映画‗邦画
本作における世界は論理的な調和の形成が放棄され、不条理な空間で満ち溢れている。小学生のみー坊が訪れる砂浜は、子供たちが波打ち際で遊ぶような海水浴場なのだが、そのすぐ横で釣り人が釣竿を垂らしている。現実にはあり得ない謎の状況に面食らう。
阿部寛の役者としての特性は、「少しだけ規格外」の存在感にある。少しだけ平均的な日本人の体格から外れ、少しだけ平均的な日本人より彫りの深い濃い顔で、少しだけ声が低く圧があり、少しだけ演技が臭くオーバーである。
とにかく気になるのが、いわゆるリアリティラインの不安定さである。屈強な男たちに囲まれた橋本環奈がすばしっこく飛び回り華麗な銃捌きで翻弄するガール・アクションなのだが、その肝心のアクション部分でリアリティラインが最も不安定になってしまってい…
物語と呼べるほどの展開は存在しない。劇映画なのかどうかすら悩むほど。強いてカテゴライズすれば日常系かな。『らき☆すた』と同じジャンルかもしれない。
三木聡監督の新たなる挑戦と言い切っていい。何より、これまでの三木作品では主目的としていた、笑わせるタイプのギャグが非常に少ない。しかも、三木作品の常連でありギャグ担当の岩松了やふせえりは、メインストーリーからは完全に切り離されている。
若者の恋愛模様にSF的な要素を加えて化学反応を与え、新しい発見ができないか試みる。三木孝浩監督作品に多い、まあいつものパターンである。
VFXによる映像の迫力と密度は、ハリウッド大作にも引けを取らない。日常の風景が無秩序に崩壊して再構築していく映像では最高峰であるMCUのマルチバース描写やクリストファー・ノーラン作品と並べても、とりあえずは恥ずかしくない程度のレベルだ。
2022年6月に観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。
予告映像を最初に観た時に思ったのが、はたして生見愛瑠(めるる)に女子高校生の役はできるのかという疑問であった。もっとも、めるるの実年齢は20歳(※ 公開日時点)なので、別に高校3年生を演じるのには不自然ではない。
待ちに待った「Side:B」を公開日に観に行ったところ、たしかにそこには河瀨直美監督による作家性で充満していた。それもリーフェンシュタールなんて比較にならないほどの狂気に満ちた作家性が。
最近観た邦画2作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。
出版社みたいなところに勤める澪(演:小芝風花)は、経緯は知らないが、閻魔寺という寺でぬらりひょん(演:大倉孝二)や座敷童(演:池谷のぶえ)などの妖怪たちとシェアハウスして楽しく暮らしている。
最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。
大学で哲学を教えている小鳥遊遊司(演:長谷川博己)は、顔に水をつけられないほど泳ぐことが苦手だが、唐突に水泳教室に通い始め、インストラクターの薄原静香コーチ(演:綾瀬はるか)の元で泳ぎを教わることになる。
河瀨直美監督には日本のレニ・リーフェンシュタールになってほしいと、皮肉ではなく願っている。河瀨監督がその域まで到達するには、まずは本作に『オリンピア』相当の作家性が無くてはいけないのだが…。
最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。
ラブホテルで行為に及んでいる柏木(演:根本正勝)。だが、事が終わった直後にヤクザ(演:原田龍二)が部屋に乗り込んできて、「スカウトマンがスカウトした女に手を出すな」と因縁を付けられ、300万円を要求される。
いわゆるハーレム型と呼ばれる、主人公の男の周囲に好意を寄せている女が多数いる構図のラブコメ漫画には、大きく分けて2つの種類がある。ひとつは主人公の男が鈍感すぎる朴念仁で、周囲からの恋心にまったく気付いていないパターン。
東京近郊の、周囲に何もないスクラップ工場で働く秋本(演:足立智充)と谷口(演:玉置玲央)。そんな初期設定から、閉塞した地方都市での労働者階級のリアルを描いたよくある作品かと思いきや、序盤から話は予想外の方向へ転がっていく。
映画の冒頭で、「古の時代から船橋の血を守ってきた一族の末裔であるヒーロー兄妹」がいて、「バイオテロを企てている悪の組織」を早急に倒さないといけない、といった大袈裟なハッタリによる舞台設定が説明される。
蜷川実花監督の自意識の高さは、今さら説明するまでもないであろう。原作に対するリスペクトなんて微塵も無く、自分がかっこいいと思っている極彩色のヴィジュアル表現をするための踏み台としか考えていない。
東京・下北沢の古着屋の前。突如として話しかけてきた女子高校生は「今、パンツを履いていないんです。スースーなんです」と訴えてくる。なぜ今ノーパンで下北沢にいるのか、彼女の長い長い回想が始まる。
最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。
あらすじを一言で説明すると、「女子高生に殺されたい」という願望を持つ高校教師がいて、意中の相手に殺してもらえるような最適な環境を作ろうと綿密な計画を練る話である。本当に、ただそれだけなのだ。
本作の主演であるSnow Manのファンと、アニメ『おそ松さん』のファンは、別に重なっているわけではない。映画で見せるべきがSnow Manであれば、そのためだけに利用される『おそ松さん』は不憫な扱いにされるのが道理だ。
1999年に世界は滅亡するというノストラダムスの大予言を信じて、来たるべき乱世の救世主となるべく幼き頃から孤島に隔離されて、日々の特訓により鍛え上げられた勝平(演:伊藤英明)ら「終末の戦士」たち。だが、時は2022年。
最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。
まずは、式を行う前までの準備に明け暮れる新郎新婦を追った前日譚が、尺のおおよそ3~4割を占める。ここで、式当日の展開のための伏線をいくつか張るとともに、テーブルクロスなどの色決めとか誰を招待するしないかとか、披露宴の準備にありがちな光景を…
最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。
劇中で主人公が本を出すことになる出版社の名前が文芸社だったので何事かと思ったが、この映画の原作である小説は文芸社から出版されていたのであった。