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【邦画】『僕の彼女は魔法使い』ネタバレ感想レビュー--千眼美子渾身の超絶ぶりっ子演技によるイチャイチャの押し付けが、大川隆法の欲する「与える愛」なんだろうか

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監督:清田英樹/原案&脚本:大川隆法

配給:日活/上映時間:97分/公開:2019年2月9日
出演:千眼美子、梅崎快人、春宮みずき、佐伯日菜子、高杉亘、不破万作

 

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51点
改めて、千眼美子はプロの女優なんだと認識した。本作は大きく高校生パートと社会人パートに分かれているのだが、高校生パートの超絶ぶりっ子演技が完璧すぎて気持ち悪くなるくらいだったから。これが知らない女優だったら、普段からこういう仕草をする人なのかなって思うけど、千眼美子は清水富美加という名前だった時からずっと様々なパターンの演技を披露してきた以上、このぶりっ子演技も創り手が求めているものを完璧にこなしているだけであるのは自明なわけで。加えて、社会人パートで別方向の役柄も演じ分けているわけだし。

すでに実績のあるプロの役者を満を持して起用すると、創り手のほうの力量が露になってしまうという点で、興味深い案件であった。すごかったよ、千眼美子による型通りのぶりっ子演技。試験中に考えているシーンでは、グーにした手に顎を乗せて、口をとがらせて絶妙な角度で顔を傾けていた。恥ずかしくなるようなアナクロニズムだが、創り手はこれが正攻法の可愛らしい演出とでも思っているのであろう。横断歩道では、両腕を下30度くらいに伸ばして手のひらは指を揃えて水平にピンとさせてピョンピョンと跳ねるように歩いていたし。

さて、大雑把なストーリー。男子高校生・優一(梅崎快人)のクラスに、夢で出会った女の子・風花(千眼美子)が転校してくる。ほかの男子をあからさまに無視して、優一に露骨に近づいてくる風花。お弁当を2人ぶん作ってきて他に誰もいない屋上で食べたりしている。容器に唐揚げとブロッコリーが半分づつ目一杯に詰まっている弁当(この時点で、どうかと思うが)を見て優一が「ブロッコリーだけは苦手で」というと、風花は「あ、UFO!」と空を指さして目をそらさせているうちに、なんか短い棒(本当に、驚くほど短い)を振り回して玉子焼きにすり替えたり。あ、先に言っておくけど、風花は白魔術の魔法使いね。

そんな2人のラブラブぶりを見せつけられて、優一のに気がある同級生の百合子(春宮みずき)には負の感情が溜まっていく。百合子がダークサイドに堕ちていくのを表現するために、唐突にいわゆる「めまいショット」とかやっているし。ヒッチコックの霊でも呼び寄せたんだろうか。ちなみに「めまいショット」は、後半にもう一度出てくる。新しい技法を覚えたので使いたかっただけだと思う。

それにしても、この話の構図だと、人知れず恋焦がれる百合子がヒロイン的な立ち位置で、いきなり現れて好きな男子をたぶらかす風花のほうが悪役に見えるんだが。風花は試験の答えをこっそり教えたりと、単に優一に気に入られたいという私欲のためだけに魔法を濫用しているし。千眼美子渾身のアナクロなぶりっ子演技も相まって、まったく好感が持てない。どう考えても、女子高生の淡い恋路を邪魔するサブキャラクターなんだよなあ。

いろいろあって優一は風花と2人でホウキに乗って空を飛んでいたが、黒魔術の魔法使いに襲われて気を失ってしまう。風花は寝ている優一に「自分に関する記憶を消す薬」をこっそりと飲ませて、どこかへ消えてしまう。そして、舞台は一気に5年後に飛ぶ。

事業内容とかわからないが、とにかくでかい会社の新人社員となった優一。結婚式のプロデュースを担当することになるが、そこにクライアントとして現れたのは真っ黒な格好の風花。風花は「優一、覚えていないの?」とか聞いてくるので「オマエが記憶を消したんだろ」というツッコミを入れたくなったが、ここはあとでネタばらしがあった。結婚式のテーマカラーは黒にしましょうとか非常識なことを言い出す風花。それに対し、なぜか優一は勝手に魔法が発動する体質になっているらしく、風花の頼んだブラックコーヒーをピンク色に変えたりして「黒にこだわる私への当てつけですかっ?」って怒らせたりしている。

かつてのぶりっ子演技は面影もないが異様なアプローチで接近してくる風花に、優一は困惑する。結婚式は失敗に終わったりといろいろあったあと、優一は唐突に記憶を取り戻す。実は高校生のときに風花から記憶を消されたのは失敗していて、優一は謎の声に従って風花を追い求めて山の中の小屋にまで辿り着いていのだ。そしてここから、長い回想シーンとなる。あとから考えると、記憶を消すくだりは丸ごといらないし、変に時間軸を行ったり来たりさせないで順番通りに話を進めたほうがスマートになった気がするが。回想の回想とかあったけど、ほんとやめてほしい。

この小屋は黒魔術師から身を隠すための別世界みたいな場所で、小屋の中に鏡があって、その中に入りこむと風花の死んだ祖父(不破万作)がいて、優一は魔法を教わることになる。風花の祖父が言うところの魔法の理屈は次の通り。

  1. 水素と酸素を組み合わせて、水ができた
  2. 火で燃える水素と、火を燃やすための酸素によって、火を消す水ができるなんて、科学というより魔法ではないか
  3. その魔法を行ったのが、エル・カンターレだ!

1の時点で引っかかりまくりなのだが、こういうのに騙される人が入信するのかな。教育って大事。とにかく、よく解らないけど優一は魔法の使える体質になろうと真っ白なキャンパスの前で念じ続け、一方の風花は優一のために魔法を使わずに弁当を作ろうとするが失敗して卵をいくつも無駄にしている。ここで千眼美子の歌う挿入歌が入るので、完全にアイドル映画の手法であった。で、やっと玉子焼きができたと同時にキャンパス一杯に風花の笑顔が描かれたところで、黒魔術師に居場所がバレたことが判明する。

えーと、風花は白魔術の力を持った最後の生き残りで、根絶するために黒魔術師に狙われているんだっけか。で、風花の祖父は白魔術の力を守るために、風花の力を優一に移して、そのうえで優一にここでの記憶を失えと持ち掛ける。「まさか男に魔女の力があるなんて思わないし、記憶を失えば風花との繋がりはバレにくいはずだ」みたいな理屈だった(祖父も男だけど・・・)。で、黒魔術師が来る直前に優一は元の世界に戻って、風花は黒魔術師によって捉えられて水晶の中に閉じ込められる。

長い回想が終わって、また社会人パートへ戻る。実は優一の前に現れたのは風花ではなく、黒魔術師に取り込まれていた百合子が変装していた姿だったのだ(だから優一が記憶を失っているのも知らなかった)。そして百合子演じる風花の父のフリをしていた男(高杉亘)が、黒魔術師の元締めか何かで、百合子も優一をおびき出すために利用していただけ(まどろっこしいやり口だけど)だと明かして、ついにバトルが始まる。いや、たいしたものじゃないけど。なんだかんだで風花も蘇ったりして、黒魔術師は倒される。すみません、まったく話についていけなくなっていたので、この辺りは端折ります。

この話のテーマとして冒頭から示されているんだけど、白魔術が「与える愛」で、黒魔術が「奪う愛」なんだって。で、今の世の中は「奪う愛」が蔓延しているから「与える愛」を広めなきゃいけないんだって。まあ、教団というのは信者から様々なものを与えられることで運営されているわけだから、「与える愛」を正しい行いだと主張するのは道理ではあるか。でも、あの千眼美子の超絶ぶりっ子演技によるイチャイチャの押し付けが「与える愛」だとしたら、少なくともボクは与える側としても与えられる側としても、関わりたくないがなあ。大川隆法は、こういうのを欲しているんだろうか。

実は劇中で何度も流れる曲があって、どうやら大川隆法の娘が歌っているらしいんだけど、これが歌詞の日本語としてのリズムやイントネーションがメロディと全くあってなくて、聞いていて変な気分になる(単に音痴なだけかも)。歌詞の中で一番意味不明なのが《私たちにとって時間なんてないのと同じ だって、時計なんて役に立たないもん》というところ。少なくとも「だって」の前後が逆じゃないか。ちなみに、映画館では前の座席に4~5歳の男の子がいて、映画にはすぐに飽きてずっと長い棒を振り回していたのだが、この曲がエンディングで流れた途端に一緒に歌いだしていた。この映画を観ていて、一番の衝撃だった。

 

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