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【邦画】『曇天に笑う』感想レビュー--曇3兄弟の年齢はいくつなのか教えてくれ。話はそれからだ。

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監督:本広克行/脚本:高橋悠也/原作:唐々煙
配給:松竹/公開:2018年3月21日/上映時間:94分
出演:福士蒼汰、中山優馬、古川雄輝、桐山漣、大東駿介、東山紀之

 

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46点
キツネの仮面をつけたままの、謎の人物がいる。琵琶湖に浮かぶ島の洞窟を切り開いて作られた、刑務官がバンバン鞭をふるう無法地帯の監獄の奥深くに、顔を隠したままで、ひとりだけ檻の中に閉じ込められている。その謎めいた佇まいから、何か恐ろしい力を持っていそうな雰囲気がよく出ている・・・って思う前にだな、なんで囚人なのに仮面が許可されてるんだよ!そんなもん、収監されたときに引っ剥がされるだろ。あと、最後まで映画を観ても、仮面をつけている理由がひとつも解んねえよ。

曇天に笑う 1 (コミックアヴァルス)

曇天に笑う 1 (コミックアヴァルス)

 

 

一事が万事この調子なんである。なんか観たことあるような感じの絵面を随時挿入していくのだが、どれもが断片でしかなく、設定とか話の流れとかまるで無視している。前後を繋げようとする努力をしていないのか、繋がっていないことに気づいていないのかもしれない。本広克行監督作品にはありがちではあるが、本作は多すぎる。

舞台は明治維新直後の大津。冒頭、祭りに湧く町の中で、派手な捕り物が行われている。おそらくドローン撮影も含めた大胆なカメラワークだが、そのせいで町並のセットの小ささが浮き彫りになってしまっている。相当狭いな、この町。こういう作り物めいた閉鎖的な場所で逃げ回る様子にデジャヴを感じたが、フジテレビのバラエティ番組『逃走中』だと後で気づいた

さて、颯爽と現れた主人公、曇神社第14代跡取の曇天火(福士蒼汰)によって逃げていた男は捉えられ、琵琶湖に浮かぶ監獄に入れられる。中では大量の囚人たちが、うめき声をあげながら大きい石を運んでいる。劣悪な労働をさせられているというありがちな描写なんだけど、何を作らされているのかは全く解らない(そもそも監獄の内部で何をどこに運ぼうが意味がないのでは?)。ほらまた、なんか見たことある感じというのが最優先で、設定を作る気がさらさらない。

連れてこられた罪人に向かって刑務官は「何をしたか知らないが、新政府と対立していた士族だな。一生ここで罪を償うのだ」的なことを言うのだが、いや、何をしたか教えてくれよ。ここを一生出られないほどの罪って、最低3人は殺してないといけないのではないか。食い逃げ程度でこの懲罰だったら、もはや新政府の私怨でしかない。絶対悪だ。

一方の曇天火は、空丸(中山優馬)と宙太郎(若山耀人)という下の兄弟2人と、さらには10年前に助けた風魔一族の金城白子(桐山漣)とともに、森の中にある神社で暮らしている。飄々とした長男と、おとなしい次男は、二十歳前後で年が近そう。やんちゃな三男は少し年が離れて、小学校高学年~中学生くらいか。演じている役者の年齢は長男と次男が同じ24歳で、三男は14歳。劇中の年と大差なさそうだ。

さてさて、町で変な奴らがいきなり出てきて暴れている。白子と同じ風魔一族が、町人たちの袖をまくっては二の腕を見ているのだ。なんか印のある人を探しているんだろうなというのは判断できるが、効率の悪い調べ方だな。騒ぎを鎮めようと出てきた新政府軍と曇3兄弟に向かって、もうすぐオロチが復活して新政府は全ては滅びるとかちゃんと説明してくれる風魔一族。その話を傍らで聞いて戸惑うような顔をする白子。

えーと、がっつりネタバレしますね。あとで急に判明するんだけど、白子は風魔一族の作戦通りに、行き倒れを演出して曇兄弟に助けてもらうことで、オロチを封じる刀のある神社に入りこんでいたんだとさ。だったら、今の顔は何なんだよ。あと、10年も住み込むとか面倒なことしなくても、さっさと刀を盗んで逃げればいいじゃんか。刀、ちゃんとどこかの部屋に飾られていて、鍵のかかった蔵とかに置いてあるわけではなかったし。

白子が冷血な極悪人であることは判明したのだが、さらには3兄弟の両親を殺したのが白子(と仮面の人)だと判明する。子供(8歳くらいか)だった長男はその惨劇を見ていたが、まだ赤子で記憶の無い弟2人には「両親は結核で死んだ」と嘘をついていた。えっと、その時に白子は兄弟もろとも殺して刀を盗んどけよというツッコミはもちろんなのだが、それより大問題が生じてくる。

3兄弟の年齢、いくつだよ! 長男と次男が8歳くらい離れているというのは、百歩譲って認めよう。福士蒼汰が26歳、中山優馬が18歳という設定なら、ギリ飲み込める。しかし次男と三男がほぼ同じ年ってのは無理があるだろ。回想シーン、1歳未満の赤ちゃんが2人並んで寝ていたからな。次男と三男が年子じゃなきゃ辻褄合わんぞ。中山優馬が14歳でも、若山耀人が18歳でも、そりゃねえよ状態だ。

ワケが解らないまま話は進む。何の伏線もなく次男の目が急に赤くなり覚醒することで、風魔一族が片っ端から袖をまくって探していた「オロチの器」であったことが判明する。二の腕、関係ないじゃん。長男は刀を使って次男に入りこもうとするオロチを封印しようとするが、白子に襲われ、次男は連れ去られてしまう。それもいいけど、刀をどうにかしろよ。関係者じゃないと神社の外には持ち出せないとか、そういう設定でもあるんなら教えてくれ。

あと、すっかり触れるのを忘れていたけど監獄のほうも風魔一族が襲って刑務官を皆殺しにして、囚人たちの人心を掌握していた。まあ、トップが変わったあとも囚人たちは同じように石を運んでいたけど。待遇が同じなのに、なんで従えるんだろ。で、なんか見たことあるシーンが色々あって大団円なのだが、それと同時に囚人たちが「自由を得たぜ」的な感じで普通に監獄から逃げ出しているのは、いいのか。やっぱり新政府が私怨で監獄に放り込まれていた被害者って結論みたいになっているが。一番の黒幕は東山紀之ってことなのか。

1ミリの感動できない白子の感動シーンが延々と続いたりと、ちょいちょい話が停滞するので、94分の映画なのに異様に長く感じる。意外にもアクションはそれなりの出来で、1対1のときはまあまあなのだが、集団戦になると画面の後ろのほうでダラダラ歩いている人がいたりするという斬新なことをしていて、非常に目障り。なんで肝心なところで、誰も観たことない画を作ってしまうのか。

 

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