東京から4時間かけて出会ったハチ公
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東京駅から新幹線に乗り、新潟駅まで約2時間。そこからJR白新線、羽越本戦と乗り継いで、さらに約2時間。山形県鶴岡市は遠かった。
鶴岡駅
さて、今回は「鶴岡まちなかキネマ」という映画館に行ってみる予定なのだが、その前に鶴岡市(庄内)と言えば映画のロケ地として有名で、「庄内映画村資料館」というものがあるので、そちらに足を運んでみることにした。
妙にちゃんとしているロケ地マップが唐突にあった
鶴岡市は、江戸時代には鶴ヶ丘城があった城下町で、当時からある建物が豊富に保存され、公開されていたりする。そのためちょっとした観光地で、観光案内もしっかりしている。駅前に立派な観光プラザがあったので、そこでレンタサイクルを借りて、資料館まで向かうことにした。
こんな道を延々と走った
失敗した。「庄内映画村資料館」は「松ヶ丘開墾場」という史跡の一部なのだが、これが鶴岡駅から車でも20分かかる山の中にあるのだった。何度も道を間違えたこともあり、山中の集落を自転車で1時間半ほど走り続けたところで、やっとたどり着いた頃にはへとへとになった。ちなみに、なんだかんだで午後2時くらいだったが、朝からこの時点まで何も食べていない。
※ 注:鶴岡駅前のレンタサイクルは、市街を散策するためのものです。今回のように市街から大きく離れた場所へ行くことは本来禁止です。ボクはあとで怒られました。
松ヶ丘開墾場
とにかく何でもいいから食べたかったので、食堂みたいなところに入って芋煮セットを頼む。芋煮がこんなに美味いと感じたのは初めてかもしれない。
芋煮セット
「庄内映画資料館」は、築150年、長さ38m×奥行9mという巨大な大蚕室の中に作られている。庄内地方は映画のロケ地として有名で、撮影に使われたセットや衣装が展示されているということである。なお、館内は基本的に撮影禁止なため、ここから写真が急に少なくなりますが、ご了承ください。
「庄内映画村資料館」
「なんといってもアイドル」特集をやっていた
受付で500円払って中に入る。入ってすぐの土間部分には御所車が展示されていて、乗って記念写真とかOKらしい。貸衣装(ドン・キホーテで売ってそうなの)もあった。
謎なのは、入口脇に無造作に置かれた段ボールの中に文庫本とか漫画が入っていて、「1冊100円」とかで売っていたこと。『ICHI』原作とか映画と関係あるものもあったが、無関係のものもあったり。よくわからない。
靴を脱いで中に入る。「なんといってもアイドル」特集は、アイドル映画のポスターと映画の解説文が並べられているだけであった。特に脈絡もなく壁に貼られた映画チラシとか、いろんな映画雑誌(「映画秘宝」とかが展示物として鎮座していた)とか、昔のカメラや映写機とか、『スター・ウォーズ』のボトルキャップ(!)とか、グフの頭部(!!)とか、とにかく映画に関するものを何でも並べているだけのような気がしてきた。あれ、予想していたのと違うような・・・。「あの頃のおもちゃ」とか称してけん玉やリカちゃん人形まで置いてあるのを見て、言い知れぬ不安に襲われる。
撮影OKの棺桶。中に入ってもOK。
それでも『おくりびと』の棺桶なんかも展示されていて、なんだかんだでこういう実物を生で見られるのは良かった。
棺桶は1階だが、実はメインの映画撮影時の資料は、小さく急な階段(なんせ150年前の建物なので)を上った2階に展示されている。この2階は、なかなか興味深かった。衣装とか小道具とかセットとか、普段は見ることのできないものを間近に見られて、純粋に楽しい。『スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ』の1日ごとの進行表は面白かった。「本日夕刻に宿坊を焼却する予定です。午前中に村長をぶら下げておくこと」とか書いてある。
さて、展示物を思い出せるだけ挙げてみる。
・『おくりびと』の棺桶
・『スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ』の進行表とアジトのセット
・『山形スクリーム』の衣装
・『おしん』(上戸彩のほう)の室内セット
・『十三人の刺客』(役所広司のほう)の衣装、セット
・『座頭市THE LAST』の絵コンテ
・『ICHI』出演者のサイン
ほかにも『スノープリンス』『山桜』『デンデラ』などが展示されていた。これらの映画はいずれも「庄内映画村支援作品」として庄内で撮影が行われた作品である。逆に言うと、庄内で撮影されていなければ、ここでセットや衣装が展示されることは無いわけだ(せいぜいチラシやポスター)。
さあ、何か感じないだろうか。これらのうち、「資料館でセットや衣装を保存する」に値する、日本映画史に残る作品はどれだけあるか。正直、『おくりびと』くらいではないか。
いや、誤解無いように言っておくが、映画自体の出来とはまた別の話である。また、例えば『山形スクリーム』の3段階に汚れた衣装とか、ペンキによって古く見せている『おしん』のセットとか、いろいろ興味深かったし。実際ボクは1時間くらい見学していたわけで、この資料館自体は映画好きなら十分楽しめるのである。
「庄内映画村資料館」が、資料館として価値を上げるためには、日本映画史的に貴重な作品の資料を展示するしかないわけだ。だがそのためには、そのような作品が庄内で撮影されなくてはいけない。しかしそうなると、もはや資料館がどうこうできる限界を超えている。『おくりびと』がアカデミー賞受賞するとか、そういう棚ぼたをひたすら待つしかないわけである。「庄内映画村資料館」自体は存続してほしいのだが。
なお、資料館から車で20分のところにオープンセットもあるのだが、レンタサイクルの返却時刻も迫っていたので、そちらには行けませんでした。地方都市の観光計画で難しいのは、どこも「車で移動すること前提」というところなんだよなあ。
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フランク・ゲーリーのパチモンみたいな建物
後編へ続く
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