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【邦画】『グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇』感想レビュー--小池栄子の酷すぎるダミ声が異常事態レベルの不快さを放ってくる

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監督:成島出/脚本:奥寺佐渡子/原作:ケラリーノ・サンドロビッチ
配給:キノフィルムズ/上映時間:106分/公開:2020年2月14日
出演:大泉洋、小池栄子、水川あさみ、橋本愛、緒川たまき、木村多江、皆川猿時、田中要次、池谷のぶえ、犬山イヌコ、水澤紳吾、戸田恵子、濱田岳、松重豊

 

注意:文中で結末に触れています。ネタバレにご注意ください。

 

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48点
大元は言わずと知れた太宰治の小説だが、執筆途中で自殺しちゃったので、物語はほぼ導入部しか残されていない。実際の原作はケラリーノ・サンドロビッチによる舞台である。この舞台版を全く知らないのでどこまで共通しているのか不明だが、映画版には、もはや異常事態のような無視できない点がある。

※ なお、以降の文章での「原作」とは、太宰治の小説を指しています。いちいち注釈入れるの面倒くさいので。

グッド・バイ (新潮文庫)

グッド・バイ (新潮文庫)

  • 作者:太宰 治
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/09
  • メディア: 文庫
 

 

小池栄子のダミ声が酷いのだ。キャラクター設定がどうとかいう遥か手前で、生理的嫌悪を感じてしまうほどの、お金を貰って聞かせてはいけないレベルの異常な声。顔は美人だが声が酷いというのは、確かに原作準拠ではあり、文中では鴉(からす)声と書かれている。でもこれ、主人公の主観による大袈裟な物言いだろう。原作で並べられたキヌ子(小池栄子の役名)をバカにするかのような表現は、主人公・田島の性格も同時に表しているわけだ。

原作に文字として書かれているからって、そのまま再現してどうするのか。で、そんな小池栄子のダミ声が、完全にエンタメの許容範疇を超えている。さらには、我々は小池栄子の本来の声を知っているのだ。よく知っている人が音声ソフトで作ったかのような人工的で普段とまったく別種の声を発している時点で違和感は半端なく高まるし、しかも聞くに耐えないダミ声であれば、不快指数はとんでもないことになる。こんなものを延々と聞かされていれば、もう映画とかどうでもよくなる。早くこの騒音を止めてくれとだけ願うことしかできない。

元の舞台も初演での配役は同じく小池栄子だったのだが、映画と同じ声だったのだろうか(ちなみに再演ではソニン)。これは映画館の音響設定も関係しているのだろうけど、とにかく音がでかくて館内でギンギンと響いていた。誇張でも何でもなく、黒板を引っかいているような音(もうちょっと低いけど)に近く、某アニメ風に言えば「脳が震える~!!」状態が約2時間続いたのだ。ちょっとした拷問だろう。

簡単に物語を説明すると、小説誌編集長の田島(大泉洋)は10人以上いる愛人と手を切るために、ガサツな性格だが見た目だけは惚れ惚れするほどの美人であるキヌ子を妻と偽ったうえで愛人と会わせて、別れを切り出していく。そこでのやり取りがシチュエーションコメディとなるはずだが、高貴な妻のふりをするキヌ子が声を発するたびにスクリーンにヒビが入るかのようで集中できない。原作は一人目の別れ話までしか書かれていないけれど、その場でキヌ子は一言も発していないからね。そこは原作通りにしてくれないのか。

別れ話の切り出しシーンは、ちょっとしたコンゲームでもあるはすだが、どうにも緊張感に欠ける。一人目の緒川たまきはシーンの説明も兼ねているのでいいとしよう(虚構的な会話劇としてはまずまずだったし)。二人目の高橋愛(最初の顔のアップの時、高良健吾かと思った)の時は、緒川たまきが上の階に住んでいるなど予定外のトラブルが襲い掛かり、その場で嘘を取り繕う事態になるが、早々にバレてしっちゃかめっちゃかに。嘘がバレないように冷や汗をかきながら演技をするハラハラドキドキみたいな楽しみは提供してくれない。

で、3人目の水川あさみ。まず、愛人が10人以上と最初にフッておいて3人しか出てこないのも消化不良だが、もうこれでラストなので「はなから嘘がバレている」というイレギュラーのパターンが登場。知らないフリして相手の嘘に合わせているのって、それだけでは白けるから別に大きな何かがあってほしいんだけど、特に何もない。そのあと田島と本妻(木村多江)のシーンもあるけど、登場人物の全員が事情を全て把握している状況って、何をしても面白みに欠けるんだよね。上映時間からすると、この状態になるのが早すぎる。

で、田島とキヌ子は互いに惹かれ合っているがどちらも自覚していない、みたいな話になっていくのである。いや、物語としては定石だろうけど、そんな匂わせ、どこかにあった? 唐突に占い師とか出てきて、そうなんだって言われてもさあ。で、あまりに長すぎるダラダラとした蛇足の果てに、2人はくっついて終わり。もう何人か愛人を出して、いろんな形の別れ話によるシチュエーションコメディを並べてくれたほうが、まだ楽しい作品になったかもしれない。

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