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【邦画】『蠱毒 ミートボールマシン』--伏線の回収の仕方が笑えるスプラッターホラー

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監督:西村喜廣/脚本:佐藤佐吉、西村喜廣
配給:アークエンタテインメント/公開:2017年8月19日/上映時間:100分
出演:田中要次、百合沙、鳥居みゆき、川瀬陽太、村杉蝉之介、斎藤工

 

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67点
「蠱毒」とは、ヘビやサソリやクモといった生物をひとつの壺の中に入れて互いを食い殺させ、最終的に残った一匹を食べるか食べさせるという古代中国の呪術。自分が食べて最強になるとか、嫌な奴に食べさせて1週間以内に死なすとか、効用はいくつか説がある。本作の冒頭では、「蠱毒」がちゃんと描写付きで説明される。

さて、本作の主人公は借金取り立て屋の野田勇次(田中要次)。仕事はまるでダメで、自分で消費者金融から降ろした金を、取り立てた分だと偽って上司に渡すほど。上司(川瀬陽太)からは、直接的な暴力込みの、執拗なパワハラを受けている。さらには追い打ちをかけるようにガンが発症し寿命は1~3か月と診断される。

死ぬことが分かってから急に仕事に精を出して数名の債権者から金を巻き上げるものの、成り行きで入ってしまったボッタクリバーから、せっかくの取り立てた分の金を取られてしまう。さらには通り魔と間違われて、変な武闘派の警察集団に追いかけられたりしている。

とまあ、野田勇次のダメっぷり(と、恋心)が延々と描かれるわけだが、この日常描写がけっこう長い。そしてこれら全てが、ちゃんと伏線になっている。しかも思っていた伏線とは違う。「そう来たか!」と、思わず楽しくなってしまう伏線だ。

公式サイトなどでも触れられていることなのでこの先も言ってしまうが、ある日突然、野田の住む町の上に巨大なフラスコが覆いかぶさり、外に出られなくなる。そして中にいる人々は、謎の生物に寄生されることで戦闘マシンと化してしまう(「ネクロボーグ」というらしいが、劇中にその名が出てきたかは覚えていない)。

寄生された人間は、かつて自分が持っていた物を武器に進化させて体の一部としている。道路工事のおっちゃんだったら、削岩機というように。人間は当たり前のように殺すが、戦闘マシン同士も戦い、勝った暁には相手を吸収してさらにパワーアップする。この辺は、野田というか田中要次がすべて独り言で解説してくれる。まあつまり、元人間の殺人マシン同士を戦わせる「蠱毒」ってわけですね。

で、野田はどうかというと、ここで伏線のひとつが発動する。謎の生物に寄生されたものの、がん細胞が体内で操っているヤツを殺したことで、人間としての意思を残したまま戦闘マシンと化したのである。がん細胞ってそういうものなのか、とかはツッコんじゃいけない。

野田は『寄生獣』と同じく「人間と非人間の、どちらでもない存在」となったのであるが、別に殺人マシンと間違われて人間に襲われることはない。そういう定型は一切ないからね、この話。「蠱毒」が始まって以降は、特殊メイク造形のキャラクターによる華麗なアクションが繰り広げられるだけだ。

やけに長かった前半の日常パートが、戦闘パートで伏線として回収されていく。といっても、単に前半で登場した人物が、愛用の物を武器にした殺人マシンとなって襲ってくる、というだけで、ただただ笑えるのだが。もちろん野田の上司も殺人マシンになっているけど、人間だった頃の遺恨とか、そういう物語的なものは、当然のごとく皆無。

基本的に、同時刻に2カ所で行われている戦闘を交互に切り替えて見せていくというパターンであり、これだと興奮が持続するので素直に楽しい。仕方ないことだが、田中要次がいないパートのほうが、アクションがしっかりしている。ジャッキー・チェンのパロディはやり過ぎだったが、紐使いのお姉さんは素晴らしかった。

とにかく、「蠱毒」が始まってからは、野田の純な恋心以外には心理描写はすべて除外されていたのが良かった。相手役の百合沙も、生き残るためにはと乳を放り出ずのだが、それがまったくエロくなく、ただただカッコよかった。映画の快感って、こういうところから生まれると思う。

 

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