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【邦画】最近観た邦画感想レビュー--『Diner ダイナー』『いちごの唄』『デリバリー』

最近観た邦画3作の短評レビューです。例によって、軽くネタバレありです。

 

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『Diner ダイナー』
監督:蜷川実花/脚本:後藤ひろひと、杉山嘉一、蜷川実花/原作:平山夢明
配給:ワーナー・ブラザース/上映時間:117分/公開:2019年7月5日
出演:藤原竜也、玉城ティナ、窪田正孝、本郷奏多、武田真治、斎藤工、佐藤江梨子、金子ノブアキ、小栗旬、土屋アンナ、真矢ミキ、奥田瑛二

51点
本作は原作未読だが、『ヘルタースケルター』の時に岡崎京子を自意識の発露のための踏み台にした蜷川実花監督の悪行は一生忘れない。作り物めいた極彩色の装飾の中で過剰な演技が無秩序に羅列されているため、無理に物語を成り立たせようとするための強引な展開が悪目立ちしている。殺し屋たちによるバトルアクションというエンタテイメント性を重視して、この監督のいつもの観念的な作家性を控えめにしたのが裏目に出たのか、表面的なこけおどしに終始していることが露になってしまっている。まさか令和になって『マトリックス』のパロディを見せられるとは思わなかった。


『いちごの唄』
監督:菅原伸太郎/脚本:岡田惠和/原作:岡田惠和、峯田和伸
配給:ファントム・フィルム/上映時間:114分/公開:2019年7月5日
出演:古舘佑太郎、石橋静河、和久井映見、光石研、清原果耶、小林喜日、大西利空、泉澤祐希、恒松祐里、しゅはまはるみ、渡辺道子、ポール・マグサリン、山崎光、蒔田彩珠、吉村界人、岸井ゆきの、峯田和伸、宮本信子

57点
冷凍食品の工場で働く冴えない男が中学時代のマドンナと七夕の日に偶然再会して、それから織姫と彦星よろしく一年に一度だけ同じ場所で合おうと約束する。なのだが、どちらかというと人生に疲れ切った元マドンナ・石橋静河の視点からのほうが哀愁を掻き立てられる。うまくいかない毎日の中で突如として目の前に現れる「学生時代と変わらない存在」が、当時と同じく自分に好意を持ちつつ、こちらの詮索はせずに楽しそうに自分の話だけをする。そんな都合のいい存在との一年に一度の再会を生きるための糧とするところに、普遍的な共感を得られる。もちろん作り手の意図とは異なる見方のため、後半の展開によって齟齬を引き起こすのだが。石橋静河にとって主人公の男がどういう存在であったか示されないのは残酷であろう。環七通り沿いの風景の取り入れ方は効果的。


『デリバリー』
監督&脚本:室賀厚
配給:ホーネット/上映時間:94分/公開:2019年6月30日
出演:鈴木つく詩、長濱慎、藤田富、中原翔子、梨本謙次郎、工藤俊作、永倉大輔、小沢仁志、寺中寿之、神林斗聖、行永浩信、長谷川るみ、北島美香、田中千空、町田政則、木庭博光、森本浩、佐藤邦洋、山野はるみ、速水今日子、友和

53点
「愛する2人のためのピザ」など、どんな抽象的な注文でも受けるデリバリーピザ店を舞台にして、変わった注文をする客と巻き込まれる配達員の攻防を章立てで描く。意外と発想は面白いし、銃撃戦などの見せ場は少ない予算の中で出来る限りのことをしていて好印象。だが、この内容にしては徹底的にテンポが悪く、そのため細部の粗が目立ってしまっている。個々の物語があくまで単発のものであり、主人公の女の子が因縁の相手である小沢仁志と対峙するクライマックス(このシーン自体は悪くない)との直接の繋がりが無いため、カタルシスは極めて小さくなってしまったのが残念。肝心のピザがごくありふれたものにしか見えないのも物足りない。

 

 

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