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【邦画】『サイモン&タダタカシ』感想レビュー--阪本一樹のBLはいいとして、「不条理っぽい何か」で欠点をごまかすのはやめてほしい

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監督&脚本:小田学
配給:日活/公開:2018年3月24日/上映時間:84分
出演:阪本一樹、須賀健太、間宮夕貴、井之脇海、田中日奈子、菅原大吉

 

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52点
第24回PFFスカラシップ作品である。ジュノンボーイの阪本一樹主演によるBLということからか、舞台挨拶付きのシネ・リーブル池袋は女性客で埋まっていた。それにしても、前回取り上げた『女々演』もそうだし、ロビーに並んだチラシを見渡してみても、シネ・リーブル池袋は「謎の邦画」の受け皿になっているようだ。隣で『シェイプ・オブ・ウォーター』やってるのが、何とも言えない気持ちになる。あと、客席の背もたれについているダルダルの網は、どうやって使用すればいいのか。

シネ・リーブル池袋問題は今度考えるとして、本作『サイモン&タダタカシ』は、個人的な感情で言えば非常に嫌いなタイプの作品である。それは、客観的な判断とは別の話なのだが。何が嫌かと言うと、「完成度の低さをごまかす言い訳のために、不条理に逃げている」というところである。

この映画は後半のクライマックスで、B級カルト的なバカバカしいことをやっている。そこはいいのだ。男子高校生の青春ドラマかと思いきや、急にジャンルが変わるのだって、全然アリだ。許せないのは、これ、最初からずっと「不条理っぽい何か」を混ぜ込んでいるのだ。校庭に面白格好の人がいるとか、担任や塾講師の微妙に変なキャラづけとか。こういった非リアルな要素は単発のギャグであり、物語としての意味は特にない

この「不条理っぽい何か」の数は、前半ではけして多くない。ただこれらのせいで、純粋な映画の欠点がごまかされている。たとえば「2人の会話シーンが終わるのをただ突っ立って待っている周りの人」という邦画にありがちな欠点も、「不条理っぽい何か」のひとつに見せかけている。もっと言えば、この話のメインである「公衆電話の壁に電話番号が書かれた女の人に会いに行く」という設定も、さすがに現代の話としては無理があるのだが、「不条理っぽい何か」ということにしている。脚本をきちんと練ることで説得力を増す、という順当な手段はとってくれない

他に乗客のいる高速バスの中でギターをかき鳴したり大騒ぎするという非常識さもそう(これを青春の1ページみたいなダイジェスト演出をしているから腹が立つ)。あと、ここが一番不思議だったのだが、なぜ相手の女はそんないきなり電話をかけてきただけの男を待ち焦がれるのか。すぐそばに、純粋に愛してくれる男がいるというのに、なぜそちらを邪険にするのか。一応「昔の男と似た外見的特徴があるから」という答えのようなものは示されるのだが、だったら面影がそっくりなくらい似せないと納得できない(ネタバレで言うと、須賀健太は眉毛をつなげておけ)。

そんなこんなで、ただの欠点を「不条理っぽい何か」にしているもんだから、なんか慣れてしまって、後半のバカバカしさが際立たない。これ、前半をマジで男子高校生の青春ドラマ(直球のBLありきなのは今どきで良い)として作りこんでおいて、さらに相手の女の視点を減らしておけば(少なくとも、主人公たちと出会う前のシーンは必要ない)、後半の不条理全開モード突入で大笑いできたかもしれなかったのに。もったいない。

演技については、映画初出演の阪本一樹と、23歳にして芸歴20年の須賀健太では、可哀想なくらい差が出ていてしまっていた。心の声風のナレーションが多すぎる阪本一樹は棒読みなのも仕方ないよなあと思っていたが、上映後の舞台挨拶で、普段から棒読みみたいな喋りをする人だと解った。

ちなみに、担任の先生役の人(ワタリという名前。ちょっと中邑真輔っぽい雰囲気の見た目)は、後半で「なぜそこにいるのか?」といった説明も何もなく和太鼓を叩く人として再登場するのだが、実は『曇天に笑う』にも出演していた(クレジットに名前があった)。たぶん、同じく和太鼓を叩く役だと思われる。Googleさんに聞いてもよく解らないのだが、何者なんだろうか。

 

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