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【邦画】『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』--クドカンは、縛りがキツいほうが実力が発揮できるんじゃないだろうか

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監督&脚本:宮藤官九郎

配給:東宝=アスミック・エース/公開:2016年6月25日/上映時間:125分
出演:長瀬智也、神木隆之介、尾野真千子、森川葵、宮沢りえ

 

 

46点
以前から気になっているのだが、なぜ宮藤官九郎に限って監督作品と脚本を手がけただけの作品を分けることなく「クドカン作品」として一緒くたにされてしまうのであろうか。宮藤官九郎が監督を務めた映画作品は『真夜中の弥次さん喜多さん』『少年メリケンサック』『中学生円山』そして本作『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』の4つだけである。「クドカン作品」のイメージが強い『舞妓 Haaaan!!!』も『なくもんか』も『謝罪の王様』も、宮藤官九郎は脚本を担当しただけだ。監督は水田伸生という人なのだが、なぜか称賛も批判も宮藤官九郎にのみ向けられている。水田監督、いつも蚊帳の外。で、そんな水田監督には申し訳ないが、やっぱり宮藤官九郎は自身で監督を務めた作品の方が出来がいいことが多い。というか、アレとかアレがなぜつまらないのか、水田伸生の責任をもっと問うべきではないか。

 

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と、ここまで宮藤官九郎を持ち上げておいてなんだが、『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』はダメだった。クドカンの持ち味は、前半でバラバラのように見えたピースが、後半で時制を巧みに操作することで繋がっていく謎解きの快感それだけだ。本作がダメであった主な原因は、地獄という舞台にあるのではと思う。設定が自由すぎて何でもアリなために、あまりに多くの要素を取り入れすぎてしまい、ひとつの作品を構築する前段階で力尽きてしまったようだ。クドカンは、縛りがキツいほうが実力が発揮できるんじゃないだろうか。

とりあえず、メインの舞台である地獄の基本設定がワケわからない。地獄に落ちた主人公(神木隆之介)は罪人であり、鬼たちによって拷問される立場のはずだ。でも、そんな感じは全くなくて、しょっちゅう地獄の片隅でたそがれている。あと、元々は罪人である長瀬智也は転生を7回やったので鬼になってしまったということなのだが、それ地獄では大出世じゃないか。拷問を受ける側からする側に行くわけだから。でも「鬼になる」というのが絶望的なこととして描かれている謎。さらに、序盤で六道(人間道とか地獄道とか6つの世界があるという概念)についての説明してるのに、閻魔が「畜生道」というハンコを押すと動物になって現世に戻るっていう、さっきの説明をまるっきり無視した展開になるからついていけない。畜生道と人間道(現世)は別の世界だって、さっき言ったばっかじゃん。めちゃくちゃすぎる。

こちとら漫画『鬼灯の冷徹』のおかげで地獄に関する基本知識は持っているのだ。だから本作が、地獄に関する知識をごくごく薄っぺらなまま取り入れているだけなのがよくわかる。地獄がどんなにオリジナルな要素満載でも構わないのだが、せめて映画内の辻褄くらいはあわせてほしいのだが。八寒地獄の叫び声みたいな小ネタじゃなくて(ていうかアレ、何が面白いのかちゃんと伝わっているのだろうか)。

地獄シーンのことばかりになってしまったが、実は本当に酷いのは現世シーンのほうである。淡い恋の相手(海の見える高台でひとりフルート吹いてる女)の想いを確かめずに死んじゃったのだが、何十年か後に「実はずっと自分の事を想ってくれていた」とわかるという、すっげえ気持ち悪い話。『中学生丸山』によって、こういう「中二病」的な妄想は克服したはずじゃなかったのか、クドカン。

 

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