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【邦画】『氷菓』--ヒロインは、もっと現実感のない人でないといけなかったのでは

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監督&脚本:安里麻里/原作:米澤穂信
配給:KADOKAWA/公開:2017年11月3日/上映時間:114分
出演:山崎賢人、広瀬アリス、小島藤子、岡山天音、本郷奏多、斉藤由貴

 

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53点
まず最初に、一応は建築に関わる仕事をしている者として、これだけは明言しておく。学校の教室のような公共の場で、鍵が内側から開けられないなんてことは、絶対にありえないから。たぶん、何かしら法律にも引っかかるはず。

さて、米澤穂信の小説を原作とした青春ミステリである。京都アニメーション制作によるアニメ版のほうが有名であるが、本作はあくまで「小説の実写化」であって、アニメ版は無関係。といっても、傑作とも称されるアニメ版と比べられてしまうのは仕方ない。実写の『魔女の宅急便』と同じような運命だ。

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

 

 

映画鑑賞後に原作小説も読んでみた。初出が角川スニーカー文庫なので、ライトノベルのような位置づけだったのだろうか。驚いたのは、出版が2001年だということ。なんと『涼宮ハルヒの憂鬱』の2年前。京アニの系譜からしたら『ハルヒ』からの流れの先に『氷菓』があるかと思っていたが、原作だと順番が逆なのだ。

と、ついついアニメ版の話をしてしまいがちだが、ここは心を強く持って、アニメ版のことは忘れよう。米澤穂信の小説は『さよなら妖精』などいくつか読んでいるが、堅実な本格ミステリの書き手という印象であった。なので、『氷菓』を読んでけっこう戸惑った。ミステリとしてのロジックがきちんと構築されていない。デビュー作とはいえ、結論に至るまでの手はずが、強引に過ぎるのではないか。米澤穂信らしくない。

ということで、実は映画版におけるメインの謎解きが強引なのも、原作準拠なんである。なので、あまり強く責める気にはならない。主人公の脳内スピーチで話が進むのも、謎解きを映像として自然に見せるのに手っ取り早い方法を選んでいるだけだ。デスクの引き出しには鍵のかかっている描写を前半に入れたらなど、細部については修正してほしい箇所も多かったが。

惜しむらくは、配役を含めた、キャラクター設定のおざなりさであろうか。主人公・折木奉太郎の「省エネ主義」も、福部里志の「データベース」も、重要なキャラクター要素なのだが、セリフにちょっと出すだけでは伝わらない。そして、ヒロイン・千反田えるだが、もっと現実感のない人でないといけなかったのでは。顔じゅうから元気ハツラツ感が出ていると、「私、気になります」という名セリフの意味合いも、やっぱり変わってしまっているし。

 

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