最近観読んだ小説3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。
スポンサードリンク
相沢沙呼『medium 霊媒探偵城塚翡翠』
出版:講談社
65点
可憐な美少女でもある霊媒探偵が先に"霊力"によって犯人を割り出し、その結論に合うように相棒となった視点人物の男が論理的な推理を構築していく。みたいな感じの中編が並んだ後、全てが引っくり返るどんでん返しが用意されている。そのカタルシスには圧倒されるのだが、そこに至るまでにいい年をした男が絵に描いたような美少女にメロメロになっていくキャラクター小説まがいを読まされるのには覚悟がいる。どんでん返しは、前フリはつまらないほど効果的だというジレンマが発生している。
-----
宇佐美まこと『黒鳥の湖』
出版:祥伝社
57点
かつて起こした"罪"に囚われ、巻き起こる不幸を因果による"罰"と捉える主人公が、過去を清算しようと行動を起こすうちに、周囲の人物の"罪"も暴いていく。一番の悪に大した制裁が無いなど後味は悪く爽快さは微塵もないのだが、こうした悪が混濁してこそ世界なのだという説得力はある。ただ、物語としては起伏が少なく、時系列を何度も行き来するなどして展開を水増ししている感がある。
-----
穂波了『月の落とし子』
出版:早川書房
52点
第9回アガサ・クリスティー賞受賞作だが、賞のイメージと違い、未知のウイルスによって巻き起こるパニックSF。たまたま内容が現実社会とリンクしてしまったため、感染拡大を防ごうと早急に思い切った判断をする国についてなど、どうしても現実と比較してしまい冷静に読むことができない。無慈悲な国の判断に見捨てられた市民が団結してが立ち向かう展開が、現実と比較して絵空事に思えてしまうのは、作品にとって不幸なことであろう。
-----
スポンサードリンク