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【邦画】『LOVEHOTELに於ける情事とPLANの涯て』ネタバレ感想レビュー--エンドロール後の禁じ手とされるオチは、宅間孝行監督の罪の意識ゆえの凶行だろうか

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監督&脚本:宅間孝行
配給:HIGH BROW CINEMA/上映時間:105分/公開:2019年1月18日
出演:三上博史、酒井若菜、波岡一喜、三浦萌、樋口和貞、伊藤高史、柴田理恵、阿部力


56点
一応、どんでん返し系の作品なので、先に宣告しておきます。以降の文章で本作のオチにがっつり触れていますので、未見の方はご注意ください。まあ、別にオチを知ってから観たところで、たいして変わらない気もしますが。

 

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舞台はラブホテルの一室。スクリーンに映し出されるのは、主人公の刑事・間宮(三上博史)が持ち込んだバッグの中に仕掛けられたビデオカメラで撮られた映像、という体。なので基本的にカメラは固定で(やたらとバッグを動かすので、何度もアングルは変わるけど)、長尺のワンカットで役者たちがオーバーな演技を繰り広げる。三上博史の演技を久しぶりに観たが、こんなベタなオーバーアクションをやる人だったっけかと少し驚く。間宮が愛人のデリヘル嬢・麗華(三浦萌)とイチャイチャしているところに間宮の嫁だという府警・詩織(酒井若菜)が乗り込んできて、そこからドッタンバッタン大騒ぎが巻き起こる。

まず、一番の疑問を言います。これ、なんで間宮が隠しカメラを仕掛けているのか、最後まで不明なんである。オチを言ってしまうと、『ユージュアル・サスペクツ』系とでも言えばいいのか、全ては間宮の想定していた企みの通りに物事が進んでいるのだが、カメラを仕掛けることで自身の大犯罪の証拠を記録する意味は何なのか。あとで個人的に鑑賞して楽しむためらしいが、殺人を犯したうえで他人に罪を着せているし、警察署から拳銃を盗んでいたとか横領やシャブを以前からやっているとか、そんな物証を残すなんてリスキー過ぎるだろう。

けっこう序盤で謎のシーンがあって、間宮と麗華のベッドシーンなのだが、まるで対象を狙うかのようにカメラが動いているのである。揺れるベッドの上なのでカメラも動いているということらしいが、それにしては何かしらの意思を感じるカメラワーク。この手の作品の常として、カメラに映らないところに第三者がいるんじゃないかと誰しもが思うところだが、そんな種明かしは一切ない。これ、観客騙しの映画にしては、カメラの外側で何かが起きているということがほとんどないのだ。一回だけ、予期せぬ第三者がカメラの死角から急に現れるシーンがあって、その驚かせ方は良かったけれど。

この話って、間宮にとって想定外のハプニングはひとつも起きていない。さらには、間宮と詩織(2人はグル)が他の人たちに行う騙しは、観客への騙しとイコールで結ばれている。構成に厚みが無いので、なんとも物足りない。それ以前に、この計画があまりに偶然に頼り過ぎているので、なんら感心を持てないんだけど。最初にデリヘルのマネージャー・小泉(阿部力)が乗り込んできたとき、そのままバスルームのドアを開けられていたら、どうするつもりだったのか。その時点で計画は全て破綻してしまうはすだが。殺す予定の相手が拳銃を手に取ってぶっ放したりしてるし。

間宮と詩織は全能の神のごとく、カメラに映っている全てを自分の意のままにコントロールしている。それは、映画監督が映画を撮ることと似ている。それにしたって、なんら想定外のことは起こらず完璧に予定通りの物語を紡ぎ、その全てをカメラに収めているとは、有能過ぎる映画監督だ。こんな存在を自分の分身であるかのように臆面もなく発表できるほど、宅間孝行監督も面の皮が厚いわけでは無かったようで、エンドロール後に、間宮と詩織にとんでもない仕打ちを行っている。ハッキリ言って禁じ手だが、宅間孝行監督が罪の意識から逃れられなかったが故の凶行と捉えるべきであろう。

 

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