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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『惡の華』『宮本から君へ』『任侠学園』

最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『惡の華』
監督:井口昇/脚本:岡田磨里/原作:押見修造
配給:ファントム・フィルム/上映時間:127分/公開:2019年9月27日
出演:伊藤健太郎、玉城ティナ、秋田汐梨、飯豊まりえ、北川美穂、佐久本宝、田中偉登、松本若菜、黒沢あすか、高橋和也、佐々木すみ江、坂井真紀、鶴見辰吾


60点
原作・押見修造よりも、主演・玉城ティナよりも、まずは監督・井口昇の作品であることが先立っていた。大っぴらなフェティシズムへの執着と、「ニャハハハ」といった笑い方に代表される不自然なほどアイドル的なキャラ造形は、井口昇だからこそ許されるのだが、免疫の無い者が観れば斬新と感じるか拒絶するか、どちらかであろう。ブルマ姿の女子中学生はねっとりとスローモーションで追いかけ、太ももの僅かな揺れを捉えるのに命を懸けていて、その変態性が記録されただけでも本作の価値はある。物語に関しては、何度もあるヤマ場のシーンが、状況自体は激しいにも関わらず、弾けそうで弾けてくれないのがもどかしい。その理由のひとつは、原作とは違い時制を行ったり来たりさせたことで「ある程度の結末が解っている」状態で観させられているからであろう。ただその溜まる一方のフラストレーションこそが、主人公の抱える鬱屈と繋がっているのかもしれないが。正直なところ、仲村さん役に玉城ティナは荷が重いのではと感じていたが、ラスト近くに見せる白目は素晴らしかった。

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『宮本から君へ』
監督:真利子哲也/脚本:真利子哲也、港岳彦/原作:新井英樹
配給:スターサンズ=KADOKAWA/上映時間:127分/公開:2019年9月27日
出演:池松壮亮、蒼井優、井浦新、一ノ瀬ワタル、柄本時生、星田英利、古舘寛治、ピエール瀧、佐藤二朗、松山ケンイチ、新井英樹、工藤時子、螢雪次朗、梅沢昌代、小野花梨

 
72点
真利子哲也監督の揺ぎ無い「暴力」と「絶叫」への信頼が、こんな重い話にも関わらず心地の良い疾走感を与えてくれる。時制の横断によって最悪の結末にならないことは最初から決定しており、その期待に違わぬスカッとした絶頂が用意されている。方法論としては『惡の華』と同じはずなのに、こちらは完璧に巧くいっているから不思議だが、主に役者の身体性をフル活用することで、時代錯誤なほどの泥臭い真っすぐさを光り輝かせて見せてくれるからか。なお、こんな映画でも佐藤二朗はいつもの佐藤二朗と同じく佐藤二朗のままだったが、佐藤二朗のままの佐藤二朗なのに佐藤二朗の最高傑作となっていたことには感動すら覚える。これまで誰もが正しい使用法を見出せなかった佐藤二朗のトリセツが、ついに誕生した。

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『任侠学園』
監督:木村ひさし/脚本: 酒井雅秋/原作:今野敏
配給:エイベックス・ピクチャーズ/上映時間:119分/公開:2019年9月27日
出演:西島秀俊、西田敏行、伊藤淳史、葵わかな、葉山奨之、池田鉄洋、佐野和真、前田航基、戸田昌宏、猪野学、加治将樹、川島潤哉、福山翔大、高木ブー、佐藤蛾次郎、桜井日奈子、白竜、光石研、中尾彬、生瀬勝久


61点
世の中の風潮とともに、フィクションの中でもヤクザの存在は大っぴらに認めにくくなっている。そのため東映は『孤狼の血』の中でヤクザや悪徳警官が徹底的に醜態を晒すことでヤクザ映画の延命を図っているが、映画事業としては新進のエイベックスは、あくまでヤクザをファンタジーな存在にすることで、社会との共存に理由付けをしている。話はシンプルで解りやすい勧善懲悪にして、義理人情を重んじる善きヤクザが筋を通すことで物事が好転する様をコメディタッチで描き、純粋に楽しい仕上がりになっている。一方で、悪役が生徒に怪我を負わすことで、反抗していた他の生徒や日和見だった校長までも考えを改めるあたりに、こちらも筋の通ったエンタメ性を持たせている。ヤクザの演技が堂に入ったベテラン役者が脇を固めているので、多少の無理筋は押し通せるほどの安定感がある。単発のギャグも基本は楽しいものだが、何回も同じことを繰り返されると、ちとクドい。

 

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