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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『東京アディオス』『楽園』『ブルーアワーにぶっ飛ばす』

最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『東京アディオス』
監督&脚本:大塚恭司/脚本:大塚恭司、内田裕士
配給:プレシディオ/上映時間:108分/公開:2019年10月11日
出演:横須賀歌麻呂、柳ゆり菜、占部房子、藤田記子、チャンス大城、柴田容疑者、河屋秀俊、新名基浩、片山友希、コムアイ、玉山鉄二、村上淳


76点
シモネタしかしない実在の地下芸人・横須賀歌麻呂を主人公にして、現実と妄想の間を全速力で行き来する怪作。現実にあるが既存の社会システムが通用しない地下芸人の世界を舞台とすることで、劇中のイカれた空間をこちら側と地続きであるかのように繋げてくる。さらには主人公の妄想も入り乱れ、その混濁した狂気が、容赦なくスクリーンの外側にまで侵食し、現実を上書きしてくる。冒頭で看板持ちのバイト中に若者に絡まれるなど、何かと『ジョーカー』との類似が多いが、本作の主人公は劣等感の発露をあくまで自分自身に向けているがため、『ジョーカー』における絶望とは違って芸人らしいハッピーな死を迎えており、哀愁すらも爽快である。
なお、作品自体とは別の件だが、本作の公開日と前後して出演者のひとりであるチャンス大城が地上波の番組に出演し、劇中で披露したのと同じネタで爆笑をかっさらっていったのには、ただただ感動した。

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『楽園』
監督&脚本:瀬々敬久/原作:吉田修一
配給:KADOKAWA/上映時間:129分/公開:2019年10月18日
出演:綾野剛、杉咲花、佐藤浩市、村上虹郎、片岡礼子、黒沢あすか、石橋静河、根岸季衣、柄本明


56点
地方の集落で起こった犯人不明の小学生殺人事件の関係者を追っていくという定番の舞台設定を用意して、あとは役者の存在感に全てを委ねている。脇役に至るまで演技的に隙のない力量を持つ役者陣を揃えているので、たしかに排他的な村社会における閉塞した空気感は存分に伝わってくるし、一定の満足感はある。だがしかし、なんら新鮮味の無い話を用意するだけで、あとは役者任せとは、はっきり言って手抜きではないのか。ここ数年の邦画界で、雨後の筍のごとく登場した「閉塞した地方」モノの中でも、他と比べて抜きんでている箇所は見当たらない。それ以前に、原作である2つの短編を1つの話にまとめようとすらしていないのは、いかがなものか。

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『ブルーアワーにぶっ飛ばす』
監督&脚本:箱田優子
配給:ビターズ・エンド/上映時間:92分/公開:2019年10月11日
出演:夏帆、シム・ウンギョン、渡辺大知、黒田大輔、上杉美風、小野敦子、嶋田久作、伊藤沙莉、高山のえみ、ユースケ・サンタマリア、でんでん、南果歩


62点
「過去との対峙」という作品テーマとか、そのために実家に戻って家族と向き合うという手段とか、古典的なことをしているのに不思議と最先端の作品のような印象を受けるのは、監督がCM畑の人だからだろうか。その意味では新たな才能を備えているといえるし、今後の活躍への期待も持てる。だが本作に関しては、どうしても拙さというか、映画的な手法を知らないがゆえの引っかかりが多数あって、非常に惜しい。たとえば交通量の多い道に合流しようとする車を後ろから撮るシーンの合間に、おそらく時間的にはその後であろう高速道路を走る車のシーンがカチャカチャと挟まるのだが、これが意味ありげなようで何を表したいのか解らない。ラストのオチはこの物語の結論としては巧いが、そこに至るまでに主観と客観を意識して撮影していないので、矛盾だらけとなってしまっている。

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