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【邦画旧作】『That's カンニング! 史上最大の作戦?』ネタバレ感想レビュー--山口達也と安室奈美恵という2018年に芸能界を去る2人が主演した迷作

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監督:菅原浩志/脚色:斉藤ひろし/原作:谷俊彦
配給:東映/公開:1996年8月9日/上映時間:99分
出演:山口達也、安室奈美恵、升毅、荒木定虎、山本太郎、麿赤兒、松尾貴史、白島靖代、中村嘉葎雄、由利徹

 

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『That's カンニング! 史上最大の作戦?』という映画をご存じだろうか。ある年齢ゾーンの人にとっては、タイトルだけは聞いたことのある懐かしい作品かもしれない。1996年に公開された、東映とフジテレビの共同制作によるコメディ映画である。当時は「世紀の失敗作」みたいな代名詞でネタ的に扱われていたと記憶している。実際の興行収入がどうだったのかは知らないが。

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こんな20年以上も前の邦画をなぜ急に取り上げたかというと、安室奈美恵と山口達也という、奇しくも2018年に芸能界を去る2人が主演であるから。こんな偶然があるだろうか。今だからこそ、改めてきちんと鑑賞して、総括しておかなくてはいけないのではないかと、ひとり勝手な使命感に燃えたのである。

渋谷TSUTAYAのレンタルコーナーに行ってみると、VHSテープが1本だけ在庫で残っていた。さっそく借りてきて自宅に戻り、数年ぶりにテレビデオの電源を入れる。最初は再生ボタンを押しても反応が無くて焦ったのだが、何度かテープを出し入れしたところ、きちんと再生してくれた。

VHSの再生が始まると、まずは『白鳥麗子でございます』と『花より男子』の予告が入っている。『花より男子』って、当たり前だけど井上真央じゃなくて内田有紀のほうね。内田有紀は当時はボーイッシュの代表だったはずだが、改めて見るとガサツなだけのような気がする。「なんとTRFが特別出演!」と煽ってくるが、それがどれほどスゴいことなのか、いまいちピンと来ない。

さて、TOKIOの『ありがとう…勇気』が流れ出して本編がスタート。主要キャストがテロップ表示されるが、安室奈美恵、山口達也に続いて荒木定虎、山本太郎と、別の世界に行ってしまった人たちの名前が次々と出てくる。ちなみに、今や映画監督として名高い大森立嗣が1シーンだけ出演しているのだが、本人的には黒歴史だろうか。

舞台は日本理科大学(モデルは東京理科大学だろうか。公立というセリフがあったから違うかも)。80年前に建てられた学生寮「シグマハウス」(計算すると20世紀初めにできた寮なので、そんな名前なワケが無いのだが、戦後に名称変更したのかな)の取り壊しを阻止するべく、寮生たちが試験でカンニングをする話である。何も間違ったことは言っていない。

映画は、まず大学の試験会場の様子から始まる。「シグマハウス」の寮生たちが、様々な方法でカンニングをしている様子が映される(ということは、こいつら常習だな)。消しゴムのケースの裏や、眼帯の裏、はてはドレッドヘアの中に仕込んだり。この時点でまだ寮生ではないが、安室奈美恵はネイルをルーペで拡大すると化学式が書かれているという、まともに勉強するより手間がかかってそうなカンニングを行っている。それにしても、どのカンペも小さい文字で化学式がビッチリ書かれているだけなのだが、どういう試験問題なんだろうか。計算とか文章記述の問題は一切出題されないのか。公立の理科大の試験なのに。

一方、試験監督である右田教授(升毅)は、手下の教授たちとともに試験会場で目を光らせている。と、別棟の屋上から双眼鏡で試験会場を監視していた教授が、ドレッドヘアのカンニングを発見。現行犯である亀井(荒木定虎)は連行されてしまう。右田教授は「キツい処分をくらわしてやる」と息巻く。

右田教授は「カンニングは重大な犯罪だ!」と高らかに謳いあげる。カンニングをする者が社会に出ると「空は濁り、世界に秩序が無くなり、人類は破滅だ!」とまで言ってのける。おそらく右田教授をカンニングごときにこだわる変人に見せたいんだろうけど、カンニングを憎むのは大学教授として間違っていない。

そんな右田教授の采配により、亀井は無期停学という処分が下る。いやそれ、カンニングの処分としては普通じゃね? 退学にならなかっただけ良かったんじゃないの。それでも山口達也たちは処分を許せず右田教授に抗議するが、「私に話しかけていい身分かね」と冷たくあしらわれる。

右田教授は、学生寮「シグマハウス」の取り壊しを教授会で提案する。代わりにホテルを建てるのだそうだ。大学の敷地内にホテルを建てる意味が全く持って解らないのだが、建設会社からキックバックを貰っているために、何としても計画を推し進めたい。そのため「伝統ある寮ですが、今の寮生は落ちこぼればかり」だと説明する。寮を壊すかどうかということと、寮生の成績は関係ない気がするが。どうもこの話、寮を壊せば自動的に寮生は大学を辞めるということになってないか。根本的に大学がどういうところか何も解っていないようである。右田教授、「成績の悪い不良学生を飼っておく余裕は無い」とか言っているけど、彼らが辞めたら支払われる学費が減るんだけどなあ。

 

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一方、しょっちゅう実験中にへまをして化学室を爆発させている安室奈美恵が、山口達也の部屋に忍び込んでくる。ペット禁止のマンションで猫を飼っていたら追い出されたのでしばらくいさせてくれと説明するが、実は高校の頃から山口達也に恋しているから押しかけてきたというだけ。山口メンバーの部屋に女の子ひとりで行くなんて大変な事態かと思いきや、当時の安室奈美恵の実年齢は19歳なので、ストライクゾーンからギリ外れていたのかもしれない。

寮の管理人の珍さん(由利徹)の計らいで、空いている部屋を貸してくれることになった安室奈美恵。珍さん、安室ちゃんのために寮の共同浴場をミルク風呂にしてくれている。ここで安室奈美恵の入浴シーンというサービスカットが入るのだが、ミルク風呂のために肩から下は全く見えないという忖度ぶり。なお、そのあと、安室奈美恵の残り湯を寮生たちが飲みまくるという気持ち悪い展開になる

ところで、この寮の内部が、とても戦前からあるとは思えないほど小綺麗なのは、いかがなものか。吉田寮とか取材すればいいのに。完全個室で、ひと部屋が妙に広いし。山口達也の部屋にでっかいアインシュタインの写真が飾ってあるのとかもやっぱり、理系の大学生という存在を根本から解っていないと思われる。藤木直人は壁一面に真っ白なジグソーパズルを貼り付けていたし。何を表現したかったのだろうか。

さて、なんだかんだで右田教授から「寮生全員が中間試験でオールAを取れれば寮は存続し、亀井の復学させる」という条件を取り付ける。そのため、寮生たちは山口達也の扇動の元で「カンニングで行くぞー!」と気合を入れる。そして、完璧なカンニングを行うために、昼夜を問わず準備を進めるのである。その熱意を勉強に向ければいいのに

この話の根本的な問題はここで、カンニングをすることが「悪を倒すための正義のミッション」みたいになっているのだ。右田教授は、他人の論文をパクったり、キックバックを貰ったりしている「悪」ではあるのだが、それとこれとは全く別の話で、カンニングを正当化していい理由にしてはいけない。ついでに言うと、論文をパクられたほうの鯰田教授(麿赤児)は、白髪とヒゲをつけた漫画的な変人学者の装いなのだが、「カンニングってのは捕まらないのが肝心だ」「カンニングは理学だ!」「まさに文化だ!」とか叫んで寮生に協力してくる。悪いこと言わないから、この人とは距離をとったほうが良いですよ

さて、中間試験本番。「トーマス・エジソン落第生 それでもなれたぞ発明王 アインシュタイン落第生 それでも取れたぞノーベル賞」という謎の歌を合唱しながら寮から出陣する。いや、エジソンもアインシュタインもカンニングはしなかったと思うけど。で、試験中に安室奈美恵が消しゴムを落として、拾おうとした試験監督の教授が安室のミニスカートに釘付けになっている間に、山本太郎が服を脱いで全身に書かれた化学式をみんなに見せるという、斬新なカンニングを行うわけである。

そんなこんなで、ここからはリアリティ無視の「変わったカンニング」博覧会になってくるのだが、寮生はAを取り続けている。残るは右田教授の試験のみ。そこで右田教授は安室奈美恵にシュレッダーをかけるようお願いする。そこで試験問題と解答の書かれた紙を渡す。夜中、こっそりシュレッダーの紙を回収し、繋ぎ合わせて問題と解答を手に入れる寮生。だからその労力を勉強に回せと何度言ったら…

もちろんシュレッダーは右田教授の罠であり、当日の試験で配られる解答用紙は真っ白。試験会場のスクリーンを降ろすと、巨大な文字で文章題が1問書かれている。問題用紙を印刷しないことで漏洩を免れたということらしいが、右田教授、試験中ずっと問題文の前に仁王立ちしている。邪魔だよ

まあ予想通り、試験問題と解答を手に入れていたにもかかわらず、ちゃんと2重3重の対策を取っていた寮生たちが、見事にカンニングを遂行してAを取るんだけれど、しかしこの最大のヤマ場のカンニング方法がそこまで突拍子ないわけでもないのが物足りない。あと、寮生だけじゃなくて試験を受けていた全員がカンニングしていたけど。いいの?

このあと、山口達也が全裸になるというサービスショット(尻すら映らないけど)がありつつ、右田教授はキックバックがバレてカンニングとは関係なく失脚する。一応ラストで、寮生たちはカンニングがバレて留年になるので、それなりの落とし前はつけていたのだが。それより安室奈美恵である。失意のどん底にいる右田教授に対して、とんでもないテロ行為を行っているので、これはぜひ実際にこの映画を鑑賞して自分の目で確かめてほしい。唖然とするから。安室奈美恵こそが、この映画最大の巨悪であった。エンディングの『SWEET 19 BLUES』すら恐ろしく聞こえてくる。

 

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ちなみに、ジャニーズメンバーの出演本数を数えた記事

yagan.hatenablog.com

 

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