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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『人間失格 太宰治と3人の女たち』『HELLO WORLD』『見えない目撃者』

最近観た邦画3作のレビューです。直接的に文中で結末には触れていませんが、ネタバレにはご注意ください。

 

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『人間失格 太宰治と3人の女たち』
監督:蜷川実花/脚本:早船歌江子
配給:松竹=アスミック・エース/上映時間:120分/公開:2019年9月13日
出演:小栗旬、宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ、成田凌、千葉雄大、瀬戸康史、高良健吾、藤原竜也、稲垣来泉、山谷花純、片山友希、宮下かな子、山本浩司、壇蜜、木下隆行、近藤芳正

55点
特に目新しくもない、ありきたりな太宰治の一般的なイメージをそのまま拝借して、蜷川実花監督の自意識を発露する道具として利用している。それはいつものことだが、岡崎京子や平山夢明の"作品"が踏み台にされるよりは、まだ太宰治という人間自体はパブリックドメインみたいなものなので、害が少ないか。実のところ、映像暴力的な刺激は監督の過去作に比べれば控えめで苦痛が無い分、ハリボテのような空間の中身の無さが目についてしまう。それについては太宰治を人間のクズとして描けば当然の帰結なのだが、もしもそこをオリジナリティと捉えているのなら不勉強でしかない。

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『HELLO WORLD』
監督:伊藤智彦/脚本:野崎まど
配給:東宝/アニメーション制作:グラフィニカ/上映時間:98分/公開:2019年9月20日
出演:北村匠海、松坂桃李、浜辺美波、釘宮理恵、子安武人、寿美菜子、福原遥

59点
あからさまな先行作品の影響がそのまま表れていて、強烈なデジャヴに襲われる。愛するひとりのために世界を壊し、愛するひとりのために世界を守る。この価値観は定型であるが、『君の名は。』のおかげでセカイ系が一般的にも浸透したのだと好意的に捉えればいいか。乗り越えるべき父親を「未来の自分」としたことによる独特の葛藤と、リアルな町の中に別種のテクスチャが共存するアニメーションとしての高揚感は、確かに存在した。京都市を表すモチーフとして、神社仏閣と京都駅やヨドバシカメラといった現代建築が同一視されていたのは、都市論としては興味深い。どうでもいいことだが、主人公が出町柳のことを「こんな何もない場所」と言っていて、京都人にとってはそういう認識なのかと驚いた。

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『見えない目撃者』
監督:森淳一/脚本:藤井清美、森淳一
配給:東映/上映時間:128分/公開:2019年9月20日
出演:吉岡里帆、高杉真宙、大倉孝二、浅香航大、酒向芳、松大航也、國村隼、渡辺大知、柳俊太郎、松田美由紀、田口トモロヲ

65点
2011年に公開された韓国映画のリメイク。数珠繋ぎのように関係者に当たっていくうちに凄惨な事件の犯人が次第に浮き上がり、最後は主人公との直接対決となる、正統派の流れを汲んだクライムサスペンス。そこに主人公が盲目であるというポイントを足すことで、活劇にオリジナリティが加えられている。若い女性が主人公ながら恋愛要素が一切無いこともあって、重厚さが常に保たれている。「静寂」を用いた演出が素晴らしいので、設備の整った映画館で観るのが吉。ただ、あの人を真犯人にすると「何でもアリ」になってしまうのが気になるところだが。

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