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【邦画】『ハルチカ』感想レビュー--橋本環奈を信仰の対象とする宗教映画

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監督:市井昌秀/脚本:市井昌秀、山浦雅大/原作:初野晴
配給:KADOKAWA/公開:2017年3月4日/上映時間:118分
出演:橋本環奈、佐藤勝利、恒松祐里、小出恵介、志賀廣太郎

 

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53点
これは宗教映画である。橋本環奈という教祖がいて、周囲の信徒たちが崇め讃える話だ。この映画のタイトル『ハルチカ』は、登場人物2人の名前「ハルタ」と「チカ」をあわせたものだが、これはミスリードだ。なぜなら映画は常に「橋本環奈(チカ)と、それ以外」という構造を保ち、ジャニーズの人気アイドルが演じるハルタですら、橋本環奈と対等な存在とはならないのだから。

映画は前半と後半で大きく分かれるが、どちらも青春部活モノとしての王道パターンを踏襲する。まず前半は「一定数の部員(今回は9人)の集めなければ廃部」という課題をクリアするというおなじみのもの。でもこれ、かるた部とかならともかく、文科系部活動としては超メジャーな吹奏楽部なのが引っかかるが。前年に大事件があって部員がみんな辞めていったことが示唆されるが、この規模の生徒数だったら新入生だけで9人くらいすぐに集まりそうだが。

あと、頑なに吹奏楽部を廃部に追い込もうとする校長(志賀廣太郎)も、リアリティからすると意味不明であった。吹奏楽部なんて、学校側としても存在したほうがメリットいっぱいあるのに。この校長、部員集めの期限当日にも表れて「は・い・ぶ!」と勝ち誇ったかのように宣言してくるのだが、その時点で橋本環奈は登校拒否だった生徒を再び学校に通わせているという偉業を達成しているのだ。本来、お前ら教員の仕事だろ。まずはそこ感謝しろよ。

あ、これは宗教映画であった。校長は、信仰を阻害する絶対悪としての存在であり、理不尽なのは当然だ。対する橋本環奈は、信者を集めるという手段で対抗するわけだ。橋本環奈は、目を付けた人物をひとりづつ奇抜な方法で勧誘していくが、もはや手段に意味はない。橋本環奈のただただ圧倒的なカリスマ性によって、片っ端から有無を言わせず心をわしづかみにしていく。

なぜ橋本環奈にここまでの教祖としての貫禄があるかというと、万人が認める圧倒的なルックスによって、常に相手より上位にいるからであろう。あの茶色い瞳を小刻みに動かして「目を泳がせる」という慣用句を具現化するだけで、すべての人類より上位の存在となることができる。あんな瞳の動き、ふつうはできないし(ためしに自分も鏡の前でやろうとしてみたが、全くできなかった)。また、元不良の男子生徒だろうとキック&腹パンでぶちのめすシーンを入れることで、絶対的な主従関係も示す。そのため「夜の校舎で男子と2人きり」というシチュエーションでも危険な香りは一切しない。信徒が教祖に手を出すなんてありえないわけだから。

(ところで、夜の校舎に忍び込めたり、柵のない屋上に生徒だけで侵入できたりと、ずいぶんと安全面に難のある学校ではある)

後半は、楽器未経験の橋本環奈が、ひとり上達できずに足を引っ張ってしまうというパターン。ここで初めて、橋本環奈に教祖らしからぬ綻びが発生する。だがここは、橋本環奈の求心力が低下することによって信徒たちが崩壊しそうになる経過を見せることで、逆に橋本環奈の偉大さを証明しているのだろう。たったひとりいなくなるだけで、今まで積み上げたものがあまりにも脆く崩れていく様子を、固定カメラ長回しによって臨場感いっぱいに映し出していく。ここ最近の邦画では至極の名シーンだ。

ラストは、信徒たちが橋本環奈への絶対的な服従を態度で示すことで、信仰は周囲へと伝播し、学校全体(=世界)が幸せになる。まさに宗教映画そのものであり、絶対悪の校長まで感化されて踊りだす。橋本環奈の教祖ぶりには目を見張るものがある。幸福の科学は、映画部門をテコ入れしたいのなら、清水富美加を出家させる前に橋本環奈を勧誘すべきだ。

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橋本環奈主演作って、変な映画ばっかりだな

yagan.hatenablog.com

 

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