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【邦画】『心が叫びたがってるんだ。』レビュー---「ちゃんと言葉にしないと伝わらない」という、映画を否定するメッセージ

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監督:熊澤尚人/脚本:まなべゆきこ/原作:超平和バスターズ
配給:アニプレックス/公開:2017年7月22日/上映時間:119分
出演:中島健人、芳根京子、石井杏奈、寛一郎、荒川良々、大塚寧々

 

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61点
本来は、アニメと実写の違いについて考えなきゃいけないんだろうけど、これくらい同一にしちゃったら、考察する余地もなくなる。しかしなんでたった2年前の記憶にも新しいアニメを、そのまんま実写化したのか。アニメが生理的に無理な人向けか。そういう人、一定数いるんだろうけど。

アニメ版を観たときから思っていたことなんだけど、最後に上映するミュージカル劇は正味何分あるのだろうか。ラブホテル跡地のすぐ近くに市民ホールを建てるとは思えないし、移動時間を考えたら60分以上は無いと話が成立しない気もするのだが。

あとこれは実写化によって際立ったことだが、声が出せない女子高生って、日常生活すらままならないはずで、一般の高校に通うとなると相当なケアが必要なはずだと思うが(普段の授業、どうしてるの?)。心身性なので精神科に通院するべきだろうし、親がそれをさせていなかったとしたら虐待である。アニメだとリアリティラインを下げられるけど、実写だと気になってくる。

それに加えて、担任の教師(荒川良々)がとんでもなく問題。生徒の出し物に自分の趣味を一方的に押し付ける。実行委員も根拠なく勝手に決める。声が出せないクラスメートに対する配慮も一切ない。クラス一丸となって何かを成し遂げる系の話が個人的に嫌いなのもあるが、それを差し引いてもコイツの思いやりのない身勝手さには反吐が出た。

さあ、ここまでどうでもいいことをぶちまけたので、以下本題。ここから先は、アニメ版も実写版も共通の件です。大まかなストーリーとしては、子供の頃のトラウマによって声を出そうとすると腹痛が起こる女の子(芳根京子)がいて、でも同じクラスの男子生徒(中島健人)と関わるうちに歌なら大丈夫だと気づいて、市民とのふれあいイベントでミュージカル劇をやることになる、という感じ。

この話、全体を貫くメッセージは単純で、「ちゃんと言葉にしないと伝わらない」ってことなんである。起こるトラブルのほとんどは、ちゃんと言葉にして伝えていないのが原因だ。もちろんそれは日常生活を送る上では大事なことだけど、これを映画が、しかもアニメ映画が主張しているということには、ちょっと驚いた。

というのも、映画という表現は昔から、いかに言葉を用いずに心の中を伝えるかに苦心してきたからだ。雨を降らせることで悲しみを伝える、とかさ。映画の最初はサイレントであったという点もあるのだろう。「言葉にしないと伝わらない」って、ジョルジュ・メリエス以降の全ての映画人を否定しているとも言える。

映画自体は、アニメ版も今回の実写版も、基本的には個々のキャラクターとエピソードがよく練られていて、良い作品だと思うのだ。原風景としてのラブホテル、というのも現代的で面白いし。それだけに、「言葉にしないと伝わらない」というメッセージが、映画というジャンルに向けた鋭利な刃物のようで恐ろしくなってくるのである。

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