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【邦画】『パーフェクト・レボリューション』レビュー--障害者×純粋すぎるヒロイン×考えすぎる介護役、という定番

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監督&脚本:松本准平/原案:熊篠慶彦
配給:東北新社/公開:2017年9月29日/上映時間:117分
出演:リリー・フランキー、清野菜名、小池栄子、岡山天音、余貴美子

 

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60点
幼少期の脳性麻痺により車椅子生活を送る中年のおじさん・クマと、人格障害(正確にはパーソナリティ障害だが、劇中で使用された用語を採用します)の美少女・ミツによるハートフル・ラブストーリー。公開規模は小さいが、日曜日かつ映画サービスデーのTOHOシネマズ新宿は、満席に近かった。もぎりからすぐのスクリーン1での上映だったのは、車いす使用者に対する配慮なんだろうか。

映画の前半は、障害者あるある、車椅子あるあるが並べられていて、なかなか興味深かったりする。道で出会った知らないおばさんが勝手に感動してお金を渡そうとしてくるとか、実際あるんだろうなあ。感動ストーリーをでっち上げようとするTV局に対する批判は、当然のごとく取り入れている。

クマは講演などで自らの性体験を下世話に語ることで、「障害者は誰もが聖人というわけではない」というアピールを行う。乙武洋匡が『五体不満足』以降ずっと主張していることだ。乙武クン(この人、ついクンづけしちゃうけど、既に30歳後半である)は最近も、身をもって「障害者は聖人じゃない」キャンペーンをしていたし。

ただ、話題作がいくつも公開中のこの時期に、わざわざこの作品を観に映画館まで足を運ぶ観客にとっては、「障害者は聖人じゃない」なんてことはハナからわかっていることだと思うのだ。観たいのはその先であろうし、実際に映画の後半は、個人の恋愛話へとシフトしていく。で、ここの判断が難しいのだ。

障害者×純粋すぎるヒロイン×考えすぎる介護役、という人間関係は、ドラマ『ATARU』と大まかに共通している。いやまあ、あのドラマの栗山千明と今回の清野菜名を同列に扱うのはさすがに乱暴すぎるが。ただ、障害者を主人公にしたフィクションには、どうもこのパターンがよくある気がする。

本作の小池栄子と『ATARU』の村上弘明はともに、障害者に対して真摯に向き合おうと頭で考えることで、苦悩を大きくしている。一方、本作の清野菜名も『ATARU』の栗山千明も、細かいことは考えずに本能的に接することで、結果として障害者に幸せを与えている。障害者をひとりの個人としてフラットに接するところまではいいのだが、この「ピュア感」こそ正解、みたいな感じが引っかかるのだ。

というのは、ものすごく個人的には、こういう「ピュア感」が苦手というのがある。わざわざカギカッコつきで表記しているのは、本来の意味でのピュアとも違う気がするから。こっちの都合とか関係なくズカズカとこちらの内面に入ってくる人がダメなんである。けして、万人にとっての「正解」ではない。

クマにとっては、ミツのような距離感ゼロでパーソナルなところにまで入ってくる人に惹かれるのだろう。それは、障害者だからではなく、クマという個人の嗜好である。もちろん、作り手はそんなのは当たり前だと思っているだろうし、観客の多くも同様であろう。ただ、このパターンが今後も頻出するようになると、障害者に対する新たな「間違った固定観念」が生まれそうな気がして、怖い。

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