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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『そして、バトンは渡された』『愛のくだらない』『半狂乱』『ずっと独身でいるつもり?』

最近観た邦画4作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『そして、バトンは渡された』
監督:前田哲/脚本:橋本裕志/原作:瀬尾まいこ
配給:ワーナー・ブラザース映画/上映時間:137分/公開:2021年10月29日
出演:永野芽郁、田中圭、岡田健史、稲垣来泉、朝比奈彩、安藤裕子、戸田菜穂、木野花、石原さとみ、大森南朋、市村正親

前半は2つの話が交互に語られるが、本名の明かされない登場人物がいる時点で、仕掛けは容易に想像がつく。その仕掛けに構造的な意味がほとんど無く、さも劇的に種明かしされたところでカタルシスが得られないのが問題であろう。後半では、非常識で自分勝手なように描かれていた人物が実は…、というどんでん返しを行っている。だが、自己の利益のために何度も結婚離婚を繰り返すなどの行動を不問にするのは難しく、人間の多面性を浮き彫りにする狙いは成功しているとは言い難い。
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『愛のくだらない』
監督&脚本:野本梢
配給:「愛のくだらない」製作チーム/上映時間:95分/公開:2021年10月30日
出演:藤原麻希、岡安章介、村上由規乃、橋本紗也加、長尾卓磨、手島実優、根矢涼香、櫻井保幸、綱島えりか、鈴木達也、山下ケイジ、高木悠衣

テレビ局で働く野心の強い33歳の女性が、同棲中の彼氏から「妊娠した」と告げられる。なかなか面白くなりそうなツカミだが、結局のところ他人の気持ちになって考えることができていなかったと気付くだけの話で、既存の世界を壊すような瞬間は無かった。トランスジェンダーの扱いは、キレイゴトかもしれないが悪くはない。長尾卓磨の絶妙に人を苛立たせる動作が記憶に残る。第14回田辺・弁慶映画祭コンペティション部門・弁慶グランプリ受賞。
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『半狂乱』
監督&脚本:藤井秀剛
配給:POP/上映時間:111分/公開:2021年11月12日
出演:越智貴広、工藤トシキ、山上綾加、山下礼、望月智弥、美里朝希、田中大貴、宮下純、種村江津子

舞台公演中に事故が起こり座長が中止をしようとするが、団員のひとりが観客を監禁して、日本刀で脅しながら公演の続行を強行する。衆人が看視する閉鎖空間という特殊な状況の中で、"狂人"の暴走により事態がどんどんと悪化していくスリルは、ただならぬものがある。一方で、劇団員の回想シーンが並列で語られるが、それによって過去と現在を繋いでいくわけではない(つまり、過去の出来事と現在の状況にほとんど関係性が見えない)。そのため何度も挟まる回想シーンが、ただただ話を分断して緊張を削いでしまうだけで、構造上の致命的な欠陥になってしまっている。
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『ずっと独身でいるつもり?』
監督:ふくだももこ/脚本:坪田文/原作:おかざき真里/原案:雨宮まみ
配給:日活/上映時間:94分/公開:2021年11月19日
出演:田中みな実、市川実和子、松村沙友理、徳永えり、稲葉友、松澤匠、山口紗弥加、藤井隆、橋爪淳、筒井真理子、小柳津林太郎

独身であることを周囲から心配される36歳のライターなど、女性であるため社会で生きづらくなっている4人の話が断片的に語られていく。もっとも、子育てに疲れる主婦とパパ活女子とでは、別種の問題のような気もするが。無自覚に男尊女卑の言動をする男の趣味が「空の写真を撮る」など、登場人物の全てがあまりに記号的な造形で、社会批評としてもエンタメとしても厚みが無くペラペラ。藤井隆の独白だけは、彼のこれまでの芸能人としての歩みとも重なり、心に刺さったが。
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