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【邦画】最近観た邦画感想レビュー(ネタバレ含)--『暁闇』『よこがお』『パラダイス・ネクスト』

最近観た邦画3作の短評レビューです。例によって、軽くネタバレありです。

 

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『暁闇』

監督&脚本:阿部はりか
配給:SPOTTED PRODUCTIONS/上映時間:57分/公開:2019年7月20日
出演:中尾有伽、青木柚、越後はる香、若杉凩、加藤才紀子、小泉紗希、新井秀幸、折笠慎也、卯ノ原圭吾、石本径代、芦原健介、水橋研二

57点
それぞれ内的な悩みを抱えている3人の中学生が、渋谷にある軍艦を模したビルの屋上を現実からの逃げ場として、一時のモラトリアムを得る。構造自体は何十回と観たことのある定型パターンのため、細部によって他の作品との差異を指摘するしか評価する方法は無い。本作の場合は、奇抜な意匠で形作られる屋上の景観によってのみ、映画的な魅力を担保している。だが、あまりの飛び道具を選んでしまったがゆえ、どんな角度でどう撮ろうが、映画を形作る一部の要素としてこの奇抜な屋上を落とし込むことは不可能であった。また、この手の映画の常として無名の若い役者のセンスを褒めたくなるところだが、場数を踏んだ水橋研二に全てもっていかれては成す術がない。

 


『よこがお』

監督&脚本:深田晃司/原案:Kaz
配給:KADOKAWA/上映時間:111分/公開:2019年7月26日
出演:筒井真理子、市川実日子、池松壮亮、須藤蓮、小川未祐、吹越満、大方斐紗子、川隅奈保子

69点
起きている事柄だけを見れば、冤罪によって社会から居場所を奪われ破滅していく女の話である。だが、事態の壮絶さの割には悲壮感どころか一切の感情が揺さぶられないのが、逆に薄ら怖さを感じる。初見では解りづらい時系列の操作により、筒井真理子演じる主人公の墜ちていく様と、ある意味でたくましく生きている様が同列に並べられているからであろう。このギミックによって物語はフラットに均され、主人公は純然たる被害者ではなくなり、よって感情の揺さぶりは拒否される。この、正反対の大きな波が重なることで起こる静寂にこそ、社会が元来持つ気持ちの悪さが表出している。『シン・ゴジラ』以降、どの出演作でも尾頭さんにしか見えなかった市川実和子が、歪んだ愛情で迫ってくる静かな狂気によって新たな側面を見せている。

 


『パラダイス・ネクスト』

監督&脚本:半野喜弘
配給:ハーク/上映時間:100分/公開:2019年7月27日
出演:妻夫木聡、豊川悦司、ニッキ―・シエ、カイザー・チュアン、マイケル・ホァン、大鷹明良

63点
妻夫木聡と豊川悦司のW主演による、オール台湾ロケの映画。行き場の無いヤクザ2人が、たまたま出会った女の元に半ば成り行きで転がり込み、いずれ破滅が来ることが解っていながら束の間の休息を得る。この一連の流れも、主演2人のアウトローなバディ感も、とにかくどこを取っても正攻法の造りで、それゆえエンタメとしての土台がしっかりしている。そこに、臭いまで再現されていそうないかにも台湾らしい雑多さが纏うことで、これまた正攻法のノワールらしい雰囲気を加えている。ラストシーンでは役者の存在感に一任するのも、やっぱり正攻法。

 

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