ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【邦画】『三十路女はロマンチックな夢を見るか?』ネタバレ感想レビュー--武田梨奈にはアクションをやらせてあげて、お願いだから

f:id:yagan:20180402212758p:plain
監督:山岸謙太郎/脚本:上原三由樹、山岸謙太郎
配給:キャンター/公開:2018年3月31日/上映時間:91分
出演:武田梨奈、久保田悠来、佐生雪、酒井美紀、山村美智、秋吉織栄

 

スポンサードリンク
 

 

53点
えーと、このブログですが、今回から基本的にネタバレ全開で行きます。ネタバレしないようにすることで、言いたいことが遠回りになってしまって上手く伝えられなかったことが最近続いたもので。あと、今回取り上げるような映画とかだと、まだ観ていない人に気を使う必要性がどれだけあるのか解らなくなってきて。ネタバレしようがしまいが、というか、ここで何が書かれようが、結局は誰も観に行かないでしょう。

ハイキック・ガール!豪華版(2枚組) [DVD]

ハイキック・ガール!豪華版(2枚組) [DVD]

 

 

さて、かつては鍛え上げた足腰を披露して将来を期待されたハイキック・ガールこと武田梨奈も、三十路の役をやるようになってしまった。厳密には29歳で、2日後の午後3時に三十路となる公務員OLの役である。なぜか彼女の家は「生まれた時刻に年を取る」という考えなので、そんな変な時刻に三十路になるのだという。そんな年なのに恋人もおらず単調な毎日で夢もない、というようなことを冒頭たっぷりとナレーションで説明してくれる

同僚のオメデタ寿退社にショックを受けた武田梨奈(あ、役名は荻野那奈)。自宅アパートで窓を開けたままでいると、動物のお面を被った3人組に押し入られ、手錠をかけられてしまう。TVのニュースで取り上げられている銀行強盗たちだ。なぜか主犯の男・風間拓人(久保田悠来)はずっとカメラを回していて、それっぽいセリフを言おうとしては失敗している。風間は映画監督志望だが実力が無く借金を重ねていて、強盗ついでに「銀行強盗が逃げる様子を撮影した、今まで誰も観たことのないドキュメンタリー映画」を撮っているのだという。

で、強盗3人組と一緒に夕飯を食べ、手錠をつけたまま眠る武田梨奈。朝起きると手錠を外され、誰もいない。今から追いかけて一緒に着いていけば退屈な日常が変わるかも、と玄関ドアを見つめていると、ドアが開いて風間が迎えに来た! というところで夢から覚める。風間たち3人はまだ部屋にいるが、アパートの目の前の道で警官が聞き込みをしている。夜まで待機する予定だったが、慌てて出ていくことにする強盗たち。いや、今外に出たら警官と鉢合わせしないか。車に乗り込んで出発しようとしたところで、目の前に武田梨奈が飛び込んでくる。そこで暗転。

この映画、シーンが切り替わるたびに1秒くらい画面が真っ暗になるのだが、変に意味ありげになっちゃって目障りなんでやめてほしかった。で、気がつくと武田梨奈は強盗たちの車に乗せられている。なんか頭を打っただかで気を失ったので連れてきたんだと。ここ、武田梨奈が自らの意思で乗り込むようにしないと、「退屈な日常を抜け出せ」という主題と合わないのでおかしい気がするのだが。進行方向に検問を見つけた武田梨奈は、「そこを右! 次を左!」と住宅地を迂回させる。自分は仲間であるというアピールということだが、やたら曲がっていたなあ。どれだけ複雑な道路なのか。

逃げる途中で小さな蕎麦屋に寄って、唐突過ぎるし何の意味のない『ブレードランナー』オマージュ(天ぷらの数を言い合うヤツ)をして、なぜか蕎麦屋の夫婦から大量の野菜を貰って、郵便受けには札束が突っ込んであるという、本当に謎すぎるし話と全く無関係なシーンがありつつ、泊まる場所がないということで武田梨奈は10年間使っていない実家に案内する。室内はホコリまみれだったのだが電気・水道は使えるので、10年間も無駄に基本料金を払っていると思われる。

そこで武田梨奈は子供向けの特撮ヒロインのキャラクターキーホルダーを見つけ、高校生卒業間近の頃(小学生じゃないよ)に憧れていたことを思い出す。両親からは試験さえ受ければコネも効くからと公務員試験を進められているが、こっそりヒロイン役のオーディションを受けようとしている。しかし、クラスにもっと知識もあって、歌やダンスやイラスト(そんな審査まであるのか)といった努力も怠らない同級生がいて、勝てるわけないとオーディションに応募するのをやめる。すっぱり夢を諦め、公務員試験を受けたのであった。

この回想シーンが、とにかく長い! 15分は回想していたのではないか。もっと簡潔にしても「この時に夢を諦めた」ってことは伝わるし、この件が物語の根幹に関わるんだったら、回想シーンを小分けにして挿入していくべきだろう(風間のほうの回想シーンは、やたら多い)。さらには、風呂に入る「高校生の頃の自分」と洗い場にいる「現在の自分」が会話をするという妄想シーンに繋がるのだが、そこで現在の武田梨奈が、過去の自分の顔を押し付けて風呂に沈めるという非常に恐ろしいことをやってのける。過去との決別なのか何なのか知らないが、そんな直接的な殺人表現をしなくても。

実家にいる最中、強盗3人組(あ、説明を忘れていたけど強盗のうちもう2人は、風間の元カノと今カノ)のうち今カノがいなくなり、風間は「逃げたんだろ」と平静を装って車で先に進む。しかし風間は昨夜ずっと今カノを探し回っていたため、疲れ果てて寝てしまう。運転している元カノのほうは、武田梨奈が風間を自分のモノにするために今カノを殺したのではないかと疑い、「この人には私しかいない」と田舎の一本道を猛スピードで飛ばしたかと思うと急ブレーキをかけ、さらには車の外まで追って武田梨奈を殺そうとする。しかし武田梨奈の返り討ちにあい、首を絞められて草むらの真ん中で気を失う。そして、車の中で目が覚めた風間に対していきなりキスをして、先に進めと促す。改めて文字に起こしてみると、サッパリ意味が解らない話である

現金の受け渡し場所に向かう風間。午後3時になったら灯台のところで会おうと約束して、武田梨奈には遠くからの撮影を頼む(しかしここまで、ロクに撮影していない気が…)。。風間は受け渡し場所に現れると、取り巻きたちに拳銃を向けられながら、ヤクザの親分に拳銃と現金の入ったバッグを渡す。と、そこに現れる数台のパトカー。通報してやがったのかと、警官の目の前で拳銃をぶっ放す親分。目の前でそんなことしたもんだから、いきなり機関銃(!)を乱射する警官隊。あんな銃撃を受けながら、なぜかヤクザたちは全員無傷で逮捕されるが、親分に撃たれた風間は海に転げ落ちる。

海を泳いで、灯台のところに上がってくる血まみれの風間。待っていた武田梨奈と、夢がどうたらという愁嘆場を演じたあと、「最高のエンディングだろ」と言って、実は親分に渡した拳銃は撮影用で、血糊で撃たれたように見せかけたとネタばらしをする。まあそれは風間の回想シーンで血糊を使っていたので気づいていたけど、親分じゃなくて取り巻きのほうが撃っていたらどうするつもりだったのか。あと、必死に掛け合いをしていたけど、誰もカメラで撮ってなかったが。

で、武田梨奈が風間に手錠をかけて「午後3時、強盗、不法侵入の容疑で逮捕」となる。実は武田梨奈は警察官で、取引の場で一網打尽にしようと強盗たちと一緒に行動していたのであった。序盤でこっそり同僚に強盗の件を教えていて、逃走劇の最中はずっと後ろから警官隊が着いてきたらしい。今カノと元カノは殺したわけではなく、武田梨奈がこっそり警官に引き渡していたのだ。なぜそんな手間のかかることをしているのかは知らない

この文章を読み返してもらえば解るように、いろいろ矛盾はあるんだけど、そこは置いておこう。これの最大の問題は、「退屈な日常を抜け出せ!」という主題が、このどんでん返しのせいで成立しなくなっているのだ。警察官にとって犯人逮捕は日常の一部だし、常に武田梨奈は風間たちを手のひらで転がしていたという結論では、主人公の心の変化的な要素は皆無となってしまう。才能もないのに夢を追い続けているという風間側のストーリーもあり、夢を捨てた武田梨奈との対比になっていたはずだが、最終的に風間を惨めな存在にしてしまうことで、その夢を追う行為すらも馬鹿げたものと踏みにじる結論になってしまっている。本当にそれでいいのか。せめて武田梨奈がビデオカメラを大切に扱う的な描写を入れないといけなかったのでは。

ラスト、広報課に異動した武田梨奈は、憧れの特撮ヒロインの格好をして、子供たちの前でショーをやる。それまで散々やってきた話とは無関係に夢が叶ったということだが、このショーでキックを披露した武田梨奈の足がちゃんと上がっていた。ハイキック・ガールは今でも健在だったと判明したのだが、それを本編でもっと観たかったなあ。アクションを入れられるチャンスはいくらでもあったじゃん。

 

スポンサードリンク