地帯なのか


監督&脚本:中前勇児
配給:トキメディアワークス/上映時間:78分/公開:2022年5月27日
出演:根本正勝、峯岸みなみ、前田公輝、高崎翔太、日南響子、松浦祐也、財木琢磨、神永圭佑、小林亜実、原田龍二、小木茂光、村上淳

 

注意:文中で終盤の展開に触れていますので、未見の方はネタバレにご注意ください。ネタバレしても問題ない作品のような気もしますが。

 

スポンサードリンク
 

 

映画『終わりが始まり』の内容を一言で表すと、東京・中野の路上で人がたくさん刺し殺される話である。そんなに危険極まりない暴力が蔓延る無法地帯なのか、中野。

ラブホテルの一室で行為に及んでいる柏木(演:根本正勝)。だが、事が終わった直後にヤクザ(演:原田龍二)が部屋に乗り込んできて、「スカウトマンがスカウトした女に手を出すな」と因縁を付けられ、300万円を要求される。美人局にあったと気づいた柏木は、金を払うふりをしてヤクザの足をカッターで刺して逃走する。ちなみに、本作がR15+指定なのは、このシーンでの美人局役の日南響子が理由の全てである。

ヤクザの子分に町中を追い回されるが、たまたま軽トラで通りかかったかつての同業の仲間・加護ちゃん(演:高崎翔太)に助けられて間一髪。その夜、友人のキャバクラ店長・矢口(演:前田公輝)のところに行き、馴染みの焼き鳥屋で2人で飲んでいると、かつてはキャバ嬢だったが現在は事務員として真っ当に働いているマイコ(演:峯岸みなみ)も合流する。

これ謎なのは、柏木ってヤクザの足を刺して逃走している真っ最中なんだよ。夜の仕事のスカウトマンってことは、身元なんかも既にバレているのが当然だろうし。旧知の友人と会ったり自宅に帰ったりと普通に行動しているのは大丈夫なのか。あと、このあと病気になったから夜の仕事から足を洗うみたいな展開になるけど、そもそもこの状況でスカウトマンは続けられないだろう。

マイコから「もうすぐ結婚しそう」と、良い感じになっている年上の男がいることを聞かされ、動揺する柏木。その会話の中で「篠田麻里子も交際0日で結婚したんだから今のトレンドだよ。嘘だってのは解ってるけど」(※ 正確なセリフじゃないです)と、かつての仲間を露骨にディスる峯岸みなみ。店に到着してからすぐに約束の時間だと頼んだハイボールを一口も飲まずに出ていくマイコの後を付けてみると、中年男(演:村上淳)とラブホテルに入っていくのだった。

翌日、同じ焼き鳥屋で柏木と矢口が飲んでいると、マイコが会社の女性先輩(というか、ほぼ友人)と共にやってきて、4人で飲むことになる。キャバ嬢時代の知り合いの男と今の会社の女の先輩が鉢合わせるってなかなかの事態に思われるが、過去の仕事は会社にも隠していないらしい。しかしなんと、その先輩の友人の夫が、マイコの彼氏だったのだ。状況証拠からして完全にクロだと思われるが、マイコは不倫関係だと信じずに男に会いに行ってしまう。残される真面目な会社員の女と夜の仕事の男2名。共通の知り合いがいなくなったこの状況、非常に気まずい。

次の日曜日はマイコの誕生日。だが男もマイコも休日出勤のために会えないとのこと。ならばと、会社に忍び込んでサプライズパーティーを仕掛けようと目論む柏木と加護(矢口は連絡つかず)。やけに薄暗いオフィスで他の数名の社員とともに仕事をするマイコを、隣の会議室からケーキ片手にこっそりと覗いていると、って、どうなってんだこの会社のセキュリティ。一応、自社ビルを持っているレベルの大きな会社なんだよ(しかも中野に実在する会社らしい)。

そこに乗り込んでくる女性先輩。いや、彼女の会社でもあるから、乗り込んでくるって表現もおかしいけど。あの男は離婚していないんだから目を覚ませと女性先輩は訴えるが、本当に独身なのか本人に聞いたらそうだと言ってくれたと反論するマイコ。これさあ、さっきも書いたけど、この女性先輩がサイコパスで無意味に嘘をついてるとかでもない限り、ほぼ不倫しているで確定なんだけどね。マイコ、恋は盲目というレベルに収まらない単なるマヌケとしか思えないのだが。

たまらず飛び出してきて喧嘩を仲裁する柏木と加護。無言で部屋の外に出ていく他の社員(←???)。口論の末にマイコは会社を飛び出し、大雨の中を男の自宅に向かうが、窓から覗くと娘と微笑ましく遊ぶ男の姿が。それより、めちゃくちゃ土砂降りなのに窓が開けっ放しなほうが気になるけど。男はマイコの姿に気づくと、黙ってカーテンを閉めるのだが、それより先に窓を閉めなさいってば。

雨は止み、とぼとぼと無表情で中野の線路沿いを歩くマイコ。さっきまでの大雨が嘘のように、服は一切濡れておらず、髪もセットされている。こういう何も考えていない箇所が多くて事あるごとに引っかかりを覚えるんだよな、この映画。歩道橋の上から飛び降りようとしたところで、柏木たちに助けられるマイコ。それにしても、この程度で自殺を図るようなメンタルでキャバ嬢って務められるのだろうか。

マイコの話ばかりになってしまったが、柏木のほうにも話がある。以前から誰かに見られている感覚がずっとあり、気にしていたのだ。で、その正体が実は矢口だったのだと終盤に判明する。矢口のかつての恋人は、スカウトされて夜の仕事に就くも、事務所の男たちに強姦された挙句に自殺したのだった。その復讐のためにスカウトした男を探し回っていたというが、これ逆恨みもいいとこだよね。強姦の実行犯は逮捕されたのだが、さすがにスカウトマンは無関係でしょう。

で、恋人をスカウトしたのが柏木と加護だと判明。冒頭のヤクザの子分たちに加護を襲わせる。「柏木はどこだ」とか言いながら、答えも聞かずに中野の路地で加護を刺し殺す子分。えっと、この子分はいつから矢口に雇われていたの? 美人局の最中もホテルの部屋を覗いていたっぽいけど、それも矢口が仕組んでいたの? 足を刺されたままそのあと一度も出てこない原田龍二は何してるの? 

この辺り、いつ矢口がスカウトマンの正体に気づいたのかとか、美人局の女に矢口が何を頼んでいたのかとか、時間軸もメチャクチャで本当に意味が解らないので、ボクには説明できないです。で、いよいよ矢口が柏木を殺そうという段階になってマイコが現れて「柏木、何か重い病気なんだよ」とか言って説得したら改心してどっか行っちゃったけど、しかし弁明の機会すら与えられず無関係の輩に刺し殺された加護ちゃんが浮かばれないよなあ

柏木と二人きりになったマイコは「死ぬために生きて、別れるために出会う。要は、死ぬために生きてるってことなのかな」と何か悟ったように呟くが、それ最初と最後でまったく同じこと言ってるから。「要は」の使い方おかしいから。映画『女子高』のときもそうだったけど、峯岸みなみって観念的のようでいて実は深くも何ともないセリフを言わされがち。あと、全体的に棒読みが酷かったが、これは状況を淡々と説明するセリフばかりなのが原因で、峯岸みなみだろうが誰であろうが棒読みになってしまうと思う。

で、中野の路地をぶらぶらと歩く矢口は、唐突にナイフで刺される。刺したのはマイコの不倫相手の男で、家族がいるとマイコに告げ口したのは矢口だと勘違いしたゆえの犯行だった。それはいいとして、なんでその程度のことで人を殺す? 百歩譲って「不倫が妻にバレて家族が崩壊した」なら理解できなくもないけど、「男からしたら火遊び程度の不倫相手に家族がいるのをバラされた」ってだけだよ。殺人に至るにはリスクが大きくないか。でも、そんな軽い動機でばんばんと路上で人が刺殺される無法地帯、それが中野。皆さんも中野に来られる際は、刺されないように気を付けましょう。
-----

 

【お知らせ】

邦画レビュー本「邦画の値打ち」シリーズなどの同人誌を通販しています。

yagan.base.shop

-----

 

スポンサードリンク