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【邦画】『神と人との間』感想レビュー--谷崎的世界観が麻薬のように脳内を揺さぶってくる怪作

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監督&脚本:内田英治/原作:谷崎潤一郎
配給:TBSサービス/公開:2018年1月27日/上映時間:89分
出演:渋川清彦、戸次重幸、内田慈、山田キヌヲ、萬歳光恵、根矢涼香

 

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71点
谷崎潤一郎の短編を現代を舞台にして甦らせるという「TANIZAKI TRIBUTE」のうちの1本。ちょっと前に著作権が切れたばかりだしね、とか小馬鹿にした気持ちも無くは無かったが、実際に本作『神と人との間』を観たところ、なかなかぶっ飛んでいて素晴らしかった。これは、残り2本も観なくてはならない。

潤一郎ラビリンス〈12〉神と人との間 (中公文庫)

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元となっている短編を読んでいない(「青空文庫」にも無かった)どころか、谷崎潤一郎の作品とはほぼ無縁の人生(『痴人の愛』を最初のほうだけ読んだかな)なので、この映画がどれほど谷崎文学らしいのかは判断できない。原作は、あの有名な「細君譲渡事件」を元にした小説だということらしいのだが。

「細君譲渡事件」とは、谷崎潤一郎が、友人でもある作家の佐藤春夫に自分の妻を譲るという声明文を出した事件。まあ非常識な行為ゆえに当時は一大スキャンダルとなったらしい。前も書いたけど、『文豪ストレイドッグス』に佐藤春夫が出てきたら面白いことになるのになあと、ずっと待ちわびている。

主人公は地方で医者をやっている男・穂積(渋川清彦)。熱帯魚屋で働く朝子(内田慈)とはお互いに惚れているのだが、穂積の親友で売れない漫画家の添田(戸次重幸)と付き合うようにお願いしてしまう。添田は朝子と結婚し、東京に引っ越していく。穂積は2人に何度も連絡するも返事がないので、東京に様子を見に行く。

と、こんな風にストーリーを解説していても、この映画の魅力は伝わらないだろう。このあと、男2人の異常な思考と行動によって発生する謎の高揚感が、ドラッグのような効果をもたらしてくる。これこそが谷崎的世界観なのか。考えたところでわからないので、ボクはそう勝手に解釈した。

とにかく、ぶっ飛んだ2人の男を演じているそれぞれの役者が素晴らしい。普通だったら配役を逆にすると思うのだが、気弱でオタク気質な渋川清彦も、女たらしで情緒不安定な戸次重幸も、どちらも新鮮なのにはまり役で、まさに新境地といったところであった。

おそるべきは、これ現代の話にされているので、普通にみんなスマホを持っているし、LINEでやりとりしているのだが、全く違和感のないまま、この麻薬的な世界観の中に取り込まれているのだ。現代を表すアイテムは数あれど、スマホほど「これは今の話なんだ!」と力強く訴えてくるものは無いはずなのだが、ここではスマホよりも谷崎的世界観のほうが勝っている。圧倒的に。

谷崎的世界観における愛とは時代など関係なく、普遍的なものなのだというメッセージか。怖いが、しかしそれでも気持ちいい。今のところ、2018年最強のドラッグ映画である。

神と人との間 [DVD]

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