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【邦画】『映画 としまえん』ネタバレ感想レビュー--これ、全面協力してくれた「としまえん」にとって利があるとは思えないけど、いいのか?

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監督&脚本:高橋浩
配給:東映ビデオ/上映時間:81分/公開:2019年5月10日
出演:北原里英、小島藤子、浅川梨奈、松田るか、さいとうなり、小宮有紗、國島直希、鈴木聖奈、沖田×華、YOUNG DAIS、中山峻、中島ひろ子、竹中直人

 

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47点
昨今の遊園地にあるお化け屋敷は、きちんとストーリーが構築されていたりと、手の込んでいるものが多いらしい。その内容を映画化したものも複数ある。超有名なところでは『ホーンデッド・マンション』とか。なので本作もてっきりそのパターンかと思っていたが、これ「としまえん」全体が呪われている空間になっていたのだった。大胆なことをしてきたな。

ユーチューバー(ニコニコ動画だから違う気もするけど、映画の公式サイトでもユーチューバーと書かれている)の3人が、深夜のとしまえんに忍び込んで「としまえんの呪い」の噂を検証する動画から、映画は始まる。「洋館の扉をノックすると別の世界に連れていかれる」などの「としまえんの呪い」を丁寧に説明しつつ襲われる瞬間が映るのだが、そもそも明らかに不法侵入と思われる映像をネットにアップしていいのだろうか。深夜のとしまえんとなると、最近の騒動も思い出しちゃうし。ちなみにこの映像は最終的に、ニコ動おなじみの横に流れるコメントが急に文字化けして斜めに流れたりしたところで終わっていた。斬新なホラー表現である。

さて、大学生の早希(北原里英、『サニー/32』の人)は、留学の壮行会ということで高校時代の仲良しグループと久々に会いにでかける(なお、「地球の歩き方」まで小道具を用意しておきながら、留学の件は今後一切触れられない)。その途中で売家の前を通りかかると、中から声をかけられる。そこは3年前に行方不明になった幼馴染・由香(小宮有紗、『アウト&アウト』の花屋の人)の家で、整理に来た母親から呼び止められたのだ。にこやかだが不穏な雰囲気が漂う母親から、としまえんのチケット5枚を渡される。

級友とカフェで再会した早希は、先ほどの由香の母親に会った件を話す。すると、じゃあ由香の家を見に行こうとみんなでまたぞろ訪れる。チャイムを押しても誰も出てこないので残念がる一同。行方不明になった同級生の家を遊び半分で見に来てはしゃぐって、普通に最低な行為だからね。あと、このくだり、物語上はほとんど必要ない。なんだったんだ。

次の日、もらったチケットを律義に使ってとしまえんを訪れる5人。そのうちのひとりがいきなり、としまえんのメリーゴーラウンドは現存する日本最古のもので元はドイツで作られてアメリカに渡ってどうのこうのと、詳細に解説してくれたりする。もちろん、物語とは無関係な豆知識。としまえん全面協力の見返りがメリーゴーラウンドの蘊蓄ってねえ。それで良かったのか、としまえん。

おそらくオフショットと思われる、としまえんの乗り物を楽しんでいる映像が適当に流れた後、「としまえんの呪い」の話になる。さっそく、敷地の外れにある洋館に行き、メンバーの中でも明るいキャラのかや(さいとうなり、山ガールとして活躍中)が無防備に扉をノックする。すると中から出てきたのは変顔をした竹中直人。別に比喩ではなく、文字通りの意味で変顔をしている。竹中直人はここだけの出演で、物語とは一切関係がない。お気づきの通り、この映画、物語と一切関係の無い無意味な要素がやたら多い。

なんにもなかったじゃんと踵を返す一同だが、かやだけが聞こえるブザー音みたいな音が流れてきたため、頭を抱えてしゃがみ込んでしまう(ブザー音とは別にBGMも流れているので、どの音なのかよく解らなかったりする)。気が付くと、かやは高校の廊下に立っていた。教室を覗くと、自分を含む5人が、由香をハブにしようとしている酷い光景が。忘れていた記憶ってことなんだろう。これ以降、かやは回想シーン以外では出てこないです。結局どうなったのかは知らない。

一方の遊園地では、急にいなくなったかやを探す一同。そこに早希のスマホにかやから電話がかかってきて「お化け屋敷にいる」と伝えられる(もちろん、人知を超えた何者かによる罠)。そのお化け屋敷で次の呪いが発生して、今度は亜美(松田るか、『賭ケグルイ』の皇伊月役の人)がいなくなって、また別の場所に探しに行ったら次の呪いが発生して、というルーチンが続く。いなくなった人たちは、2度と出てこない。ある意味、潔い。

ただこれ、最初にかやが消えた時点でほかの客もスタッフも全て消えているので、その時点で全員別の世界に行っちゃってるんじゃないかと。で、何かしらの力によって誘導されて呪いを発生させられてどこかに消えているのだが、ということは別の世界は2層になっているんだろうか。まどろっこしい構図ではある。ちなみに、としまえんの外に逃げようと出入口に向かうと地面に巨大な割れ目があって進めないという謎のシーンがある。スケールの大きい呪い。

3番目に消えた千秋(浅川梨奈、最近やたら見かける邦画界のニューホープ)がスマホに残した遺言によって、メリーゴーラウンドを動かせば呪いが解けると知った残り2人だが、スイッチを押しても動かない。電源が落ちていると即座に判断した早希は電気室に向かう。ここが呪いの空間なら、そういう一般常識は通用しない気もするが。まあ、人知の及ばない存在によって電気室に誘導させられたってことなんでしょうけど。なんだかんだで、由香は3年前に彼女たちに無理やり呪いの儀式をさせられて以来、この異空間に閉じ込められていると知る(そして、そのことをみんなして忘れている。ひでえな)。そんなわけで目の下にたっぷりとクマを作ったやりすぎ幽霊メイクの由香に襲われ、もはや呪いの伝説とは無関係に杏樹(小島藤子、『馬の骨』の人)も消えて、ひとりになる早希。

で、結局はメリーゴーラウンドも動かなくて、早希も逃げられなくて、そのままぶつっと映画は終わる。論理的にしろとは言わないけれど、ホラーであることを言い訳に話を投げっぱなしにするのは良くないと思うけどなあ。あと、としまえんに設置されている石像とかの意匠が「何やら恐ろしいもの」として何度もインサートされる(しまいには血の涙を流す)んだけど、それはとしまえん的にはいいんだろうか。

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