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【邦画】『温泉しかばね芸者』ネタバレ感想レビュー--構成などという余計なものはそぎ落とされて、ただただ瞬間的な「おもしろ映像」と対峙していくのは、意外とエンタメ性がある

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監督:鳴瀬聖人/脚本:田中彗
配給:?/上映時間:45分/公開:2019年1月5日
出演:辻凪子、ナカムラルビイ、長野こうへい、錦織聡、衣緒菜

 

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58点
最近こういうの珍しいなと観終わった直後は思ったのだが、単にボクがこの手の映画を追いかけていないだけで沢山あるのだろう。血がビュービュー吹き出て臓物がバンバン飛び出す、「低予算のB級ホラー」と呼ばれる作品の定型ではある。こういうのって、創り手が面白がっているだけで、門外漢は置いてけぼりになることが常なのだが、今回はついていけたほうであった。

全く構成が機能していなかったのが、プラスに働いていたのではないか。一応、売れない女性脚本家が呪われた村で書いた脚本が現実になるという筋はあるものの、面白い画を撮りたいがための言い訳のようなものだ。監督からのダメ出しやバイト先での鬱憤をエネルギーに変えて脚本を書きまくるが、そこでの回想に本人の知らないはずのシーンが出てきたりするくらい、メチャクチャで何も考えていない。

女性脚本家が最も憎むべき相手であるダメ出しばかりの監督にしたって、惨劇が始まる前の時点ですでに情けない役柄なのである。コイツをぶち殺したところで心は晴れない。そんなことばかりで、構成が根本的に間違っている。そして、本来なら真っ当であるはずのそうした批判を本作に投げかけたところで、空しくなるだけである。なぜなら、そんなころは創り手は百も承知で、変な画を撮ろうとしているだけだから。

中途半端に練られていたりメッセージ性を帯びた脚本であれば、ここぞとばかりにツッコミを入れようとしてしまうが、ハナから投げ出されてる脚本ならば観客は気にもならなくなるのだ。首から上を斬られた瞬間にいきなり場面が変わってサモトラケのニケの上に生首が乗っかるという謎の展開に、正論を吐くことなど不可能だろう。しかも上映後のトークイベントで監督がこれを「ずっとやりたかった」とケラケラ笑いながら語ったりしているのだ。

意外とエンタメ性があるのである。構成などという余計なものはそぎ落とされて、ただただ瞬間的な「おもしろ映像」と対峙していくだけなのだから、この尺であれば飽きずにいられる。創り手と同じ立ち位置にいられるということであり、あとは実際にこれは面白いかどうか判断すればいい。個人的には、面白いと思えた箇所は少なかった(でも、ゼロではない)けれど、面白いかどうか考えさせられてしまっただけで相手の勝ちである。

 

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