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【邦画】『ダウト~嘘つきオトコは誰?~』感想レビュー--ゲームのダイジェストのような前半はともかく、後半は悪くなかったかも

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監督:永江二朗/脚本:鹿目けい子/原作:ボルテージ
配給:キャンター、スターキャット/上映時間:97分/公開:2019年10月4日
出演:堀田茜、稲葉友、西銘駿、岩永徹也、佐伯大地、三津谷亮、藤田富、水石亜飛夢、牧田哲也、 永山たかし、久保田悠来、鶴見辰吾

 

注意:文中で結末に触れています。一応はミステリー仕立てなので、ネタバレについては自己責任でお願いします。

 

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54点
原作は、ゲームアプリ。ゲームを原作とした映画は数あれど、アプリ専用ゲームの実写映画化って史上初じゃないかな。他にもあったらごめんなさい。婚活パーティーに出席した主人公が、様々なヒントを見つけては言い寄ってくる男たちの嘘を暴いていき、最終的にひとり残る「運命の人」を探す内容だそうだ。ゲームのことは全く知らないが、映画を観ていると、あらかじめ予定されていたミッションをひとつづつクリアしていくという、いかにもゲーム的な話であった。

まずは冒頭。婚活パーティーに出席した主人公・桜井香菜(堀田茜)の元に言い寄ってくる男10人のプロフィール(職業、年齢、年収、身長)がテロップによってハイスピードで表示される。あまりに速くて覚えられないが、特に問題は無い。そして時間軸は1週間前に戻る。結婚を考えていた交際相手から、実は自分が浮気相手だと知らされたうえでフラれてしまう香菜。一方、田舎の母親からはお見合い写真を送られ「結婚相手を紹介する」と言ってしまう。どうしようかと町を歩いていると、怪しげな占いの店を見つけ、つい入ってしまう。

オネエ口調のおじさん占い師(鶴見辰吾)は、婚活パーティーのチラシを見せて「これに出席すれば運命の人に出会える」と香菜に言ってくる。しかし言い寄ってくる10人の男のうち9人は嘘をついており、残りの一人が「運命の人」なんだと。これ、ゲームのルール説明だから許されるけれど、映画になると胡散臭さしかない。実は1泊2日の婚活パーティーを主宰している当人がこの占い師なので、コイツが詐欺師かなんかで全てを仕組んでいるんじゃないかと真っ先に疑うべきだろう、これは映画なんだから。

※ なお、最近の鶴見辰吾、「なんで、こんなものにまで?」という作品にもよく出ているのだが、仕事を選ばないポリシーとかあるのだろうか。

さて、再び時間軸は戻って婚活パーティー当日へ。占い師に促されて人気サッカー選手の宿泊する部屋へ訪れる香菜。どうでもいいけど、参加者にホテルの部屋をひとつづつあてがわれている婚活パーティーって怖くないか。参加者の身辺調査をしていないとか言っているし、嫌なトラブルがいっぱい起きそうだ。サッカー選手の部屋のバスルームが直前まで使用されていた形跡があり、短髪の男なら使うはずの無いシャンプーハットの袋が開けられていた。そこから推理した香菜は、サッカー選手に向かって指を差して「ダウト!」と叫び、女を連れ込んでいると声高に指摘する。ポーズは完全に金田一少年だった。クローゼットに隠れていたのはサッカー選手の母親で極度のマザコンだったことが判明したが、ともかく香菜には「ダウト」判定される。

「ダウト」判定の男が出ると、10人並んだ男の写真のうち当該人物に「ダウト」印がついていく仕様。ここも、死んだ人にバツ印がつく金田一少年のアレによく似ている。香菜はロビーに戻ると、「バツ2なのに結婚歴なしと紹介カードにわざわざ書いている」とか「アイドルオタクなのにアイドルには興味ないと言った」とか、ひとりづつ順番に嘘を指摘しては指を差して「ダウト!」と叫ぶ。これ、パーティー参加者が集う場所でやっているからね。客観的に見て「イタい女」だと思うが。このルーチンによって、10人のうち5人を矢継ぎ早に「ダウト」判定していく。ダイジェストかっていうレベルの速さで、さっさと登場人物を半分に減らしてしまった。

これ、香菜にとっては「嘘をついていないこと」が結婚相手に求める至上命題なんである。占い師の決めたルールがそうだからなんだけど、アイドルオタクであることは構わないがアイドルオタクなのに「アイドルに興味ない」って口走ることは許せないというわけ。現実社会の観点からすれば、嘘を一切つかない人なんて特別天然記念物なみに貴重な存在だからなあ。どうしても哀れさを感じてしまう。

ここまでは、一方通行のゲームを追っているだけみたいでなんだかなあと思っていたが、婚活パーティーが終わった後の話になると、まあそれなりに普通の話にはなってくれた。それまでほとんど無かった男同士の絡みも出てきたので相関関係に深みが出てきた、ていうか、それが当たり前なんだけど。残り5人のうち数名とデートや食事をするも決定打が見出せない香菜だが、ある朝、自宅マンション前で誘拐されてしまう。

誘拐犯はすでに「ダウト」判定していたアイドルオタクだった。押しのアイドルと香菜が似ていたので自作の衣装を着せて両手両足を縛って倉庫に監禁したのだ。香菜は自身のバッグからスマホを取り出すが、猿ぐつわをされているので会話ができない。まず猿ぐつわの方法が甘くてそれなら普通に喋れるだろとか、喋れないなりに音とかでコミュニケーションは取れるだろとか色々とツッコミたいところ。香菜は縛られた手でスマホを操作し、自身のSNSに位置情報とSOSのコメントを載せる。皆さんお気づきのとおり、この犯人、相当にマヌケです。監禁場所に被害者のスマホを放置しているって。

※ ちなみに、前歯をむき出しにしてケケケケを笑うアイドルオタクの描写には、何かしらの偏見を感じる。あくまでこの犯人が異常なだけだという最低限の配慮はしているけれど。

助けが来た後も色々とあって、どんな事情があろうとも嘘をついていた人は全て「ダウト」判定していき、残った一人が唯一「監禁場所に現れなかった人」なのだがそれでも「運命の人」と決定したところ、実はそれが結婚詐欺師でクレジットカードを奪われて限度額いっぱいまで引き出されていた。なんでそんなすぐに足のつく犯罪をしているのか。結婚詐欺師じゃないだろ、それ。で、またもや占い師が現れて「人は、相手に気に入れられたくて嘘をつくこともある。それも否定するの?」とか諭してくる。いや、その通りだしこっちはずっと思っていたけど、オマエが言うなよ。オマエの決めたルールだから従っていたんだろうが。

とにかく香菜は「運命の人」にも「ダウト」判定してしまったことに気づき、母親に嘘をついていたことを詫び、お見合いを受け入れる。そしてら、そのお見合い相手が「運命の人」だったという強引なオチだった。まあ、お見合い写真を見なかった時点で、このオチは気づいていたけれど。

まあでも、ラストで香菜が「事情があって嘘をつくこともある」と悟ったうえで自身の愚かな行為に後悔して、さらには自分のついた嘘にも向き合うあたりは、それなりの成長と捉えられるので、そんなに酷い話でもなかったけど。いや、本当に後半の展開はそこまで悪くなかったですよ。まあ、役者のネームバリューから「運命の人」が誰なのか即座に判断できちゃうのは、ちょっとどうにかしてほしかったが。

 

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