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【TV】フジテレビ『ものまね王座決定戦』2021/12/3放送--ミラクルひかるが、"あの頃"の『ものまね王座』の精神を語り継いでいる

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フジテレビ
2021/12/03 放送

 

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ふと、昔の『ものまね王座決定戦』を懐かしく思い出す時がある。昔と言っても第1期は1973年から2000年までと長期間に渡って放送されているので、人によってどの時期が懐かしいかは変わるのだが。個人的には、90年代前半のコロッケが抜けるちょっと前あたりが記憶に残る。当時は中学生くらいなので、懐メロの多い歌ネタにはピンと来ていなかったが、ダチョウ倶楽部笑福亭笑瓶らが時折残すインパクトは強烈だった。

笑福亭笑瓶の柳生博とか、桑野信義の和田勉やパンチョ伊東とか、今でもはっきりと思い出せる。ピンクの電話しのざき美知を含め、いわゆる「イロモノ担当」の出演者は、勝負よりもその場の爆笑に照準を合わせていた。そのためトーナメントを勝ち抜いても、次は仕上がってなかったり捨てネタだったりした。予想外に勝ち上がってしまい「次のネタを考えていない」と慌てていることもよくあった。

ダチョウ倶楽部も、1回戦のインパクトは絶大だが次が不発になりがちな、そんな一組だった。だがいつしか決勝に何度か残るようになってきて、ある回では、たしか3回戦で小沢健二のモノマネを披露して対戦相手の清水アキラに「こんなに似てると思わなかったもん」と言わしめて大金星を上げる。でも決勝ではいつもタマ切れだしなあと心配になっていたら、まさかの定岡正二のモノマネで劇的な初優勝をかっさらっていった。

定岡正二だよ。本人が審査員席にいるとはいえ、モノマネしようと思いつく発想がぶっ飛んでいる。そして、残るかどうかも解らない決勝のネタなのに、きちんと仕上がっていたのに驚いた。次の日の学校でクラスメイトにその話を振ったら、誰も見ていなかったのにも驚いた。それはともかく、この辺りから『ものまね王座』が感動路線に舵を切ったのも確かだ。そしてしばらくの迷走の末、『ものまね王座』は一度終了する。

思い出話が長くなってしまったが、今田耕司東野幸治が司会になった現在の『ものまね王座決定戦』は、マジのコンテストになっている。歌ネタのみで、歌詞を変えることすら許されない。出場者紹介のVTRも、これがマジであることを煽る。驚いたのは、審査員の八乙女光が「(モノマネされる曲の)音源を全て聞いてきた」と言っていたが、つまり審査員には事前にネタを知らされているのである。ショーとしての初見のインパクトよりも、コンテストとしての公正な審査を求められている。完全に『M-1グランプリ』と同じ種類の番組である。

今のモノマネって、どれだけ本物に近づけられるか、の勝負になっている気がする。当たり前のようであるが、かつては真っ当な歌ネタであっても本物の特徴を誇張するのが主流であった。コロッケや清水アキラは言うまでも無く、正統派とされる栗田寛一も、実は誇張の度合いが強い。今回も出場して森進一と松山千春を披露していたが、やっぱり「適度な誇張」が隠し味のスパイスのように効いている。

本物の完コピこそがモノマネとされるように変化したのは、布施辰徳の登場がきっかけかなあと、ぼんやり感じているが。あとは『ものまね王座』ではないが、コージー冨田と原口あきまさがタモリ&さんまでブレイクした時期が、その少し後にあった。あれはもはや憑依だと当時は言われていた。

米津玄師やOfficial髭男dismら本人と寸分たがわない歌声を披露するのは、『ものまね王座』がマジのコンテストである以上は正しいのだが、「すげえ」という感想が先走ってしまうため、ショーとしての面白さが霞んでしまう。栗田寛一やノブ&フッキーといったベテラン、あるいは山本高広ビューティーこくぶといった笑芸メインの人たちは、なんとか曲の合間に笑いを入れようとしていたが。

そして、ミラクルひかるである。広瀬香美、工藤静香、八代亜紀の3ネタを披露していたが、いずれもオバケみたいな誇張メイクで、ふざけている感じを隠そうとしない。東野幸治からは「(顔は)ずーっとミラクルひかるだもんね」と言われ、審査員の堺正章からは「歌ってて自分でおかしくなんない?」と聞かれる始末。何より、平場の部分でも終始モノマネしたままで、本ネタ以上に笑いを取っていたのは、まさにダチョウ倶楽部だ。ミラクルひかるは、"あの頃"の『ものまね王座』の精神を語り継いでいる。硬直化しつつある『ものまね王座』に革命を起こしてほしい。

 

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