ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【邦画】『劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』ネタバレ感想レビュー--ただただ幼稚なだけの田中圭がなんでモテモテなのか解らない

f:id:yagan:20190825163528p:plain
 監督:瑠東東一郎/脚本:徳尾浩司
配給:東宝/上映時間:114分/公開:2019年8月23日
出演:田中圭、林遣都、志尊淳、沢村一樹、吉田鋼太郎、内田理央、金子大地、伊藤修子、児嶋一哉、ゆいP、眞島秀和、大塚寧々

 

スポンサードリンク
 

 

51点
映画は香港ロケから始まる。出張を終えて明日帰国する春田(田中圭)は、呼び込みのおばちゃんに勧められるがままに買った指輪を路肩のバイクの上に何気なく置いたところ、そのバイクが発進してしまった。細い路上を走り回って、途中でカンフーのエアアクションとか挟みつつ、必死でバイクを追いかける春田。うん、これ、ジャッキー・チェンのパロディのつもりなのかな。そもそも思い入れも何もない指輪を追いかけている時点でノれないんだけど、それよりカット割りが多すぎるせいでスピード感が失われているのが気になる。ジャッキー・チェンを真似るなら絶対にやっちゃいけないことだろう。

※ なお、この映画はこの後も何度か名作映画の雑なオマージュもどきを入れてくるが、シネフィルへの配慮だとしたら完全に間違っている

この映画、やたらカットを割るのである。対話シーンでの切り返しとか1秒を切る速さで、ガチャガチャと画面が変わる。切り返しってさ、それぞれの人物の視点を交互に表すための技法なんだけど、この速度だと心理を汲み取る余裕もない。あと、空撮とかの遠景のロングショットをカット割りして数秒分だけ省くやつも多い。これ、割と邦画大作でよくあるんだけど、何を表したいんだろう。洋画だとあまり見かけない気もするが。

スラップスティック・コメディ(ドタバタ喜劇)らしさを表したいがための大量カットならば、完全に裏目に出ている。一気にラストまで飛ぶが、春田が監禁されていて炎が燃え盛る倉庫の中に、恋人の牧凌太(林遣都)ら主要メンバーが飛び込んで救出に向かう場面がある。緊迫した中で随所にギャグが挟み込まれるのだが、やっぱりカット割りが尋常じゃない量なので、位置関係とかが全く解らない。というか、ちゃんと観ていると明らかにおかしい部分が多々あり、カット割りで誤魔化しているようにも見える。そのため、どの程度の緊迫感があるのか皆目見当がつかず、「シリアスな場面で挟まれるギャグ」という緩急の構築が全くできていない。

さて、不要かもしれないが、一応の映画の説明を。テレビ朝日で2018年に放送されて大反響を呼んだドラマ『おっさんずラブ』の劇場版である。個人的なことに触れるとTVドラマは未見で、男性同士の恋愛を軸にしたところが革新的だとかの評判をチラッと聞いていた程度(雑な認識で本当にすいません)。この劇場版はドラマの1年後が舞台なので、主人公の春田は牧と恋人同士で同棲中、牧の恋敵だった黒澤武蔵(吉田鋼太郎)は既に春田にフラれているという関係が前提としてある。

つまり、これはドラマの劇場版の宿命なのだが、すでに話が終わっているところからのスタートなんである。そのため話を転がすべく、さらなる恋敵らしき存在を複数投入し、黒澤は記憶喪失にして春田への想いを復活させ、春田と牧の互いの恋心を揺さぶったうえで再確認するという恋愛マッチポンプの話にしている。まあ、ラブコメの中盤にありがちな王道の話か。記憶喪失によって関係性を元に戻すことで話を引き伸ばす手法って、よくあるよね。漫画『山田くんと七人の魔女』とか、アニメ『境界の彼方』の劇場版とか。

男性同士の恋愛が当たり前のものとして受け入れられている空間が、このような邦画大作で示されているのは、素直に意味があると思う。この件がTVドラマのほうで解決済みだからなのか、元々最初からそういう世界なのかは知らないのだが、どちらにせよ(いまだに旧主的な考えが支配する現代日本においては)たしかに革新的という評価も間違ってはいない。ただ、この劇中の空間には部外者がほぼ存在せず、ものすごく閉じているのが気になるが。外野からの視点が一切排除されているところにエンタメ表現の限界を感じる。

と、そんなことより引っかかることがあって、なぜこんなに春田がモテモテなのか、まったく解らないのだ。リアリティの欠片もないオーバーリアクションなのはドタバタ喜劇だからいいとしても、こいつ本当にガキなんである。何かあればギャーギャーと騒ぐし、気に入らないことがあれば口を尖らせて責め立てる。すぐ拗ねるのが本当に幼稚。TVドラマでは何かしら魅力を見せていたのかもしれないが、少なくとも劇場版では、ただただガキの振る舞いしか見せてくれず、観客をイラつかせることこの上なし。「守ってあげたくなるかわいいキャラ」って範疇にも収まっていないし、何に惹かれているんだろう、みんなして。

※ ちなみに、宣伝などでバラエティ番組に出演した時の田中圭も、割と幼稚な振る舞いが目立つので、オーバーとはいえ素に近いのかもしれない。

あ、ここまで長くなってしまったので、不動産会社の事業のワケのわからなさについては、詳細はパスします。本当に意味が解らないことだらけなんだけど、今後も再開発事業が継続するってラストが一番の衝撃だった。ダメでしょ。

 

スポンサードリンク