最近観読んだ小説3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。
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伴名練『なめらかな世界と、その敵』
出版:早川書房/発売日:2019/8/20
68点
国産SF作品では2019年最大の話題作らしい(海外作品では『三体』)。SF界隈に疎いので「ふーん、そうなんだ」と軽い気持ちで読み始めたら、まあ予想していなかったわけではないけれど、ゴリゴリのハードな設定が並ぶ中編集であった。でもSF小説を読み慣れない自分でも頑張れば意味は解った(ひとつひとつは長くないし)ので、挑戦のしがいはある。最初の2つが特に強烈で新参者を拒みそうだが、その後は充分に異色の世界観を楽しめるのではないか。おすすめは、時間が停止した(正確には、極端に時間の進みが遅くなった)新幹線をモチーフにしながら純朴で感動溢れる青春小説に仕立て上げた「ひかりより速く、ゆるやかに」。
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浅倉秋成『九度目の十八歳を迎えた君と』
出版:東京創元社(ミステリフロンティア)/発売日:2019/6/21
60点
20代後半の営業職の男が、なぜか高校3年生を何度も繰り返している初恋の相手と出会うところから始まる、非現実な要素を含んだミステリ小説。その設定から当然のごとく、主人公が封じ込んでいた高校時代の記憶への、対峙と精算が行われる。トリッキーな設定を取り入れつつ、正統派のモラトリアム脱出モノとなっていて、抒情的な刺激を与えてくる。
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斜線堂有紀『死体埋め部の悔恨と青春』
出版:新紀元社(ポルタ文庫)/発売日:2019/8/23
58点
元は、いわゆる「なろう小説」。依頼を受けて死体を山に埋めに行く「死体埋め部」に無理やり入部させられた男子大学生が、その車中で大学の先輩である部長とやり取りしながら、運んでいる死体がなぜ殺されたのか推理する連作集。ミステリというジャンルが内包する不謹慎さに対して正面から向かい合っているため、読後のもやもやした不快感も受け止めるべき必要なものとして、こちらに問いかけてくる。
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