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【邦画】『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY 』感想レビュー--妄想は、打ち砕かれるためにある

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監督&脚本:二宮健
配給:アーク・フィルムズ/公開:2017年10月21日/上映時間:90分
出演:桜井ユキ、古畑新之、佐々木一平、新川將人、阿部純子、高橋一生

 

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66点
女優を夢見て上京してきたオリアアキ(桜井ユキ)は、ふと入ったバーで知り合ったカメラマンのカイト(高橋一生)に連れられ、サーカス団の宿舎に居候することになる。マジシャンの助手としてサーカスに出演しながら10年経った29歳のとき、映画『東京ハムレット』のオーディションに参加し、見事ヒロインのオリーフィア役をゲットする。

とまあ、こんな話が時系列バラバラで展開されていくのである。アキの目には、ブッチという名のピエロ(古畑新之)が見えており、冒頭で「時間は流れていない。どの時間も同じ空間の中に存在し、どの瞬間にもすぐに飛んでいける」みたいなこと(正確なセリフではありません)を言う。そのせいか、映画自体も10年の歳月を行ったり来たりしている。

そしてまた、展開されている状況が現実なのかアキの妄想なのか判然とせず、意図的な混乱の内側に投げ出されてしまう。さらには、ポップでスタイリッシュな映像処理が、混乱に拍車をかける。さて、そうなると嫌でも過去の映画体験が記憶としてよみがえってくる。あ、これ、園子温の映画みたいだ。

この手の映画は嫌いではない。遊園地のアトラクション的な、目まぐるしく事態が変化して何重にも妄想が折り重なっていく混乱そのものは、充分に楽しい。その混乱の果てに、上条さんばりに「その幻想をぶち殺す!!」と大暴れするのも定石だし、そこから発生する不思議なガンアクションも、若手監督の考えるエンタメ性をきちんと具現化しており、見ごたえあるものになっている。

ただ、全ての後に残るものが無いというか、よくあるイマジンブレイカーで終わってしまう。その先を渇望しようとも、桜井ユキが脱ぐだけでは、表現しきれるものではない。主人公が死んだ恋人と決別して未来に目を向けているのに、そこで終わりでは「いつものやつ」だ。せっかく、ぶち壊した妄想の過去も、見据えた未来も、同じ空間内にあるというのに。

 

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