ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【邦画監督】河合勇人監督作品レビュー--漫画実写化に依存した今の日本映画界にとって貴重な手腕を持つ存在

f:id:yagan:20190829222901p:plain
河合 勇人
(かわい・はやと)
1969年2月15日 愛知県出身

 

虚構性の強いコミカルな作品、特に漫画実写化作品を手掛けることが多いが、持ち前のダイナミズムを駆使して良い意味でのマンガ的な空間を構築している。演出畑の人であり自ら脚本を書くことがないため、作品の出来は脚本家によって左右しているが、リアルから絶妙に距離を取る空間演出力については、どの作品も共通してハイレベルである。漫画実写化に依存した現状の邦画界にとっては、重宝されるべき手腕を持った存在であろう。

 

スポンサードリンク
 

 


『映画 鈴木先生』
監督:河合勇人/脚本:古沢良太/原作:武富健治
配給:角川映画=テレビ東京/上映時間:124分/公開:2013年1月12日
出演:長谷川博己、臼田あさ美、土屋太鳳、北村匠海、未来穂香、窪田正孝、浜野謙太、風間俊介、田畑智子、斉木しげる、でんでん、富田靖子

72点
学校教室における「普通の子」にスポットを当てたTVドラマ版は最高の出来であった。クラス内にエキストラ要員は存在せず、最終回では特定の誰かではない「普通の子」たちの訴えによって涙を誘ったところで、最後の最後で第1話冒頭の伏線を回収し、視聴者が実は加害者の側でもあったことを浮き彫りにする。この辛辣な構成は心を抉ってきた。
連続ドラマに比べて時間制約のある映画版では、ゲストキャラに「かつて目立たない生徒だった人物」を出すという正攻法でテーマを踏襲しつつ、映画だから許されるありえなさギリギリのアクションで締めくくる展開が巧であった。土屋太鳳が世間的に認識された最初の作品であり、クラスメイトには北村匠海や松岡茉優といった次世代のスターが参加している。

映画 鈴木先生 豪華版 [DVD]

映画 鈴木先生 豪華版 [DVD]

 

 

-----
『俺物語!!』
監督:河合勇人/脚本:野木亜紀子/原作:河原和音、アルコ
配給:東宝/上映時間:105分/公開:2015年10月31日
出演:鈴木亮平、永野芽郁、坂口健太郎、森高愛、高橋春織、恒松祐里、鈴木砂羽、寺脇康文

67点
ただただ実写化してしまえば主人公・剛田猛男の生々しさが際立ってしまうところ、鈴木亮平によるやり過ぎなほどのデフォルメ造形によって記号的なキャラクターに徹したことが功を奏していて、純粋に楽しい作品に仕上がっていた。郷田とヒロイン・大和凛子(永野芽郁)とは相思相愛で、しかし互いの気持ちには気づかないという初期設定によって巻き起こるコメディはベタで楽しいが、登場人物たちの関係性があまり変化せずに差異の無い繰り返し展開が連続するのは多少間延びしている気もする。郷田と幼馴染の親友・砂川誠(坂口健太郎)のホモソーシャルな関係性が自然に取り入れられているのは、少女漫画原作のなせる技か。河合監督作品の演出上の特徴として、画面上の彩度の濃さがあり、マンガ的な虚構空間を違和感なく演出している。

俺物語!!(豪華版) [Blu-ray]

俺物語!!(豪華版) [Blu-ray]

 

 

-----
『チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』
監督:河合勇人/脚本:林民夫
配給:東宝/上映時間:105分/公開:2017年3月11日
出演:広瀬すず、中条あやみ、山崎紘菜、富田望生、福原遥、真剣佑、柳ゆり菜、健太郎、南乃彩希、天海祐希

53点
舞台の構築や各キャラクターの関係性が強引なほどスピーディーに説明される冒頭の無理矢理加減は嫌いではない。特に前半は河合監督らしい持ち前のドライさが物語を引っ張っていて爽快感が小気味よく作用している。だが実話ベースだからか系統だった物語性に乏しく、たとえば最終的に主人公・友永ひかり(広瀬すず)がセンターに選ばれる合理的な理由が一切なく戸惑う。途中で喧嘩別れして抜けた元部員への落とし前がついていないのも構成的に違和感がある。後半、ウェットな展開になり、感動を誘うための回想シーンが繰り返し挟まってくると、作品全体のバランスが崩れグダグダになってしまい残念。

 

-----

『兄に愛され過ぎて困ってます』
監督:河合勇人/脚本:松田裕子/原作:夜神里奈
配給:松竹/上映時間:99分/公開:2017年6月30日
出演:土屋太鳳、片寄涼太、草川拓弥、杉野遥亮、大野いと、近江谷太朗、神尾楓珠、YOU、千葉雄大

 56点
血の繋がっていない兄との恋愛など、少女漫画をベースに青春キラキラ映画のフォーマットを愚直に、ただしツッコミも含めて取り入れることで、伝統芸能のような様式美を創出している。ただそれは最初の30分までであり、ありがちな展開をひとしきりこなした後はダラダラとした恋愛ごっこ描写が続くのみで、急にダレてしまって勿体ない。前半の疾走感が最後まで保てず後半で失速してしまうのは、河合監督作品に共通する課題事項かもしれない。オープニングと対になるようにラスト近くで土屋太鳳に自転車を激走させていたのは彼女の持ち味を出していて良かったが。空間演出に関しては、今回は赤が強め。

映画「兄に愛されすぎて困ってます」(初回限定豪華版) [DVD]
 

 

-----
『ニセコイ』
監督:河合勇人/脚本:小山正太、杉原憲明/原作:古味直志
配給:東宝/上映時間:117分/公開:2018年12月21日
出演:中島健人、中条あやみ、池間夏海、島崎遥香、岸優太、青野楓、河村花、GENKING、松本まりか、丸山智己、加藤諒、団時朗、宅麻伸、DAIGO

70点
※ 映画上映時に書いたレビュー

yagan.hatenablog.com

 

ニセコイ 豪華版 [Blu-ray]

ニセコイ 豪華版 [Blu-ray]

 

 

 -----

『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』
監督:河合勇人/脚本:徳永友一/原作:赤坂アカ
配給:東宝/上映時間:113分/公開:2019年9月6日
出演:平野紫耀、橋本環奈、佐野勇斗、池間夏海、浅川梨奈、ゆうたろう、堀田真由、高嶋政宏、佐藤二朗

 45点
大掛かりなセットによる虚構空間は構築されていたが、悪目立ちするテロップやCG処理の多用によって安っぽい作り物感を強調してしまい、河合監督の武器が台無しに。原作のネタを説明なしにカット単位で連発するので呆気にとられるが、前フリという概念は無いのだろうか。藤原千佳(浅川奈菜)や石上優(佐野優斗)といったサブキャラクターをきちんと説明したうえで、(『ニセコイ』のDAIGOのように)アクセントとしてのギャグ要員にすれば間延びせずに済んだはずだったのだが(これが機能していたのが高嶋政宏なのだが、本編とは分離していたので意味が無かった)。ギャグ漫画が次第にシリアスになるのは長い連載の中でキャラクターに厚みが出てくるからであって、2時間しかない映画の中でその流れを無理に踏襲すると話がガタガタになってしまうのは、過去の例から解るはずなのに。

 

-----

『初恋ロスタイム』
監督:河合勇人/脚本:桑村さや香/原作:仁科裕貴
配給:KADOKAWA/上映時間:104分/公開:2019年9月20日
出演:板垣瑞生、吉柳咲良、石橋杏奈、甲本雅裕、竹内涼真

 57点
※ 映画上映時に書いたレビュー

yagan.hatenablog.com

 

 

スポンサードリンク