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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『ラストレター』『サヨナラまでの30分』『プリズン・サークル』

最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『ラストレター』
監督&脚本&原作:岩井俊二
配給:東宝/上映時間:120分/公開:2020年1月17日
出演:松たか子、広瀬すず、庵野秀明、森七菜、小室等、水越けいこ、木内みどり、鈴木慶一、豊川悦司、中山美穂、神木隆之介、福山雅治

57点
現在と過去それぞれにおいて、「他者に成りすました手紙のやり取り」が複雑に交差する。その絡み合いの中から純文学的な何かを紡ごうとしているのだが、それ以前に映像表現であるがゆえのリアリティの欠如が気になって、鑑賞の邪魔をする。別人だと嘘をつく導入から巧妙なミステリを期待するのがお門違いだとは。役者が本職ではない演者たちの存在も、構成のぎこちなさを増幅させてしまっているだけだし。そんな状況下で唯一、豊川悦司だけは「文学表現の映像化」を完璧に成功させていて見応えがあった。

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『サヨナラまでの30分』
監督:萩原健太郎/脚本:大島里美
配給:アスミック・エース/上映時間:114分/公開:2020年1月24日
出演:新田真剣佑、北村匠海、久保田紗友、葉山奨之、上杉柊平、清原翔、牧瀬里穂、筒井道隆、松重豊

72点
交通事故死した若きミュージシャンが、暗く友達のいない大学生の身体に乗り移り、解散した自分のバンドを復活させようと尽力する。定型のフォーマットでありながら、成り代わりのための象徴的な小道具の扱いと、冒頭から続くMV的でスタイリッシュな演出力によって、今までにない新鮮な作品であると印象付けてくる。「プリンス・オブ・死んだ魚のような目」こと北村匠海が、陰と陽の2人の若者を自然に演じ分け、演奏シーンでは役柄に応じてそれぞれ別種の魅力を醸し出していて圧倒される。ラストのフェスシーンでは、何が起こるのかは分かり切っているはずなのに、北村匠海の眼力が覚醒し、その脅威の表現力によって鳥肌が立つ。

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『プリズン・サークル』
監督:坂上香/アニメーション監督:若見ありさ
配給:東風/上映時間:136分/公開:2020年1月25日

54点
島根県の刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」の中で2年間に渡って撮影を行ったドキュメンタリー映画。ここではTC(回復共同体)と呼ばれる、受刑者同士が対話して自らの罪に向き合うなどのコミュニケーションを駆使した更生プログラムが実施されている。このTCを通じて、収容されている受刑者も主体性のある個人なのだと認識させる狙いは成功している。ただ、ガチガチに制約された撮影環境下では、否が応でも記録者は優等生にならざるを得ず、結果としてTCを全肯定しているだけのプロモーションとしか思えなかったのが物足りない。

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