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【邦画】『シグナル100』感想レビュー--頭が良くない人たちのデスゲーム、いいかげん嫌になってきた

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監督:竹葉リサ/脚本:渡辺雄介/原作:宮月新、近藤しぐれ
配給:東映/上映時間:88分/公開:2020年1月24日
出演:橋本環奈、小関裕太、瀬戸利樹、甲斐翔真、中尾暢樹、福山翔大、中田圭祐、山田愛奈、若月佑美、前原滉、栗原類、恒松祐里、中村獅童

 

注意:文中で大まかなストーリーと結末に触れています。ネタバレにご注意ください。

 

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52点
なぜか美男美女しかいない、とある高校3年生のクラス。視聴覚室に集められた36人は、担任の下部(中村獅童)によって不気味な映像を見せられる。この映像を見たために、特定の行動を取ると自殺してしまう催眠にかかってしまったのだ。「携帯電話を使う」「涙を流す」など、自殺の引き金となるシグナルは全部で100個。生存者がひとりになるまで催眠は解かれることはない。死屍累々のデスゲームの幕が上がった!

 

そんなわけで、みんな大好き『バトルロワイアル』オマージュが令和になっても爆誕。ゲームが開始する前に何人か死ぬのもバトロワオマージュだが、これいつもアンフェアだなあって思ってしまう。他の人たちに「マジで死ぬんだよ」と周知させるためでもあるんだけど、参加者にはルール説明を聞く権利を平等に与えてほしい。

デスゲームものは、やっぱり知力による駆け引きの勝負が肝であろう。定型通り、まずは生徒たちが協力して全員が助かる方法を探そうとするが、こっそり自分だけが生き残ろうとするサイコ野郎が登場することで殺し合い(自殺だけど)の火蓋が切って落とされる。

サッカー部の和田隼(瀬戸利樹)は、1980年頃のアメリカの宗教団体による集団催眠についての本を図書室から持ってきて、そこに書かれたシグナル50個をみんなの前で発表する。しかし、実は本に書かれていたシグナルは合計64個だった。仲間のふりをして、自分だけ知っているシグナルに誘導していき、クラスメイトを次々と自殺に追いやっていく和田。「ペットボトルの飲み物を飲む」とか。映画を観た後にペットボトルの歴史をネット検索しちゃったよ。アメリカでは1974年に商品化されたらしいので、セーフ。

細かくはいろいろあるけど、大雑把に言うと和田vs主人公の樫村怜奈(橋本環奈)ら他の生徒、という対立構造になる。でもこの和田、策略家のような扱いの割には行動が不用意で、とても知的とは言えない。シグナルに「歌を歌う」ってあるのに口笛を吹いていたし。それ、アウト判定されかねない危険行為じゃないか。あと、相手を騙すためにペットボトルの飲み物を口に含んで、あとで吐き出すとか。口に含むのを「飲む」と判定されない自信はどこから来るのか。

デスゲームものは、ルールがあやふやだと途端に冷める。定義が不確定なまま死んでしまうのなら、高度な知能戦とか意味をなさなくなるから。本作だと「暴力を振るう」に顕著なんだけど、具体的に何をしたらアウトなのか場合によって違うので、うまくノれない。あと、「10秒間、見つめ合う」ってシグナルもあるのだが、みんなけっこう見つめ合ってたけどなあ。

さて、裏工作がバレ始めた和田は「同時に7人から指を差される」というシグナルで歯向かう相手を殺しにかかる。いや、そんな本人の行動と無関係なシグナルもアリなの? だとしても「7人から指を差されていることを本人が認識する」までしないと催眠は発動しないんじゃないかなあ。死角となる後ろから指を差されても意味ない気がする。

それより和田、まだ何人も残っている状態で、そんな裏切りを簡単にできる危険なシグナルを、仲間に取り入れてないやつにまで明かすなよ。現状もっとも命を狙われておかしくない立場なのに。案の定、樫村側も7人集めて立ち向かってくるし。頭が良くない人たちのデスゲーム、いいかげん嫌になってきた。

その後は、和田と幼馴染だったと唐突に明かされる榊蒼汰(瀬戸利樹)に一緒に死のうと持ち掛けたり(直前で邪魔が入ってあやふやに)、その榊はこれまた唐突に催眠が解ける錠剤を見つけたり(しかし人に飲ませる錠剤をじかにポケットに入れないでほしい)、でもそれもただの嘘だったり、理解できない行動が続く。理解できないのは、彼らの真意をまったく説明してくれないから。観客への判断に委ねるとかいうレベルではなく、完全な丸投げ。物語構築の放棄。

おそらくだけど、和田や榊を含めたサッカー部の全員が樫村のことを好き(これは後に明かされる事実)なので、自分が死んででも彼女を生き残らせるために各々が策を練っていたと推測したが。だとしても矛盾が出てくるので、この推測、あんまり自信は無いです。

で、最終的に生き残った橋本環奈が真実を知り、催眠が解けたと同時に泣き叫ぶ。デスゲームとか関係なく、これまで耐えてきた橋本環奈がラストに感情を爆発させるのを見せたかっただけかもしれない。でも、涙を流していないだけで、橋本環奈はいつもの酒ヤケみたいな声で何度も悲しみを叫びまくっていたので、「またか」としか思えなかったが。

で、最後の最後、さらに意味の解らないシーンが付け足される。これは、人に催眠をかけて自殺に追いやるのを快楽とする担任・下部の遺志を樫村が受け継いだって解釈でいいのか。そんなわけ無いのだが、そうとしか思えないので困る。

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