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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『望み』『生きちゃった』『小説の神様 君としか描けない物語』

最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『望み』
監督:堤幸彦/脚本:奥寺佐渡子/原作:雫井脩介
配給:KADOKAWA/上映時間:108分/公開:2020年10月9日

出演:堤真一、石田ゆり子、岡田健史、清原果耶、三浦貴大、渡辺哲、加藤雅也、市毛良枝、松田翔太、竜雷太

自分の息子は人を殺したか殺されているかのどちらかであるときに何を望むか、という倫理的な問いかけを行うために、システマティックに状況設定を創り込んでいる。それはいいのだが、その序盤で投げかけられる問いかけ自体が最終目的になっているようで、あとは定型のマスコミ描写など、ありきたりな装飾で取り繕っているだけで単調になってしまっている。しかも、後味の良さを最優先にした結末を用意して、観客に安堵感を与えてしまっては、問いかけそのものが無意味になってしまっていないか。

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『生きちゃった』
監督&脚本:石井裕也
配給:フィルムランド/上映時間:91分/公開:2020年10月3日

出演:仲野太賀、大島優子、パク・ジョンボム、毎熊克哉、太田結乃、柳生みゆ、原日出子、鶴見辰吾、伊佐山ひろ子

映画は誕生してから100年以上、いかにして言葉に頼らず伝えることができるかを模索してきた。だとすると、「言葉にしないと伝わらない」というメッセージを掲げるのは、映画の歴史に対する冒涜ではないか。というのは暴論としても、映画全体の重い空気感(この構築自体は素晴らしい)に比べて、ラストのメッセージが陳腐で軽いのは気になる。大島優子の体当たり演技を指して「アイドルから女優への脱皮」と掲げるためであれば、たしかに必要な作品ではあるが。

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『小説の神様 君としか描けない物語』
監督:久保茂昭/脚本:鎌田哲生/原作:相沢沙呼
配給:HIGH BROW CINEMA/上映時間:106分/公開:2020年10月2日

出演:佐藤大樹、橋本環奈、佐藤流司、杏花、莉子、坂口涼太郎、山本未來、片岡愛之助、和久井映見

冒頭から長々と続くモノクロ映像が、主人公の閉じた心がヒロインによってこじ開けられたところで、カラーの世界へと変化する。色効果を用いた仕掛けでは最も安直でダサいものであり、このダサさは作品全体と通じている。小説を執筆するのに、ひとりがプロットを考えて、もうひとりが文体を書く分担作業が謎だが、小説はただの心を通わせるためだけのツールなのか。それなら『響 -HIBIKI-』のように、小説は代替可能な要素でしかないと割り切れば、まだ良かったのに。

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