ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【邦画】『友罪』ネタバレ感想レビュー--生田斗真と瑛太の演技力を無駄遣いした、とにかく散らかっている話

f:id:yagan:20180602001407p:plain
監督&脚本:瀬々敬久/原作:薬丸岳
配給:ギャガ/公開:2018年5月25日/上映時間:128分
出演:生田斗真、瑛太、夏帆、山本美月、富田靖子、奥野瑛太、飯田芳、忍成修吾、佐藤浩市

 

スポンサードリンク
 

 

53点
とにかく散らかっている。登場人物が特段多いわけでもないのだが、個々のキャラクター性が安定していないうえに、相関関係も繋がりが薄いところが多い。これがわざとであり、世界はそもそも散らかっているのだというメッセージでもなさそうだ。単に、下手なだけの気がする。

かつて「少年A」と呼ばれた男との出会いを触媒として、各人が自分の抱えている罪と向き合うというのが根幹だと思われる。未読だが原作小説は、「少年A」の視点が一切無いらしいし。ただ、端的に言って、表現が巧くない

友罪 (集英社文庫)

友罪 (集英社文庫)

 

 

特に、メインではない人物の過剰なキャラクター性が目について、不必要なノイズとなっている。主人公や「少年A」と同じ寮に住む清水(奥野瑛太)という男は、シーンによって嫌なヤツだったり良いヤツだったりして、キャラクターに一貫性が無い。当初は、主人公や「少年A」との交流の中で変化が生じたのかのように思えたのだが、急に出会った当初と同じ嫌なヤツに戻っていたりするし。この清水に限らず、物語を動かすためだけに配置された脇の人物たちが、一貫性もなくキャラ立ちしているため、妙に悪目立ちするのだ。忍成修吾も、古舘寛治も。

また、メインの人物で言えば、佐藤浩市演じるタクシードライバーの山内は、「少年A」とほぼ関わってすらいない。タクシーに乗せてすらいないのだ。山内は、ある事件加害者の父親という立場であり、過剰な贖罪を自らに課していて、家族にも強要している。それがまた自己満足ではないかと指摘されたりして、個人的には最も興味深い人物であった。だがこれ、本筋の「少年A」の話とは完全に分離した別のエピソードなんである。最初のほうで、彼が「少年A」の父親なんじゃないかとミスリードさせるところも含めて、ただただ構成が不思議

そういうわけで散らかりが酷いので、ここからは生田斗真演じる主人公・益田に絞ってストーリーを追ってみる。彼は元雑誌記者だが、被害者感情を無視した記事を掲載した上司を殴って仕事を辞め、地方の町工場に住み込みで働くこととなる。そこで、同じ日に働き始めたのが、鈴木(瑛太)である。この鈴木が、小学生2人を殺害して、少し前に医療少年院を抜け出した「少年A」であるのだが、やっぱりキャラクターがブレていて説明が難しい。口数少なく達観しているようだが、かといって周囲には挑発的であったりして、よく解らない。何かが欠落していることを表したいのか、ちょっと子供っぽく抑揚を抑えた喋り方をするのだが、なんか香取慎吾のモノマネをしているみたいだった。人は、心に穴が開くと、香取慎吾になるのだろうか

指を切り落としたりとか、いろいろあって益田と鈴木は仲良くなるが、中盤で増田は鈴木が「少年A」であると気づいてしまう。そこから益田は、「少年A」の起こした事件を辿ることで、自分の中にある罪とも向き合う、という流れになっていく。増田は、学生時代に友人が自殺してしまうのだが、死ぬ直前に周囲に付和雷同してしまい、突き放すメールを送っていたのだった。その罪の意識に、今でも苛まれていて、寝ている間に叫んだりしている。

その自殺した友人の母親は寝たきり生活を送っているが、今でも益田だけは息子の友人だったと信じている。益田は、その母親の死に際に立ち合い、全てを告白しようとするが、「やめて。私はもうすぐ死ぬのよ」と拒否される。ここ、益田の自分勝手さがよく解るところであった。ユーフィリアに嘘を伝えて安らかに死を迎えてもらうよう配慮した枢木スザクのことを少しは見習ってほしい

佐藤浩市の件とも通じるのだが、「自己満足の贖罪からの脱却」というのが本作のメインテーマなんだろうか。ただ、話が整理できていないので、何がどう作用してどうなったのか、非常に解りづらい。益田は、「少年A」の今の写真を勝手に載せた週刊誌編集部に乗り込んで、編集長を殴ろうとするが、「昔と同じことを繰り返すの?」と叫ばれることで留まっている。「少年A」が本当に友人だとしたら、そこは殴るべきなんじゃないのか。そもそも、「編集長を殴って記者を辞めた」という過去は、益田の抱える罪とは全く別件だと思うのだが。この一件で益田の変化を表しているとしたら、それは成長ではなく退化ではないだろうか

ラスト。友人の自殺現場に足を運び、そこで膝から崩れ落ちて泣き叫ぶという「いい加減、そういうのやめようよ」というシーン(いくら演技派の生田斗真でも、さすがにこんなことさせたら印象が酷くなるばかり)があるのだが、ここは同じく自らの犯行現場で「少年A」が見せた表情の対比ということで、まあいいか。ここまで書いておいてなんだけど、この話って「少年A」視点オンリーで観るのが正解のような気もする。益田を含めた他の人物は、全て脇役ってことで。

 

スポンサードリンク