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【TV】『ビートたけしの公開!お笑いオーディション』2021/12/26---「衰えていくビートたけし」はエンタメ足りえるか

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TBS系列
2021/12/26 放送

 

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毎年、年末の深夜に放送されている特番である。ビートたけしの見ている前で勢いのある若手芸人がネタを披露するが、つまらないと判断されれば、たけしの一存で幕が下ろされて強制終了となる。タイトルにオーディションとある通り、たけしに対するネタ見せという体なのだろう。昨年までは生放送で、たけしの横にはガダルカナル・タカがいたが、今年は収録で、たけしの両隣にはナイツ・塙サンドイッチマン・伊達が座っていた。

しかしこれ、見ていてツラい。若手の芸を「日本お笑い界の最重要人物」(番組冒頭のナレーションより)が寸評するのだが、この番組で痛感するのは、たけしの衰えばかりなのである。若手のネタに対するたけしの寸評が、ことごとくズレている。錦鯉・長谷川のツカミ「こんにちーわー!」に対して速攻で幕を下ろして「誰が笑うんだ」とつまらなそうに言い放つ。あれは漫才の冒頭で長谷川のキャラクターを認知させるためであって、笑いを取るためではないことは素人でも理解しているのに。

どうもたけしは、演劇的というか、フッてフッて最後に落とすという最近では主流のネタ構成(漫才でもコントでも)を理解できないようだ。パーパーのネタをオチ前に止めて「この間に一回ボケを入れなきゃ」と寸評してしまう。去年までのガダルカナル・タカは、そんなたけしを窘める役回りだったが、今年の塙と伊達は「早くボケろよ」などとたけしに乗っかっているのもまたツラい。脇の2人はパーパーに文句を言っているようで、実のところ、たけしのズレを強調しているからだ。塙は確信犯だと思う。

パーパーに対しては最後に「あいつら絶対、赤坂の喫茶店で反省会やってるな」と言っていた。パーパーのことを何も知らないから、こんなことを言える。たけしが最近の若手芸人を知らなくても構わないが、本人は的を射ているつもりだが実際は無知を晒しているだけなのが哀れ。そいつどいつのショートコントで、同じオチが2回続いたところを怒っていたが、それは次に来る変化球オチのためのフリを兼ねているのも予測できない。

あとは、赤もみじの漫才に対する「漫才だか芝居だか解らない」っていう一言とか。これ別に漫才コントじゃなくて、ツッコミが激しい口調ってだけでだよ。今のお笑いシーンを何も知らないし、いざこうして相対しても理解できない。「日本お笑い界の最重要人物」の衰えた現状を延々と見せられているのは、なんとも物悲しい。だが同時に思うのは、これはビートたけしの新たなる挑戦なのではないか

かつて天下を取った人物が加齢とともに衰えて無様な姿を見せる。それは芸人としては最高の終焉であろう。たけしは、ついに芸人人生の最終フェーズに入ったのだ。いや、衰えているだけであれば随分前からであるが、衰えている状態をエンタメとして見せ始めたのが、ここ最近ではないだろうか。あの俗っぽ過ぎてバカバカしい離婚劇が引き金だったかもしれない。そう感じたのは、この番組の最後に流れた収録終了後のたけしの言葉が理由である。

たけしは若手芸人に向けて「色々くそ味噌言って笑いを取る番組なので本気にしないように」と、番組中でのズレた寸評をTV用のギャグだと言い切っていた。さらにネタ中で強制終了する番組のシステムは狂っているとしたうえで「こういうところでも笑いを取れるネタを用意しておくのも必要」と的確なアドバイスをしていた。たしかに、ひとつのスタイルを守るより引き出しを多く持つほうが、芸人人生は長続きするだろう。

この収録終了後の模様を放送したのは、たけしというより番組の判断だと思われる。たけしは、番組中のズレた発言はわざとだと、裏ではっきり言っていたのである。自身の衰えを見せることがエンタメになると判断しての、殿のご乱心だったわけだ。

ではここで考えなければいけないのは、「衰えていくビートたけし」はエンタメ足りえるのか、である。これは本人よりも周囲にかかっており、たけし軍団を気軽に起用できない今、きちんといじってくれる後輩を早急に探して脇に置く必要があるだろう(塙は、割と的確な人選かもしれない)。ただ、この番組に限って言えば、「衰えていくビートたけし」を見せるための小道具としてネタを粗雑に扱われた若手芸人たちの不憫さのほうが目立ってしまったわけだが。
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