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【邦画】『黒い乙女Q』ネタバレ感想レビュー--誰も知らない超売れっ子・浅川梨奈の最新作は、最後にぶちまけるだけぶちまけて「次に続く」で終わってしまった

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監督&脚本:佐藤佐吉
配給:AMGエンタテインメント/上映時間:?分/公開:2019年5月31日
出演:浅川梨奈、和田聰宏、三津谷葉子、松嶋亮太、しゅはまはるみ、安藤なつ、笹野鈴々音、北香那

 

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53点
今、日本の映画界で引っ張りだこになっている女優は誰なのか知っているだろうか。現在公表されているだけで今年は9本の映画に出演、しかもそのうち5本は主演という超売れっ子、それが浅川梨奈である。もしも、この名前を見てもピンとこないのならば、それは現状の日本映画のことを何も知らないのと同じである。そんな偉大なる女優こそ、浅川梨奈その人だ。

とまあ、ふざけた感じで書き始めてみたが、売れっ子なのに誰も知らないパラドキシカルな存在こと浅川梨奈の最新主演作が『黒い乙女Q』である。都内唯一の上映館・シネマート新宿のスクリーン2(小さいほう)の座席は意外にも7~8割は埋まっていた。ずっと母親に話の意味を尋ねていた女子小学生と、ずっといびきをかいて寝ていたおじさんに挟まれて観た映画『黒い乙女Q』は、なかなか難解であった。

舞台はキリスト教系の養護施設から始まる。校庭のブランコに座りボレロを鼻歌で鳴らす孤児の少女・芽衣(浅川梨奈)。それを窓から見るシスター姿の女校長。校長は、一度も言葉を発しない少女のことを「あの子、壊れているよ」と鬼の形相で言い放つ。里親になって孤児の少女を引き取りたいと訪ねてきた夫婦との面会中も、なぜかこっそり少女の手をつねる校長(意図が不明)。しかし、あまりに演劇的で不自然に明るい喋りの夫婦は、芽衣を引き取ることにする。

実は、この冒頭シーンは、なかなか良かったのである。ざらついた画質や、妙に作り物めいたセリフ(下手ではなく、あえての不自然さが強調されている)からくる不安な感じとかから、往年の和製ホラーの導入を想起したりした。ちなみに、観ているときは気づかなかったが、ホラーのツカミとして申し分ない怪しさを創り込んでいた校長を演じていたのは、『カメラを止めるな!』の「ポン!」で有名になったしゅはまはるみでした。

一言も発さず不機嫌そうに俯いたまま車に乗せられ、畑の中にポツンと建つ家に連れてこられる芽衣。この家、低予算の日本映画でよく見る気がする。それはともかく、ここではっきりと浅川梨奈の顔が出ることで、違和感を覚える。ホラーの定石からしたら、こういう霊的な何かを感じさせる不気味な少女って、普通は小学生とかだから(現在公開中の『貞子』しかり)。浅川梨奈は実年齢20歳だけど、この役は無理があるのでは。後のシーンで制服を着て学校に行っているので高校生の設定だと思うが、それですら無理があるのに。

家には前日に引き取ったという松葉杖の少女・ラナ(北香那)もいて、里親夫婦と元孤児の少女2人の奇妙な4人暮らしが始まる。どうでもいいが、松葉杖を持つ手が逆なのは気になるところ(本来はケガをしていない側の手に持つ)。どちらの少女も無表情のままで、ぎこちない夕食をとることに。と、芽衣は後ろに何かの気配を感じる(というか、観客にははっきり子供の霊のような何かが見えている)。怯えた感じでゆっくり振り向くと、そこには何もいない。

この振り向く演技は、やり過ぎなほどホラーの王道を踏襲していた。なのだが、このあたりでおかしいと気づく。冒頭から続く演出によって、芽衣が霊的な何かと関りがある示唆されていたはずなのに、なんで幽霊に怯える側になっているんだ? このおかしさは話が進むにつれて大きくなる。このあと芽衣は、すぐにラナと趣味が合うことが解り意気投合して仲良くなり、里親とも笑顔を交えて喋るようになる。芽衣は、いつの間にか普通の女の子にシフトチェンジしているのだ。芽衣は、結局のところ最後まで理不尽な事態に巻き込まれるポジションなので、冒頭の不気味少女演出が無意味どころか鑑賞の邪魔でしかなくなる。

ラナから何年後かに隕石が落ちて地球が滅亡するけど政府もNASAも黙っているという話を聞かされたり、一家で公園にピクニックしに行ったり、鼻血を出している禿げたおじさんの霊(どうやら監督らしい)が見えたりと、楽しい毎日を送る芽衣。ところがある日、父親の事業が失敗したとかで、2人のうちどちらかを手放して養護施設に戻さないといけないと告げられる。

1週間後にどちらを残すか決めると宣言された次の日から、奇妙な出来事が起こる。妻の大切な花瓶(だっけ?)が割られたり、夫の車に傷がついたり、ラナの松葉杖が折られたり、芽衣が道路に突き飛ばされたりする。芽衣はラナが自分を陥れようとしているのかと疑うが、実は里親の策略だったとラナから教えられる。夜中に夫婦の寝室をこっそり覗くと、低周波治療器を大量につけて悶えている夫が、「結局、2人とも引き取れなくなった」と伝えた時の絶望の顔が楽しみだとか、妻に向かって話しているという体で、2人を陥れる計画を懇切丁寧に説明してくれる。

騙されていたと気づいたラナは、蛇の毒を入れた注射器を用意し、芽衣とともに夫婦を殺しにかかる。ハプニングがありつつも夫婦は注射器を刺されて血を吐いて倒れ、家の裏に埋められる。穴を掘った後にベッドに入るも、今度は鼻血のおじさんに加えて夫婦の霊にも怯える芽衣。翌朝になって、やっぱり警察に自首しようとするが、ラナにスマホを破壊される。そして、ラナは「あなたもダメだったか」と呟くと・・・。

そこから驚愕のオチが明かされるのだけれど、まあ伏線がいろいろあったので、大枠に関しては予想通りでした。死体を埋めるときの手順とか、いくつかの伏線の仕掛け方は悪くなかったかと。ただ、大枠はともかく、動機の説明が全然足りず、なぜこんな手間のかかることをやっているかの理由も教えてくれないため、ちょっと理解が追い付かなかったが。そして急に謎の生き物(なのかすら解らないが)が現れて、芽衣がそいつに噛まれて、エンドロール。続きは8月公開の『黒い乙女A』で。って、最後にいろいろぶちまけたまま話の途中で終わらせやがった。たぶん、続きが公開される8月頃には、話の内容をほとんど忘れている気がする。

 

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