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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『解放区』『普通は走り出す』『ひとよ』

最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『解放区』
監督&脚本:太田信吾
配給:SPACE SHOWER FILMS/上映時間:114分/公開:2019年10月18日
出演:太田信吾、本山大、山口遥、琥珀うた、佐藤秋、岸建太朗、SHINGO★西成


63点
作品外の部分でいろいろとあったために公開まで時間が経ってしまい、奇しくも『月夜釜合戦』と同じ年の公開になってしまった。西成区をマジックリアリズム的なファンタジー空間として昇華した『月夜釜合戦』とは違い、こちらは西成区のリアルな実態と監督個人の極めて小さな葛藤を重ね合わせている。そのチャレンジ精神や、特にラストでの主人公の行為などからタブーに挑戦する気概は解るものの、どうにも結果的には西成区の表層しか捉えることができなかったのではないかと思う。どうしても気になるのが、ドキュメンタリーを装った作りであるにも関わらず、グラグラと揺れる手持ちカメラの映像によって現場にいる本当の撮影者の存在を常に感じてしまうところ。

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『普通は走り出す』
監督&脚本:渡辺紘文
配給:SPOTTED PRODUCTIONS/上映時間:107分/公開:2019年10月25日
出演:渡辺紘文、萩原みのり、古賀哉子、加藤才紀子、ほのか、黒崎宇則、永井ちひろ、久次璃子、松本まりか


68点
トリプルファイアーの楽曲から着想された作品で、プロの女優が多数参加している。そのため、渡辺紘文監督作品にしては普遍的で解りやすく、導入編としてちょうどいい。内容は、監督本人を主人公として脚本に苦しむ映画監督の日常を固定カメラによる俯瞰で撮り、自らの苦悩やダメさを客観視したうえで提供している。明らかに虚構的な人物造形でありながらリアルとも直結している匙加減はさすが。図書館の貸し出しカウンターでの長蛇の列や実際の大牟田市長とのやりとりなど、単純に遠景による画的なおかしさがあり、意外にもエンタメ性は高い。

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『ひとよ』
監督:白石和彌/脚本:高橋泉/原作:桑原裕子
配給:日活/上映時間:122分/公開:2019年11月8日
出演:佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、音尾琢真、筒井真理子、韓英恵、MEGUMI、大悟、佐々木蔵之介、田中裕子


57点
子供に暴力を振るっていた父親を殺して服役したあと行方知れずだった母親が、15年ぶりに3人兄弟の元に戻ってくる。何かしらの象徴的な状況を作るための前振りが強引で、なんだか打算的である。また、心情をセリフで説明してしまうことが多く、こちらも同様に「ここは、こう感じてくれ」という強引な打算を感じる。特に嫌な話になるわけでもなく、かといって田中裕子のポップさも中途半端なのでコメディにも振り切れず、どっちつかずのまま終わる。白石和彌監督は、求められたものを的確にこなせる職人型の監督では無いと思うのだが。

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