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【邦画】『サニー/32』レビュー--ネット文化が重要に関わった事件なのに、創り手たちはネット文化に詳しくないような

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監督:白石和彌/脚本:高橋泉
配給:日活/公開:2018年2月17日/上映時間:110分
出演:北原里英、ピエール瀧、リリー・フランキー、駿河太郎、山崎銀之丞、門脇麦

 

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60点
元ネタの事件って2004年か。あの加害者は、もう20代後半なんだな。なかなか茶化しづらい事件ではある。実際の事件を元にした映画は多くあり、『冷たい熱帯魚』も『全員死刑』も、元となった事件の加害者のキャラクター性が創作物に少なからず影響を与えているわけだが、今回のこれは加害者のキャラクター性ってほとんどわかっていないだろう。イメージとして伝わってきているのは、当時のネットの中で創作された架空のキャラクターである。

殺人事件を娯楽として楽しむという不謹慎な風潮はネットができるずっと前からあったことだが、この事件に関しては事実だけ拾い上げると、エンタメ性に乏しいとも思う。小学6年生の女の子が同級生の友達をカッターで殺すという事件そのものの状況はセンセーショナルかもしれないが、肉付けとなる周辺状況があまり公開されておらず、面白みに欠ける。そこに無理やり面白さをくっつけてきたのが、当時のネット界隈だったと思う。こういう悪ノリは、今よりもずっと酷かったもんな。インターネット老人会のひとりとして思い出す。

本作『サニー/32』は、むしろネットの悪ノリ状況を主軸とした話だ。もはや懐かしい感じすらするネット掲示板(今でもあるけど)の書き込みによって劇中での事件のあらましを伝えるオープニングからも、それはわかる。小6女子が同級生をカッターで殺す事件が昔あって、流出した写真のポーズからインターネット内では加害者のことをサニーと呼んで信奉する者が多数現れたと。まさに元ネタのまんま。

中学校教師の藤井赤理(北原里英)が、サニーだということで信者たちによって拉致される。このシーンが警察何やってるのというくらい不思議な状況なので、リアリティ面に関してはハナから投げているようだ。あのユーチューバーがどうやって2つ目の隠れ家を見つけたか、とかさ。藤井赤理は雪山の小屋に監禁され、なんかピンクのかわいいドレスを着させられたうえで、極秘裏に集まった信者たちに崇拝される(殴られもするが)。

どうなんですかね。現実世界のほうで、あの事件の加害者を当時と同じように今でも崇拝している人、いるんですかね。「今の彼女を見つけた!」という写真が流出したら、また盛り上がるかもしれないけど、相当危険なことしてまで会いに行こうとする人、現在はいないんじゃないか。ネット世界の冷めやすさを理解していない。

この映画を創った人たち、ネット文化についてあんまり詳しくないような気がする。これって殺人事件をネットというフィルターで介して接したことで狂わされた人たちが集まっているという話なのに、肝心のネットに関する描写がちょいちょいズレている。ユーチューバーだったらハッキングくらい簡単にできる、とか。あと、元ネタは事件そのものの発端がネット文化と密接に関わっているのに、そこは全て変えているんだよね。意味が解らなかったのかな。

 

なんか文句ばっかり言っているけど、白石和彌監督らしいエンタテイメントとしては充分に面白いので、周辺情報を排して観ればいいと思います。人が死ぬたびにテロップが出るところとかは、笑っちゃうし。やっぱり、元ネタの事件について、個人的に考えるところが多かったせいで、色々と引っかかっちゃうのかもしれない。

ちょっと本当にまずいなあと思ったのは、いかれた人物として被害者の兄が登場したところ。まさかこの映画の創り手がルポルタージュ『謝るなら、いつでもおいで』(川名壮志 著)を読んでいないわけがないのだが。この本のタイトルは被害者の兄の言葉だというのを知ったうえで、ああいうキャラクターで映画に出してしまうことに、なんらかの躊躇は無かったのか。被害者には兄は2人いるから、なんて言い訳は通用しない。自分も不謹慎だとよく言われるが、この点についてはなあ。

謝るなら、いつでもおいで

謝るなら、いつでもおいで

 

 

 

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