ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【邦画】『銀魂2 掟は破るためにこそある』ネタバレ感想レビュー--ギャグが無くなってシリアスのみになってから、とにかく長え!

f:id:yagan:20180819130011p:plain
監督&脚本:福田雄一/原作:空知英秋
配給:ワーナー・ブラザース/公開:2018年8月17日/上映時間:134分
出演:小栗旬、菅田将暉、橋本環奈、柳楽優弥、三浦春馬、窪田正孝、吉沢亮、勝地亮、堤真一、中村勘九郎

 

スポンサードリンク
 

 

42点
前作『銀魂』は、このブログで、それなりに称賛した。原作同様、ベタな人情噺が本筋としてあって、その周りに大量のギャグがくっついてくるという作品の骨格が、福田雄一監督の資質と巧くマッチしていたためである。本筋のシリアス担当キャラとギャグ担当キャラは大まかに分別されていて、泣かせるためのシリアスパートにいる人は基本的にギャグをやらないという構成は良かった。

yagan.hatenablog.com

 

で、本作『銀魂2』も、基本的には前作の構成を踏襲している。前作ではギャグ要員だった「真選組」(ちゃんと変換で出るんだな)の内紛が、今回の本筋であり、従って「真選組」メンバーは(後述する一名を除いて)ギャグをあまり行わない。一方、主人公の坂田銀時率いる「万事屋」一味は狂言回しに徹して、将軍・徳川茂茂とのやりとりをメインとしたギャグパートを担っている。

ある夜、「真選組」副隊長・土方十四郎は、何者かによって首に埋め込まれたチップのせいで人格を変えられ、ヘタレオタクとなってしまって規律を破りまくり、隊から追放される。このオタク描写が酷いんだけど、たぶんオタクに対する差別的な意識じゃなくて、とにかく解りやすくしなくてはいけないという思いの表れではないか。出てくる元ネタがエヴァにガンダムにヤマトだもん。普通はベタ過ぎて避けるところを堂々とやっているのが、見てられない。

人格を変えられた土方十四郎は「万事屋」一味と合流し、ギャグパートのほうに移動してくる。ここで、「万事屋」を介して、シリアスパートとギャグパートが繋がるという構図になる。ここまでの構成は、たしかに巧い。肝心のギャグそのもののクオリティにさえ目を瞑れば、だが。佐藤二朗に好き勝手やらせて全てを任せるのは、ただの手抜きだからね。あと、一応それなりに長尺をひとりで保たせられるのは佐藤二朗にしかできない芸なんだから、同じことをムロツヨシに求めないように。佐藤二朗とムロツヨシって、同じ福田組だからか似たようなものと捉えられがちだが、バラエティ番組での対応力などを見ても、コメディアンとしての実力差はかなり大きいと思う。

さて、土方にチップを埋め込んだ犯人は「真選組」に新しく入った伊東鴨太郎だと判明する。伊東は、「真選組」隊長・近藤勲を暗殺し、組を乗っ取ろうと計画している。元の人格が辛うじて残っている土方は、犬猿の仲である銀時に、恥を忍んで近藤隊長を救ってくれるように頼む。

というわけで、銀時率いる「万事屋」一味が、「真選組」内紛という本筋に合流してくる。となると、どうなるか。ギャグパートが無くなってしまうのである。ここまで丁寧に築いてきた構成が崩壊して、あとは本当につまらないシリアスパートのみが延々と続く(上映時間は、まだ1時間以上も残っている)。アクションに関しては、たとえば揺れる電車の中だからという言い訳でカメラを無駄に揺らすなど、「ちゃんと見せない」という斬新な手法で取り繕っていたが。それよりも各キャラクターの一人語りが長い! とにかくみんなして、絆という単語が頻出するどうでもいい話を喋る喋る。しかも、喋っている間ずっと顔のアップだったりで画に変化がない。非常に退屈。

喋っている間はカメラが動かないので、背景の張り紙とか看板の文字をじっくり読むしかすることがないのだが、別に面白いことが書いてあるわけでもない。で、最後は裏切り者の伊東に対して「真選組」が情けをかけて「決闘による死亡」にしてあげるのだが、力尽きる伊東と「真選組」隊士が光る紐みたいなので繋がっているみたいなCGを重ねて「結局のところ、俺達は絆で繋がっていたよな」という超ダサい演出で締めくくっている

ベタ過ぎるギャグも、長過ぎるセリフも、ダサ過ぎる演出も、一貫しているのは「これくらい解りやすくしないと伝わらないだろう」という観客のレベルを勝手に低く見積もった舐めた態度である。こうした思想を持つ福田雄一監督が重宝されているとすれば、想定している客層より頭の良い客は離れていき、ひいては日本映画界の衰退に繋がるであろう。

 

スポンサードリンク