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【邦画】『広告会社、男子寮のおかずくん 劇場版』ネタバレ感想レビュー--黒羽麻璃央と崎山つばさのイチャイチャぶりはともかく、広告屋の身勝手さは痛いほど伝わった

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監督:三原光尋/脚本:金杉弘子/原作:オトクニ
配給:バップ/上映時間:71分/公開:2019年7月12日
出演:黒羽麻璃央、崎山つばさ、小林且弥、大山真志、橋本美和、久野雅弘、金剛地武志、逢沢りな、田中要次

 

 

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52点
TVドラマの劇場版とのことだが、元は全く知らない。男子寮に住む広告会社の若手社員4人が、金曜日の夜は皆で料理を持ち寄ってみんなで和気あいあいと夕飯を取るという話らしい。広告会社の社員が毎週金曜の夜に何も予定が無いのは、どの程度のリアリティなんだろうか。それはともかく、2.5次元舞台で人気の黒羽麻璃央が主演で、同期社員役の崎山つばさとイチャついていたので、そういう方面に向けた映画なのだろう。ちなみに、映画館の過半数は女性だったが、意外と男性客も多かった。

さて、先述した金曜日に皆で夕飯を取る件だが、劇場版ではあまり意味がない。夕飯シーン自体が最初のほうとエンドロールの計2回だけだし、どちらも物語とは直接の関係は無い。なぜかメニュー内容がテロップで出るけど、その情報が何の役に立つのかは不明。物語としては、若手営業の西尾和(黒羽麻璃央)が、江の島のタウン誌のプロジェクトリーダーに任命される話である。なお、西尾和は金曜の夕飯の時におかず担当なので、おかずくんとかおかずちゃんとか呼ばれている。まじめな話の時も常におかずちゃん呼ばわりなので、社会人としてどうかと思ったが。

「これまでのタウン誌に載っていない江の島の店を探して」とクライアントから無茶振りされた西尾は、同期の東良圭介(崎山つばさ)から同級生の父親(田中要次)が開いているイタリアンレストランを紹介される。ランチ時間を過ぎてしまったが店に入り、無理を言ってランチを頼む。「もうランチの時間、過ぎてますよね~」と下手に出ながら相手がOKせざるを得ない誘導をするのが、なんとも広告屋らしい。出てきたペスカトーレを一口食べては「美味しい」と口に出して解りやすく美味しそうな顔をする。麺しか口に入れていないのに肉も魚も野菜も褒めるあたり、いい加減なやつである。この黒羽麻璃央という人、顔の表情がマンガみたいに大げさなんだよな。観客と距離のある舞台なら大げさな表情も武器になるかもしれないけど、スクリーンでアップになった時にあの口角のあげ方は不自然なものがある。

ひとしきり食事を取った後、食後のアイスコーヒーを出してきて食べ終わった皿を片付けているシェフに名刺を渡し、広告会社の者だと明かす(皿を乗せた盆を持っているところに名刺を出してくるので、相手の迷惑とか想像できない人なんだろうか)。すると場面が店の外に切り替わり、シェフから「タウン誌の掲載は断る」と無理に追い出されて鍵をかけられる。どっちもどっちだけど、シェフの態度もどうかと。その後に店を紹介した娘(逢坂りな)が帰宅して「広告の人、来なかった?」と聞かれるもシェフは手を付けていないアイスコーヒーを片付けながら「知らない」と返す。えっと、ここでシェフが娘についた嘘は、その後の話に一切関わらないです。なんでそんな会話にした?

さて、数日後の土曜日。プライベートで江の島を訪れる西尾と東良。2人で江の島を散策し、団子やソフトクリームを互いに食べさせ合ったりとイチャイチャぶりを見せつけてくる。そして砂浜を追いかけっこする2人の長い脚を追いかけるサービスショットが延々と続く。狙いは解るんだけど、こんなんでいいの? 上半身くらい裸になってあげたら? どうも、観客に媚びるにしても、あざとさが足りない気がするんだが。それで急にビーチフラッグを始めて砂まみれになってキャハキャハ笑いあった後、取材を断られた店に夕食を食べに行く。その服、砂まみれだよな。それでレストランに入る気か。

なんか知らんが店には男子寮の他のメンバーもいて、みんなでやっぱり「美味しい」と大きな声で言いながら食事を取る。思ったことをそのまま口にするにしても、わざとらしさが酷い。シェフからは前回の非礼を詫びられて、一方の西尾は前回の代金も一緒に払って(いきなり追い出されたので払っていなかった)、わだかまりはさらっと解決する。展開を積み重ねて物語を作っていく気はないらしい。

帰り際にシェフの娘から「昔の父には、店をたくさん開きたいって夢があったはずなのに、母親が亡くなってからはそれも言わなくなって、でも本当はあきらめてなくて、宣伝もしてもらいたいんじゃないか」と広告屋たちに言い出す。娘の口から言わせているのが卑怯なんだけど、要は広告に載ることが店にとっても幸せなんだみたいな感じがすごく気になった。そもそもこの店、シェフひとりで切り盛りするには広過ぎるんだよね。江の島にあってこの規模の広さでしかも客が多く来ているから、普通に儲かっていると思うが。もっと小さくて家庭的だけど客があまり来ないような店じゃないと、こういう話は成立しないんじゃないか。

これ、映画としてのストーリーテリングはあまりなく、説明セリフとナレーションで話が進む。なんだか解らないうちにシェフは取材をOKして、写真撮影とかインタビューとかをこなすが、その様子を見て娘は「なんか無理している。やっぱり取材を受けたくないんじゃ」とか言い出す。おい、お前が熱心に「父は宣伝してもらいたいはず」って訴えてきたから取材を取り付けたんだぞ。なんか、この娘のせいでみんなが振り回されているんだよな。で、大の大人が海に飛び込んでキャッキャッとはしゃぐ光景に合わせて、「各所に頭を下げて、掲載は取りやめにした」というナレーションが。あー、一番大事なところ、一言で終わらせやがった。せめてほうぼうに頭を下げるダイジェスト映像くらいは入れようよ。多少は広告屋のイメージアップにもなっただろうに。

まあ、イケメン男子のイチャイチャぶりがどれだけ観客を満足させたのかは、残念ながらボクはターゲットに含まれていないので判断できない。社会人とは思えない幼稚さに白けたりしないかと想像するくらいだ。ただ、広告屋の身勝手さだけは痛いほど伝わってきたのは確かである。

 

※ 07/14 誤字を修正しました

 

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