ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【名画座】「アニメスタイル セレクションVol.74」@池袋新文芸坐オールナイト--アニメを通じて1960年代にタイムスリップしたハロウィンの夜

f:id:yagan:20151112214414p:plain
2015/10/31-11/1

 

正式なタイトルは「新文芸坐×アニメスタイルセレクションVol. 74 アニメファンなら観ておきたい200本 『わんぱく王子の大蛇退治』と東映長編の名作」。1960年代に黄金期を迎えた東映長編アニメーションの中から4本を上映。街はハロウィンの最中、池袋の映画館に集まったのは、意外にも年配の人が多かった。理由は、よくわからない。


わんぱく王子の大蛇退治
演出:芹川有吾/1963

スサノオを主人公として、日本神話を題材にしたファンタジーアニメ。日本神話に関しては『鬼灯の冷徹』で得た程度の知識しかなかったので、あとで検索してみたところ、本作のストーリーは割と神話に忠実っぽいとわかった。今の感覚からすると、キャラクター造形が極端にデフォルメされている、というかもはやグラフィックデザインみたい。あの夜の神(ツクヨミ)の造形、すごかったなあ。なんか魔法みたいな感じで氷の神殿を修復してたけど、ちょっと前のディズニー映画で似たようなシーンを見た気もする。今回の4作では一番古い作品だが、グラフィカルな絵がアニメになって動いているからか、一番新しさを感じた。東京国立近代美術館フィルムセンターから35mmフィルムを借りて上映。


『太陽の王子 ホルスの大冒険』
監督:高畑勲/1968

高畑勲の初監督作品であり、宮崎駿が初めて本格的に制作に関わったため、アニメ史において記念碑的な作品になっている。そんな経緯からか、レンタルビデオ屋では、ジブリのコーナーに置いていたりする。『わんぱく王子の大蛇退治』から続けて観たせいで、絵柄が一気に普通になったなあって思った。それだけ今のアニメに影響を与えてるってことかもしれないが。村の祭やら踊りのシーンに力を入れていて、意外にもバトルシーンは止め絵だったりする。


『長靴をはいた猫』
演出:矢吹公郎/1969

この猫、けっこうな悪。詐欺、窃盗、脅迫となんでもやる。その動機は良心でも、逆に欲望でもなく、単なるレクリエーションという一番タチ悪いやつ。説教臭さが全くないのが非常に良かった。今回の4作で、素直に一番面白かった作品。


『空飛ぶゆうれい船』
演出:池田宏/1969

これ、100%の褒め言葉として捉えてほしいのだが、ワケがわからない。いや、言いたいことはなんとなくわかるんだけど、強すぎる思想をガンガン押し込んでいるため、メッセージ性ばかりが肥大して肝心のストーリーがおかしなことになっている。事件の黒幕的な人が中盤でいきなり現れた巨大なカニに殺されたりするのだ。なんでカニ? 徹夜明けの午前4時半頃に巨大なスクリーンでこれを観せられるという稀有な体験は一生忘れないと思う。