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【邦画】『貞子』ネタバレ感想レビュー--池田エライザの最大の武器は眉毛である

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監督:中田秀夫/脚本:杉原憲明/原作:鈴木光司
配給:KADOKAWA/上映時間:99分/公開:2019年5月24日
出演:池田エライザ、塚本高史、清水尋也、姫嶋ひめか、桐山漣、ともさかりえ、佐藤仁美

 

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45点
部屋にガソリンを巻こうとする母親に向かって、やめてくれと鍵のかかったクローゼットの中から泣き叫んで扉を叩く少女。その扉を叩くダンダンという音が一定のビートを刻んでいる時点で、もう真剣に観る気は無くなる。呪いとは何たるか解っていない意味不明なストーリーは置いておくとしても、瞬間的な恐怖演出すらできておらず、かといって貞子というアイコンに頼ってギャグ調にすることもしていないのなら、この映画における価値は一つしかない。

もう言い尽くされているとは思うが、池田エライザの存在のみによって、この映画の存在意義は保たれている。世間的にはニットの限界に挑んでいるかのような豊満な胸ばかりが賞賛されているが、彼女本来の持ち味は、天性の辛気臭さにある。顔がアップになるだけで万人を納得させる辛気臭さは、ホラーの主人公にうってつけだ。本作と同じく幽霊ものである『ルームロンダリング』でも、この辛気臭さを存分に発揮していた。『ルームロンダリング』はコメディでもあるので、辛気臭さがちょっと邪魔でもあったが。

池田エライザの辛気臭さは、大きいが力強さを持たない眼、厚くて震えの目立つ唇など、生まれ持った顔のパーツによって生み出される。これらは技術や努力によってどうにかできるものではないので、彼女の女優にとっての大きなアドバンテージである。目を見開くことは誰でもできるが、そこに記号的ではない純然たる恐怖を上乗せできる人材は、そうはいない。

さらに池田エライザには、もうひとつ武器がある。辛気臭さと相反する、濃くて凛々しい眉毛だ。普段は前髪を下ろして眉毛を隠しているが、ひとたび額を露わにして眉毛を見せると、途端に辛気臭さは吹っ飛び、世界は一変する。本作では、いざ洞窟の中に突入しようという一回だけ、前髪が風でめくれて2本の眉毛を観客に見せている。その瞬間のみ、急に池田エライザが勇ましい女戦士のように変貌する。眉毛を出すタイミングが完璧であったという一点があるために、本作を駄作と一蹴することはできなくなった。

池田エライザにとって、空気を一変させる力を持つ眉毛は、大きな武器であろう。おそらくこれからも、様々な作品において、絶妙のタイミングで眉毛を見せてくるに違いない。彼女の今後が楽しみである。

ちなみに役者ではもうひとり、清水尋也のダメユーチューバーぶりは、一服の清涼剤として機能していた。若手俳優でイケメンの部類に入るにもかかわらず、いけ好かないヤバさを常に身にまとっているなんて、唯一無二の逸材である。過去に出演した話題作(『ちはやふる』『ソロモンの偽証』など)でも、彼が出てくるだけでスクリーン内の空気が冷たくなることが多々あった。できればバラエティ番組などで素の姿を見せることなく、現在の知名度を保ったままで若いうちに多くの映画にひんやりとしたヤバさを振りまいてほしいところである。

 

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