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【邦画】『22年目の告白 -私が殺人犯です-』--1995年の呪縛から解放されよう

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監督:入江裕/脚本:平田研也、入江裕
配給:ワーナー/公開:2017年6月10日/上映時間:117分
出演:藤原竜也、伊藤英明、夏帆、野村周平、石橋杏奈、岩松了

 

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63点
藤原竜也が「はじめまして、私が殺人犯です」と仰々しく言い放つ、この映画のCMを見たとき、多くの人が「またか」と思ったに違いない。と同時に、藤原竜也が大声で泣き叫ぶ例の大味な演技が脳内で再生されたことだろう。若手芸人がモノマネのネタにしているほど、藤原竜也の演技はこういうものだという決めつけがなされ、半笑いの対象とすらされている。

このような風潮は藤原竜也本人ではなく、そうやって叫ばせる演出家の責任だとは思う。それはともかく本作『22年目の告白 -私が殺人犯です-』は、藤原竜也に対する世間のイメージを逆手に取っている。予告で「いつもの藤原竜也か」と思わせるのは、このミステリー作品にとって重要なことだ。この思い込みが強い人ほど、本編の展開にはびっくりする。

なんせ藤原竜也は、作品中でほぼ泣き叫ばない。終盤のヤマ場であり、いつもだったら感情を爆発させる演技プランを要求されるシーンでも、アクションは派手だが感情は抑えている。この映画を元にGOたかしはネタを作るのは難しいだろう。なお、藤原竜也が藤原竜也を抑えている代わりに、他の人が藤原竜也になりがちではあった。特に夏帆は、ほぼ藤原竜也だった。

簡単にあらすじを説明すると、1995年に起きた連続殺人事件の犯人が、2010年に時効を迎えてからさらに7年後の2017年に突如告白本を出版し、たちまち日本中が大ブームとなる、というもの。日本における時効の扱いは、物語の肝でもあるので劇中で丁寧に説明されるが、一般常識として「2010年に刑事訴訟法が改正して、それ以降の時効は廃止された」ということくらいは観る前に頭に入れておいたほうがいいかと。

ボクがこの作品から感じたのは、1995年ひいては90年代の呪縛から解放されよう、ということである。『輪るピングドラム』と全く同じテーマだ。ある年齢以上の日本人なら誰しもが1995年に特別な思いがあるだろう。1月17日と3月15日に自分が何をしていたかは、22年経った今でもハッキリ覚えている。また、殺人事件の犯人が随分経ってから急に表れて本を出版するというのは、1997年のあのやりきれない事件を嫌でも連想する。

告白本を出版した藤原竜也を「かっこいい」とTVのインタビューで答え、サイン会に行列を作り、SNSでキャーキャー言っている女子は、90年代をリアルで知らない人たちである。1995年の足かせがついているかいないかによって価値観の断絶はあるのだろうと、これは実感として思う。この映画は、1995年に囚われたままの主要人物と、1995年を知らないエキストラを並べることで、その断絶を浮かび上がらせようと果敢に挑戦している。

実際の映像と作中の殺人事件の映像を織り交ぜて作られたタイトルシーケンスが凝っていてメチャクチャいい。他にもYahooやTwitterなどの画像を用いて藤原竜也が拡散されていく様を表現した映像など、VFXの仕事が素晴らしい。とまあ褒め倒してもアレなので最後に苦言。予告編で、本編に存在するわけがないシーン(別のシーンの映像と音声を一緒にしていた)を流していたのは、ミステリーとしては酷すぎるアンフェアではある。あれは良くない。

 

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