ヤガンEX

映画とか漫画とか似顔絵とか

【洋画】『時間回廊の殺人』感想レビュー--こんな本格ミステリファンをくすぐる邦題なのに、ホラーってどういうことだ?

f:id:yagan:20180321190148p:plain
監督:イム・デウン/脚本:チャン・ジェヒョン
配給:アルバトロス・フィルム/公開:2018年3月17日/上映時間:100分
出演:キム・ユンジン、オク・テギョン、チョ・ジェユン

 

スポンサードリンク
 

 

56点
そりゃ観るよね。こんな本格ミステリファンをくすぐる邦題だったら。中村青司が建てたような変わった形の館が出てきて、嵐かなんかで外部と連絡ができなくなって、密室で人が殺されたりするような話だって、誰だって思うよね。この文章の直下に本作と何も関係のない本のリンクを貼っちゃうのも致し方ないよね。まさか中身がミステリですらないとは思わないよね。

時計館の殺人 (講談社文庫)

時計館の殺人 (講談社文庫)

 
『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)

『クロック城』殺人事件 (講談社文庫)

 

 

2013年のベネズエラ映画のリメイクで、原題は「House of the Disappeared」(消える家)。前半で物理法則完全無視の事態が起こるのでネタバレではないと捉えて言ってしまうが、これは純然たるホラーである(SFと言う人もいたが、いやホラーだろう)。やはり邦題がミスリードを誘っている。何が酷いって、回廊がほぼ話と無関係なのだ。たしかに外壁側に廊下があるが、あれが回廊かどうかすら判然としないし。「時間回廊」っていう字面だけで邦題をつけたのだと思う。回廊が何なのか知らないのかもしれない。

注:回廊とは、本来は神社とかで敷地や建物を取り囲む屋根付きの通路みたいなところ。戸建て住宅の場合は外壁面にある廊下のことを回廊と言うこともあるが、せめて3方向は建物を囲んでいてほしい。個人的な思いとして。

そんなに韓国映画を観ていないのであるが、霊的なものに寛容というか、当たり前のように認める傾向があると思うのは気のせいか。頑なに霊の存在を認めない人物が出てこないのは、日本やアメリカのホラーやSFに慣れていると、違和感がある。本作の場合は、主人公が「家の中に何かいる」的な主張をあまり他人にしないせいもあるが。先述したけど、かなり前半で物理法則完全無視の事態が起こるので、観客だってこの時点で「あ、何かいるんだな」って確信しちゃうし。

警察官の男が自宅内の地下室で刺殺され、息子が行方不明となった事件が起きる。そして、男の妻であるミヒ(キム・ユンジン)が無実を訴えるも逮捕され、25年後に仮釈放されて、ボロボロとなった家に戻る。すっかり白髪となって年老いたミヒだが、行方不明の息子がどこかにいると信じて、家の中にいる何者かと対峙しようとする。現在パートと事件前の過去パートが交互にくる構成である。

前半で何気に怖いのは、過去パートでは息子は2人兄弟なのに、母でもあるミヒは、長男のほうの名前しか言わないのである。中盤でその意味は解るのだが。しかし次男のほうの件に関しても霊的な何かが作用しているような演出だったが、それでは色々と辻褄が合わないのではないか。大体、やつらの力は家から離れていても作用するのか。

ミステリどころかSFとも言いたくないのはここで、この話、とにかく論理的じゃないのである。この家では25年ごとの11月11日(しかし人の誕生日を勝手に呪いの日にしやがって)に大きな事件が起こっているという話なのだが、だとしたら別の日のアレは何だったのか。あと、なんで彼だけは家の外に閉じ込められず、外に出られたのか。腑に落ちないことばかりである。

まあ、そんなこんながありつつも、ひとりの名も知らぬ若い警察官のわざとらしい高笑いで全てがOKになる大味さは、学んでいきたいところである。

 

スポンサードリンク