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【邦画】『コンフィデンスマンJP』ネタバレ感想レビュー--長澤まさみが「おばさん」呼ばわりされる重要な作品

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監督:田中亮/脚本:古沢良太
配給:東宝/上映時間:116分/公開:2019年5月17日
出演:長澤まさみ、東出昌大、小手伸也、小日向文世、竹内結子、三浦春馬、江口洋介、織田梨沙、瀧川英次、マイケル・キダ、前田敦子、佐津川愛美、岡田義徳、桜井ユキ、生瀬勝久、山口紗弥加、小池徹平、佐藤隆太、吉瀬美智子、石黒賢


57点
一応、次の段落からネタバレしていますという注意喚起はしておきます。予告の段階で想像つくので、別にネタバレしてもいい気もするけど。

 

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物語の全ては誰かしらの思惑通りに操られていたというオチである。今年の邦画だとラブホテルのやつと同じだが、想定外のトラブルは何も起こらず完璧にあらゆる事象をコントロールしているとなると、もはや神の所業である。そんな神の偉大さを堪能する映画もあっていいが、神の存在は観客にも隠されているため、そのような機会にも恵まれない。

観客視点の人物が観客を騙すのは、本来は禁じ手であり、アガサ・クリスティーなみの力量が脚本家になければならない。『ユージュアル・サスペクツ』は、ケビン・スペイシーではなく取り調べを行う捜査官が観客視点だから成り立つのだ。本作の場合、主人公たちによる騙し演技のほとんどは新メンバーのモナコ(織田梨沙)に向けられているので、彼女を観客視点にしなくてはいけなかった。彼女のほうも騙しているつもりなので、いろいろと問題はあるが。

さらに、騙しの手口があまりに非現実すぎるのでは、白けるばかりである。大富豪の屋敷から病院から貧困街の一角までセットで作り上げ、通行人を含めた大量の人物が全て仕込みのエキストラって、そんなことができるんだったら、もう何でもありじゃないか。これではカタルシスは得られない。

というわけで、具体的なアラを指摘するまでもなく、コンゲームものとしては酷い代物である。にも関わらず、実は割と楽しんで鑑賞してしまった。長澤まさみの鑑賞媒体としては非常に優れていたためである。長澤まさみのフィルモグラフィーにおいて重要な作品であるかもしれない。

長澤まさみのはっちゃけコメディ演技は、これまで無かったわけではないが、久しぶりである。以前はフレッシュさが免罪符になっていたとしても、実年齢31歳でのハイテンションは、普通ならキツいところがある。ところが長澤まさみにとってはハマり役なのだ。清純派として世に出て以降、女優としての脱皮(定番だと濡れ場とか)があったわけでもなく、かといって綾瀬はるかや宮崎あおいのように聖女(この路線を極めると吉永小百合になる)を貫くわけでもなく、人気はありつつも役柄の方向性が定まらないためにズルズルと「なんとなく、よく映画に出ている人」になりかけていた危うい時期に、本作の登場である。

長澤まさみの本領はコメディエンヌにあったのだ。顔をクシャクシャにしたり口から白い蒸気を吐き出したりしてギャーギャー騒ぐ姿こそ、長澤まさみの一番の魅力だと気づかせてくれたのが、本作『コンフィデンスマンJP』なのである。

さらには、長澤まさみは「おばさん」と年齢をいじられている。ボクの知る限り、これは長澤まさみ史上初めてのことだ(他にもあったらごめんなさい)。清純派から脱皮するには、濡れ場以上に「おばさん」呼ばわりは効果的であろう。着ている服がどれも絶妙にダサいのも、「おばさん」を補強している。間違いなく、本作が長澤まさみにとってのターニングポイントである。

エンドロールの後のオマケで、長澤まさみはダメ押しでババア呼ばわりされる。「その年齢で、そんなことしているのかよ」という記号的なキツさを表現しながら、一方で不思議な魅力も振りまいている最後のオマケが、本作のベストシーンであった。ついでながらこのオマケでは、もうひとり、ある人物がある姿を披露している。もう見ることは無いと思われていたその姿に多少の感激を覚えたが、しかしこの映画で良かったのか。あの人に関しては、その辺を安売りしないほうがいいと思ったが。

 

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