2018年は読んだ本の記録を残そうかと思って、備忘録的にブログに載せてみます。といっても1月は3冊(漫画と同人誌を除く)しか読めなかったけど。意外と雑誌を読む時間が多いもんで。
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【小説】下村敦史『サハラの薔薇』
第60回江戸川乱歩賞作家の最新作。エジプト考古学者である主人公の乗った飛行機が砂漠に墜落し、生き残った正体の解らない数名とともにオアシスを目指して歩き始める。中盤はほとんど砂漠を歩くだけなのにも関わらず、序盤に散りばめた謎と目まぐるしく変わる人間関係のため、常に緊張の糸が張ったままであり、読者は興奮を持続させられる。それゆえ、ラストに明かされる巨大すぎる社会的メッセージですら、すんなり飲み込んでしまうこととなる。リアルな国際社会問題を多く取り込みつつも、単純に冒険小説として上々の面白さがある。
【小説】島田雅彦『虚人の星』
もしも日本の首相が二重人格で、裏の人格がアメリカ大統領ですら言い負かされるほどの弁の立つ極右思想だったら、という恐怖の設定。そんな裏人格が暴走する首相と、7つの人格を持つ中国スパイの話が交互に語られる。これを現政権批判(なんせ文庫の解説は上杉隆だし)と安直にとってしまうかどうかは読み手の政治的思想によるのではないか。そういう意味で、ある種のリトマス試験紙でもある。政界絡みの固有名詞が実名でポンポン飛び出し、リアリティの構築に関しては舌を巻く。全てを台無しにするオチはタイトルに使われている漢字そのままに「虚」の極みだが、それも狙い通りなのだろう。
【新書】長山靖生『「ポスト宮崎駿」論 日本アニメの天才たち』
基本的にジブリを軸としたアニメ史の解説なのだが、個人的に興味を惹かれたのは第1章まるまる使って書かれた新海誠論。どうにも新海誠の素晴らしさがわからなかいまま今に至っているのであるが、これを読んでその一端が掴めた気がした。もう観ることはないだろうなと思っていた初期作を再見してみようと思わせられただけで、この本の価値は(自分にとっては)充分である。
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